地上に立てられた教会の働きは、内部だけでなく当然外部にも及び、多岐にわたる。リニューアル新連載の第2弾は「教会実務を考える」。法人事務主事として教会運営の実際と様々な課題解決の経験を持つ河野優氏に、その知見を分かち合ってもらう。

河野 優 前日本同盟基督教団法人事務主事

この世で神の国を広げるために

「教会実務」と聞いてどんなことをイメージするだろうか。実務という言葉には幅広い意味があるが、多くは「事務的なこと」を思い浮かべるだろう。そして事務的なことと聞けば、何だかそれは面倒くさそうなイメージを持ってしまうように思う。

所属教団事務所で法人事務主事として8年間仕えてきた私の口癖は「面倒くさい」であった。教会実務とは実に面倒な働きであると常々思う。会計作業は1円の誤差も許されない作業で、財産の管理は緊張を強いられる働きである。文書の作成や行政手続き等もまた、誤字脱字や細かな手順に漏れがないように細心の注意が求められる。行事やプロジェクトの下準備は俯瞰(ふかん)的な視点とともに、個々の事柄の隅々まで目を配ることが求められる。

さらに実務の働きは人々の面前に現れてくるような働きではないため、しばしば縁の下の力持ちとか、陰の働きなどと呼ばれる。このような働きを自らやりたがる人は多くないだろうし、誰もいないのでしぶしぶ引き受けるということも少なくはない。

実務は確かに「面倒くさい」…が

しかし、教会実務を面倒と感じるのは、何も否定的なことだけではない。むしろ面倒に感じることが大切であり、そこから教会実務は始まると言っても過言ではないと私は考えている。というのも、教会実務の多くは事務的にこなすことで面倒を回避することも可能だからである。

例えば、コロナ禍にあって教会は様々な面倒に直面している。感染拡大防止のために、礼拝に集まることもままならない状況である。いっそのこと行政からの自粛要請や社会の声に応えて教会を臨時閉鎖してしまった方が面倒も少なく、間違いなく楽であるが、もちろんそのようなことはしない。

行政からの情報や、世間にあふれる玉石混淆(こんこう)の膨大な情報を精査し、社会の流れを意識しつつも教会にとってふさわしい対応が何であるのかを求めて御言葉に聞き、祈り、吟味し、信仰による決断を持って対応しているだろう。これらの対応は教会が何を大切にし、何のために存在しているのかについての、世に対する教会の証しでもあり、このような営みこそが教会実務の実体なのである。

「教会」実務は単に事務能力が優れているとか、世間一般と比べて遜色のない仕事であるとか、法令遵守が徹底されているとかだけでは不十分である。もちろんそれらを軽視すべきではなく、学ぶべき所や身につけておくべきことも多い。しかし、教会実務は何をおいてもまず、神のことばを唯一絶対の規範としてなされるべきものである。

教会実務における本質的な重要性は、この世に立てられた教会が安易に世に流されることなく、かといって世を軽んじて浮き世離れにもなることなく、神のことばに堅く立ってキリストのからだを建て上げ、この地に神の国を拡げていくことにある。それはまさに宣教の働きそのものであり、宣教に仕える働きである。

本連載では以上の考え方をもとに教会における財産管理、宗教法人運営、文書管理、不動産の取得や非課税の問題等の教会実務について、これまでの学びや経験、事例などを挙げながら共に考えていきたい。これを通して諸教会の教会実務が豊かになり、そこに仕える恵みや喜びを共に味わうことができればと切に願っている。

こうの・ゆう:1981年生まれ。東京基督教大学、神戸改革派神学校卒業。5年間の牧会と2年間の休職を経て2014年より日本同盟基督教団事務所・法人事務主事として奉職、2022年3月任期満了退任。現在、同教団・石神井福音教会協力教師、社会福祉法人キングス・ガーデン東京監事。

(次回は5月22日号に掲載)