セウォル号事故遺族らに寄り添う 映画「君の誕生日」 イ・ジョンオン監督に聞く

2014年4月16日、韓国・観梅島沖で起きた大型旅客船「セウォル号」転覆・沈没事故。修学旅行中だった安山市の高等学校生徒325人のほか一般客・乗務員476人のうち死者299人、行方不明者5人の大惨事だ。この事故による犠牲者遺族の苦悩に正面から取り組んだ映画「君の誕生日」が11月27日より全国公開される。 大事故から6年。「このままでは時が過ぎて忘れてしまうかもしれない話をこの映画を通じて伝えたい。観客が共感できるストーリーの力で観客の心を動かしたい」と語るイ・ジョンオン監督に話を聞いた。【遠山清一】

ボランティア活動で
知った遺族の苦しみ
本作は、セウォル号転覆沈没事故で亡くなった高校生スホと彼の家族3人(両親と妹)をとおして、それぞれが心の苦痛に苛(さいな)まれ、寄り添う誰か、慰めと癒しを必要としている日々を周囲の眼差(まなざ)しの変化とともに描かれる。当時の政権の信頼失墜を招き、運航会社の実質オーナーがキリスト教系カルトの代表者で怪死したミステリアスな展開は、社会派サスペンスドラマにもなりそうな顛末(てんまつ)だが、愛する者を亡くした深い悲嘆に苦しむ人に寄り添うことの大切さが心に届く物語したのはなぜなのか。
ジョンオン監督は、「私は多くの犠牲者が出た高校がある安山(アンサン)で15年から遺族の方たちを手助けするボランティア活動をしていたので、ご遺族の方たちの想いをもっと多くの人たちに伝えたいと思ったことが、このような作品にした動機とも言えますね」という。安山ではおもに事故で亡くなった人たちの誕生日会の準備と開催のためのボランティアに携わった。

セウォル号沈没事故の犠牲になったスホ(左から2人目)の家族 (C)2019 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & NOWFILM & REDPETER FILM & PINEHOUSEFILM. All Rights Reserved.

「誕生日会の準備は1か月ほどかかります。ご両親にお会いしたり、お友達や知り合いの人たちとも会いますし、亡くなられた方のお部屋も実際に見たりしました」。ジョンオン監督の実際の経験は、本作でのスホの誕生日会の約30分に及ぶロングテイクのリアリティーに存分に活(い)かされている。

家族が一つになって
生きていく力になれば
本作の主役チョン・ドヨンは、出演のオファーに初めは辞退していた、、、、、、

2020年11月15日号掲載記事