東日本大震災から10年を迎えます。この災害を教会、個人はどのように迎え、痛みを覚え、祈り、考え、行動したか。

いのちのことば社で刊行された手記について、クリスチャン新聞の当時の記事から振り返ります。

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「見上げる空」と題されたこの本は、その空を見上げている人が「逡巡」と「うめき」をもって被災地における教会の姿を綴ったものだ。この本は閉じられた一時的な活動記録ではなく、これからの将来を託されている日本の諸教会に対して「現場に立ち続ける勇気」を持つよう問いかけてくる生の声でもある。

被災地の空の下には学習支援プログラムを中心とした支援団体「sola」がある。「sola」は持ち出し企画ではなく、震災直後から被災地へ入りどんな必要にも応え、その要望に応えるかたちで始められた働きだ。短期的なプロジェクトとは違い、長期に渡り(=ずっと)被災地の現実と向き合い続けるには、相当な覚悟が求められる。自分だけ生き残ってしまったと罪責感に苛まれている人、苛立ちや怒りをぶつける人を目の前にして語れる言葉など誰も持ち備えていない。正解や安堵のない中、それでもこの人は空を見上げつつ現場に立ち続けている。

初動から自身の牧する教会の後押しと理解があったこと、緊急時には「仲間のネットワークが頼り」であったこと、現地では「人の地の利」が必要なこと、「この世界に生き残ってしまった人生の重荷をどう受け止めるのか」という避けられない課題、「教会は自己増殖を目的とせず、他者の必要に届いていくことを使命とする」、「自己検証できない団体であってはならない」といった勧め、「教会は建てないが、キリストがいる暮らしをみんなと一緒に毎日送りたい」との潔い指針、ある伝道集会で福音への招きに応答した男性が「これまでお世話になったお礼にと応答したのであって、これで支援は終わりにしてほしいと先方に伝えてほしい」と依頼された出来事、海さえ見たことのないケニアのスラムに住む子どもたちから届けられた義援金等々、各教会で共有されるべき財産と課題とが全編に散りばめられている。

今、私は著者の生まれ故郷である盛岡にいる。現場に立ち続け、同じ空を見上げるようにとの勇気をいただきながら。
(評・大塚史明=日本同盟基督教団盛岡みなみ教会牧師、3・11いわて教会ネットワークコーディネーター)

2014年12月21・28日号から

『見上げる空 「被災地」から見える教会の姿』
米内宏明
発売日:2014/11/20

 

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