写真=収容者が書いた絵「泳げない人魚」

 日本での難民申請はハードルが高く、入国管理局施設で長期収容される人たちがいる。従来から収容者の待遇について様々な懸念の声が上がっていた。新型コロナ感染拡大でどのような影響があるだろうか。長崎県大村入国管理センターで、月一回の礼拝と、面会ボランティアなどをしている柚之原寛史さん(IPHC・長崎インターナショナル教会牧師)は、「弁護団の声明などを受けて、収容所内では、従来一部屋3人だったのを1、2人にするなど感染リスクを抑える措置をしている」という。ただ4月28日を最後に面会はできなくなった。その代わり、1日2人まで相手を指定しての電話が可能となった。「従来から収容者側からの電話は自由ではあった。電話ボックスでの電話になるので、テレホンカードを購入して支援しようと思う。面会がなくなった以上、彼らにとって電話がライフライン。家族がいる人は、自分以上に家族の安否が心配だと思います」

写真=大村入管

 「コロナ禍で、一つ益があるとすれば、国外への強制送還ができない状況となり、従来から求めていた仮放免が積極的に出されていること」と言う。入管では、従来から問題が尾を引いて混乱状態だった。昨年は、仮放免を求め、全国で収容者らがハンガーストライキを挙行。大村ではナイジェリア人男性が餓死するという事件が起きた。「仮放免や強制送還で、大村の場合、123人いた収容者が10か月で半分の60人未満になった」という状況だった。

 ナイジェリア男性の餓死の後、同じく収容者のナイジェリア男性4、5人が医療診察拒否をした。その中で今年2月、一人が突然倒れ、救急搬送された。脳出血のようだった。「男性はおそらく収容所内での礼拝に来ていた人だと思う。呼びかけても反応はほとんどないが、賛美歌を歌ったとき、彼の目から涙がこぼれた。聞こえていたのだと思います」

 仮放免された後の行先の問題がある。仮放免で収容所を出た人は、家族がいればそこにいけるが、家族がいなければシェルターなどの受け入れがあるかどうかが問題だ。「医療や生活の困難を予想して仮放免申請しない人もいる。在留資格がしっかりあれば最低限の生活は保障されるはず」

 面会ができない中、収容者は孤独だ。「政府からの給付金10万円を活用し、全収容者53人、一人につき、テレホンカード一枚(千円分)と現金千円を郵送で差入れした」と話した。【高橋良知