東日本大震災から10年を迎えます。この災害を教会、個人はどのように迎え、痛みを覚え、祈り、考え、行動したか

いのちのことば社で刊行された手記について、クリスチャン新聞の当時の記事から振り返ります。

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東日本大震災による障害者の死亡率は健常者の2倍と言われるが、その数字の中身を私たちはどれほど具体的に想像できるだろうか。また震災以降、水や食料の備蓄、防災マニュアルも整えられてきたが、私たちの隣にいる「逃げ遅れる人々」の存在をどれほど思い浮かべることができるだろうか──。

本書は、私たちの想像力の欠如と共感力の乏しさを明らかにしつつも、ともすれば抽象的になりがちな「共に生きる」社会への道筋に光を当ててくれる証言集である。

3・11どう生きてきたのかが、被災障害者、家族、支援者それぞれの言葉で淡々と綴られていくが、そこにはメディアが好んで煽り、私たちも慣れ親しんでしまった感動話はなく、予想をはるかに超えた生々しい現実がある。情報から取り残され、逃げ遅れる視覚・聴覚障害者。命綱である電源の確保のために奔走する家族。たらい回しにされた末に、意に反して施設に収容された方の憤り。迷惑をかけまいと息を殺して生活しているにもかかわらず、追い打ちをかける偏見と妬み。さらわれてAV女優にさせられる知的障害のある女性。

一人一人の物語があるが、共通して言えることは周囲からの「みんな大変なんだ。特別扱いできない。家族が面倒を見ろ。家族ができなければ施設に入ればいい」という有形無形の圧力に晒されていることであろう。そしてこの圧力は、私たちの生きている社会が平常時から発している空気なのだ。筆者の心に白石さんの言葉が響き続けている。「障害は自分にもあるが、あなたの側(障害者をはじく世界を作っている)にもあるんだよ……その双方の障害を乗り越えていけるようにしたいのだ」

本書には、イエス・キリストも聖書も出てはこない。にも関わらず、いや、だからこそ教会で読まれるべき記録だと思う。ここに、本来教会が耳を傾けるべき人々の声、社会と共に担うべきものがあるからだ。

(評・吉川直美=単立・シオンの群教会牧師)
2015年6月28日号から

『そのとき、被災障害者は… 取り残された人々の3・11』
東北関東大震災障害者救援本部
発売日:2015/04/01

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