7月26日号紙面:香港・信教の自由の危機感 KGK、現地団体と緊急祈り会 「怖くて、怖くて、毎日過ごす…」学生悲痛
香港・信教の自由の危機感 KGK、現地団体と緊急祈り会 「怖くて、怖くて、毎日過ごす…」学生悲痛
「一国二制度」を脅かす「香港国家安全維持法」(国安法)が6月30日に施行し、香港社会、教会、若者たちが揺れている。アジア、世界の学生伝道団体とつながりをもつキリスト者学生会(KGK)は、香港の学生伝道団体、香港FESのスタッフと学生を招き、「緊急祈り会」を7月11日にオンラインで開催した。香港での滞在研究の経験がある松谷曄介さん(日基教団・筑紫教会牧師、金城学院大学宗教主事)が香港の教会の現状を解説。それぞれ祈祷課題を挙げ全体で祈った。【高橋良知】
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香港では、キリスト者人口の割合がアジアでは比較的高く、キリスト教系の学校、福祉施設も多いため、社会におけるキリスト教の存在感は大きい。民主化運動にも多くのキリスト者がかかわってきた。一方で「宗教が政治にかかわるべきではない」と言う人や、国安法を支持する人もおり、教会は一枚岩ではない。
「正義や自由の問題もあるが、『中国大陸の教会のようになるのでは』と心配されている」と松谷さんは言う。中国では習近平政権以降、公認教会、非公認教会それぞれへの弾圧が強まっている。「背景には、共産党員の数よりも多いと言われる中国のクリスチャンたちへの脅威がある。キリスト教を西洋敵対勢力と見なす危機意識もある」と指摘した。
5月には香港の牧師たちの有志のネットワークが「香港2020福音宣言」(以下「福音宣言」、松谷さんの翻訳が「キリスト新聞」オンラインに掲載)を発表。同宣言は、ナチスと対峙(たいじ)したドイツの告白教会による「バルメン宣言」、社会参与の重要性を再認識した世界の福音派による「ローザンヌ誓約」を参考にしたという。「福音宣言」は「教会の主を明確にし、真理を土台に、虚偽を拒絶し、霊性と行動の不可分、暗闇の中の希望を宣言した。これは政治宣言ではなく、信仰宣言でした」
「しかし政府は、香港独立を扇動すると見なし、宣言にかかわった牧師らに圧力をかけた。いきなり逮捕はしない。メディアを動かして批判をし、自己規制をさせるのです」。牧師グループは、PR動画を自主的に削除、ある牧師は出版予定だった本が差し止められ、ある牧師は所属団体のホームページに掲載していた文章を、内部の反対の声で削除されるなどの動きがあった。
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香港FESスタッフのAさんは、「人々の関心は国外への移民」と言う。「香港に残るかどうか。幼い子どもがいる家庭では、教育による思想統制を心配しています」
「教会の中にも、民主派と親中派が存在し、平和裏に結び合うのは大変困難。多くの若い人が教会を去った。若者は今の現実に届くメッセージを期待しています」
「FESも含め、海外とのつながりのある教会、団体は緊張感がある。信仰告白、ガバナンス体制を丁寧に見直し、簡単に反体制組織と見なされないよう注意を払う必要がある。大変な圧力のある環境で、教会がいのちのメッセージを発信していくことは重要だ。信仰を明確に保ちつつ、どう知恵をもって社会の中での役割を維持できるか祈ってほしい」と話す。
香港の学生のBさんは、親しい友人が警察に逮捕されたことや、警察による市民への暴行が起きていることなどから、「警察への不信感を募らせた」と述べた。キリスト者が行動していることで、教会に関心をもつ人がいる一方で、キリスト者の行動が政府に危険視されていると心配する。
「国安法は、突然法案が出され、リアクションする間もなく、成立してしまった。監視が怖い。みんなもあまり行動しない。中国の教会は弾圧によって無くなるかもしれない。香港の教会もそうなるのではないか。何があってもイエスから離れないよう祈っている。でも怖い。怖くて怖くて毎日を過ごしています」
家族とも立場が異なりけんかすることもある。「残れるなら香港に残りたい。みなが出ていったら香港でなくなってしまいます」
Aさんは、「若い人がどこに身を捧げるべきか。神様の前に静まって受け取ることができるように。教会の中で信徒の立場が分かれる中、対話と相互理解、一致が与えられ、共通の困難に向き合えるように祈ってほしい」と願った。
松谷さんは「別世界の信仰の戦いのように思えても、実際はつながっている。同じ神の国の兄弟姉妹のことと思ってほしい」と述べた。
KGK総主事の矢島志朗さんは、「KGKでは、世界の学生宣教の働きを通じて、信仰を守ることや宣教が困難な地域のために祈ってきた。香港についても、中国本土返還、犯人引き渡し条例などの信仰の戦いの時に、祈りを共有してきた」と話す。副総主事の吉澤慎也さんは「日本も戦時中天皇制国家の中で信仰の戦いがあった。そんな歴史をもつ日本だからこそ、香港の今の状況を覚えて祈りたい」と勧めた。