The アートシアター第3弾作品として劇場再上映される「ポネット」 ©1996 StudioCanal – Les Films Alain Sarde – Rhône Alpes Cinéma”

自動車事故で亡くなったママに会いたい、きっと帰って来てくれると信じて待ち続ける少女の物語。その信じ続ける健気な姿に感動し日本でも33週間の公開ロングラン記録をもつフランス映画「ポネット」が、4Kレストレア版でよみがえり23年ぶりにリバイバル公開される。

「死んだ人が帰って来ないのは、生きて
いる人たちが本当に待っていないからよ」

ママ(マリー・トランティニャン)が運転する車に同乗していた4歳の少女ポネット(ヴィクトワール・ティヴィソル)は、病院のベットで心配顔のパパ(グザヴィエ・ボーヴォワ)の声に目を覚ます。幸いポネットは軽傷で助かったが、退院した日に治療の甲斐なくママが死んだことを事故現場でパパから聞かされるポネット。だが、ポネットには死別という現実があまり実感できていない。

パパは仕事でリヨンへ出掛けるため、ポネットを歳が近いいとこのデルフィーヌ(デルフィーヌ・シルツ)とマティアス(マティアス・ビューロー・カトン)たちがいる伯母(クレール・ヌブー)の家に預けていく。ポネットはいとこたちから遊びに誘われても、一人離れてママが帰って来るのを待ち続ける。

伯母は「ママはイエス様と一緒にいる」と諭し、従姉弟たちも「死んだら、もう帰って来ないよ」と教えるが、ポネットは「でも、イエス様はよみがえったよ」と、ママが帰って来ることを信じて疑わない。寄宿学校では、神を信じる女の子に頼んで神様に願いが通じる訓練を受けるがうまくいかない。あげくはいたずらな男の子に、「お前が悪い子だからママが死んだんだ」と言われて悲嘆するポネット。

「夢じゃなくて、ママは帰って来てくれるの」と伯母に話すポネット ©1996 StudioCanal – Les Films Alain Sarde – Rhône Alpes Cinéma”

夜、寄宿舎の礼拝堂でイエス像を見つめながら「全能の神様…ママに私とお話しするよう伝えてください」と祈るポネット。パパが久しぶりに会いにくる朝、心が耐え切れなくなったポネットは、寄宿学校を出てママの墓所へ行き、「ママ…」と叫びながら土を掘り始める…。

現実を冷徹に見つめて
いる子どもたちの世界

本作を脚本・監督したドワイヨン監督は、子どもたちが死や死者についてどのように感じ、考えているかを取材して書き上げたという。そうした子どもたちの言葉のやり取りと視座とがポネットの心に寄り添い、時には冷徹な言葉を浴びせて深い悲しみへと突き落とす。従姉弟や子どもたちから「死んだ人は帰って来ない」と聞かされても、「死んだ人が帰って来ないのは、生きている人たちが本当にまっていないからだ」と言い切り、神に祈り、神からの応答をヨブのように待ち続けるポネット。

ドワイヨン監督は誰にも証明することができない“奇跡”をとおしてポネットに生き続ける勇気を与えている。それは、感染症のパンデミックに大きな不安の渦に陥っている現在の社会情況にも、人生のどのような情況のなかに在っても“生きている”ことへの強いメッセージを伝えている作品のようにも感じられる。 【遠山清一】

監督・脚本:ジャック・ドワイヨン 1996年/フランス/97分/4Kレストレア版/原題:Ponette 配給:アイ・ヴィー・シー 2020年6月27日(土)より渋谷ユーロスペースほか全国順次公開予定。(日本初公開:1997年11月15日)
公式サイト http://the-art-theater.com/
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*印刷版クリスチャン新聞での訂正*
週刊クリスチャン新聞5月31日号「レビュー面」のMOVIE:「ポネット」の紹介記事にて、「仮設の映画館」のURLを掲載しましたが、「仮設の映画館」では本作のインターネット上映は行なわれません。お詫びして訂正いたします。

*AWARD*
1996年:ヴェネチア国際映画祭主演女優賞(ヴィクトワール・ティヴィソル)受賞。 1997年:ニューヨーク批評家協会賞外国語映画賞受賞。