「第2回無牧ミニストリーズオンライン講座」(お茶の水クリスチャン・センター〔OCC〕首都圏宣教推進協力会主催)が11月9日、オンラインで開催。山崎龍一氏(OCC常務理事)が「知って備える! 教会実務〜無牧期間の教会運営〜」と題して講演し、教会が無牧状態になった時にどう対応すればいいのか、自身の体験を踏まえて語った。同講座には100人以上が参加。全国で8千教会のうち千教会が無牧、あるいは兼牧という現状の中にあって、無牧期間の教会運営に対する関心の高さが伺えた。【中田 朗】

山崎氏は、「教会生活40年の中で、無牧になった経験が3回ある」と話す。「1回目は教会に通い始めて2年目の高校の頃。その時は、牧師が代わることを考えもしなかった。何が何だか分からないまま、次の牧師が来た。2、3回目はキリスト者学生会(KGK)の主事の時で、その時は教会役員として無牧期間を過ごした」
「無牧と言っても、理由は恐らく100人いたら100通りある。重要なのは無牧になった理由」と言う。「例えば、牧師が宣教師に、神学校の教師になるなど、次の召しが与えられたケース。時期を定めて転任するが、後任の牧師が与えられないことがある。牧師が定年、老齢となり、一定の働きを終えて退任するが、後任牧師が与えられず無牧になるケースもある。前任牧師がよい働きをして転任、定年となり無牧になった場合、難しい面がある。教会員は後任牧師に前任の在り方を求めてしまい、穏やかに牧師交代を迎えながらも、次に嵐が来ることがある」
「次に、牧師と信徒とのぶつかり合いによる辞任。何らかの牧会上の方針、見解の違いにより意見が合わない。牧師の意見が強い場合、役員会の意見が強い場合、またその他の理由がある。この場合は深い痛みが伴う」
「次に、不祥事による辞職勧告、解任の場合。任期満了という形で辞めるが、後任が決まらないということもある。このケースは、教会を二分するような傷みが残ることがある。このように、無牧と言っても一概には言えない」

山崎龍一氏

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その上で、「無牧期間に教会に仕える役員の存在が、とても大切」と強調する。「皆が納得することを心から願っていくが、何が譲れて何が譲れないか、役員会で話しておくことが大切。この部分では納得できないが、主の導きなら前に進みましょう、この部分で納得していただけない場合は立ち止まってもう一度考えましょう、と。そういう判断基準を役員会できちんとわきまえておく必要がある。また誰か一人、無牧期間中、中心的に教会に仕える献身者を、互いに祈って立てることが重要だ」
「可能な限り、他教会の先生方と交わりを持たせていただくことも大切」と語る。「外部講師として来られた先生方や、近隣の教会の先生方と積極的に交わりを持たせていただく。役員会が孤立しないよう、無牧期間にこれを意識することはとても重要だ」
それぞれの理由を受けての教会の歩みと傷みについても触れた。「どんな理由であれ、教会から牧師が去るという時は、様々な傷みが生じる。良い働きをしてこられた先生に対しては、『行かないで』という気持ちになる。牧師と教会員とのぶつかり合いの場合は、深い傷を残すだけでなく、先生をサポートする側とそうでない側との対立構造も継続してしまうことがある。一致が難しくても、無牧期間の信徒献身者を立てるなり、役員の一人が神様の導きとして受け止めることが大切だ。そして、この傷みを直視し、傷みの表面的な理由と本質的な理由を見極めることから始めていくことが大事だ。きちんと傷みに向き合うことはつらい作業だが、教会が悔い改めたり、前進したり、成熟する大切な期間として受け止めていかないといけない」
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無牧期間の実務としては、「牧師の『つとめ』の再確認が必要なことだと思っている」と語る。「教会員でもできることと牧師にしかできないことを選別する。例えば、教会の月曜日のゴミ出しは牧師と牧師夫人がしていた、これは教会員がすべきことではないか、とハタと気が付いたりする。教会員でできることが山ほどあったのに、先生がしてくれていたということが浮き彫りになる。私たちにでもできること、牧師にしかできないことは何かを受け止め、その働きを次の牧師に委ねていくことが大切だ」
「協力を求める」ことも勧めた。「教団教派の場合は、同じ群れとの交わりを絶やさない。交わりの中で、いろいろな先生にご相談させていただく。登記変更、名義変更などかなり面倒な実務は、行政書士や社労士のプロにお願いすることをお勧めする。名義変更は単純に事務的のようでありながら、特に法人格がない教会の場合は辞められた先生との関係で成り立つ場合もあるので注意が必要だ。自分たちできることはやって、後は専門機関に任せることも大切だ」
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主日礼拝に関しては、「礼拝説教者をまず確保する、という発想になった」と言う。「1年間で53週。53人の先生にお願いするのはまず不可能なので、私が属していた教会の役員会では、まず3人の先生を探した。例えば神学校の教師や退任された先生、長年牧会をしていたが今は教団の事務局で働く先生、宣教師で長く働いていたが今は宣教団体の総主事、超教派団体のスタッフなど。少なくとも現在フルタイムの牧会をしていない先生を探そう、と。そしてA先生に第1週、B先生に第2週、C先生に第3週とレギュラーでお願いし、第4週はその主日ごとに探した。アドバイザー牧師をお願いできれば第5週に来てくださいなど、と。3、4人はハードルが高いので、2、3人が現実的だと思う。こうして説教者を何とか確保した」(次号に続く)

クリスチャン新聞web版掲載記事)