8月14日号1面 紛争の影響受ける子どもたち~ JECA+WVJオンラインイベント
紛争の影響受ける子どもたち~最も小さい者たちと共に 教育機会確保は平和構築の種 JECA全国社会委員会 WVJとコラボでオンラインイベント
今年2月、ロシアがウクライナへの軍事作戦を始めて以降、全世界の難民の数は急増し、現在、千300万人あまりいると言われる。うち半数が子どもたちだ。日本福音キリスト教会連合(JECA)全国社会委員会(児玉智継委員長)は、ワールド・ビジョン・ジャパン(WVJ)と協力し、オンラインイベント「紛争の影響を受ける子どもたち~最も小さい者たちと共に生きる~」を、7月31日に開催。紛争の影響を受けている子どもたちの支援に関わってきた伊藤真理さん(WVJ支援事業部緊急人道支援課課長)が現状を報告した。【中田 朗】
最初に児玉委員長が会の趣旨を説明。「今回のウクライナ危機により、愛する家族や故郷を失った悲しみと、不安の中にある多くの人々に痛みに触れ、本当にいたたまれない思いになった。JECA全国社会委員会はこの地上にイエス・キリストの平和を実現することを祈りつつ、『ロシアのウクライナへの軍事侵攻に対する声明文─私たちの信仰の表明─』を3月1日に発表。その前後、私が牧会する布佐キリスト教会のメンバーの長下部穣さん(WVJサポートサービス部教会担当コーディネート)と話す機会があり、ウクライナだけでなく、世界中には数多くの紛争があって、その影響を受けている人々がいることを知った。同時に『この最も小さい者』(マタイ25・40)に目を向けてきただろうかと反省させられた」
「彼らと共に生きるには、まず現状を知ることから始まる。その一歩として伊藤さんから話を聞き、共に祈る時を持ちたいと考えた」と語った。
伊藤さんは、2003年2月からWVJに勤務。リベリア、スーダン、南スーダンに派遣され、避難生活を送る避難民が祖国に戻った先で生活を始められるよう支援してきた経験を持つ。
最初に、紛争の影響の深刻さ、多様さを知るためのUNICEF(ユニセフ)のデータ(05~20年)を挙げた。①子どもの死傷(直接・間接)10万4千100人、②子どもを兵士として徴用・使用9万3千人、③学校や病院への攻撃1万3千900件、④レイプや性的暴力1万4千200人、⑤子どもの誘拐2万5千700件、⑥子どもたちへの人道的アクセスの拒否1万4千900件。「実際の数字はもっと多いと言われている」と言う。
「これらに加え、紛争は子どもたちから教育を受ける機会を奪っている。そのため、WVではこれらの子どもたちに教育の機会を提供することが重要と考えている」とも語る。「世界で学校に通えていない子どもたちは3億300万人で、5~17歳の5人に1人は全く学校に通っていない。その状況は様々だ」
中東のイラクの例を挙げた。「イラクの西部モスルは、武装勢力の支配により激しい戦闘があった地域。14年8月以降、イスラム過激派組織ISILが3年間支配したが、16年にイラク軍によるモスル奪還作戦が行われた。その結果、建物が壊れただけでなく、昔ながらの地域社会、コミュニティネットワークも崩壊。社会だけでなく個人、家族レベルでも心理的負担による精神疾患のリスクが高まり、家庭内暴力の増加が深刻だった」
そんな中、WVは教育、保護の二つの柱を掲げて支援。「学習環境の改善、学校施設の修繕、机や椅子の設置、学用品の配布をした。学習に遅れのある子どもたち対象に、夏休みに補習授業をしたり、ストレスを軽減するレクリエーション活動をしたり、子どもたちの個々の状況に対応するためケースワーカーによる個別支援、地域社会で子どもを守るためのネットワーク構築などを行った」
「〝No Lost Generation(教育の機会を失う世代がいないこと)〟はWVだけでなく、他の国連機関、NGОと一緒に進めている取り組み。子どもの教育の機会を確保することは、将来的には困難に対する力を強め、貧困を断ち切り、平和を構築するための種だと考えている」
「ウクライナの子どもたちの未来も脅かされている。私たちは子どもたちのいのちをまず守り、次に生活基盤、尊厳を取り戻し、未来を取り戻す、包括的で息の長い、長期的な支援が必要だと考えている」
最後に、支援によって変えられた子どもたちの声を紹介。「家族と離れ離れになった6歳のバシェルちゃんは、学校に通え、支援も受けられるようになって『とてもうれしい』と語ってくれた。子どもたちは、想像できないような困難を乗り越え、新たな一歩を踏み出している」と語った。
質疑応答の後、紛争の影響を受けている子どもたちの「今」が守られ、自信を失っている子どもに神様からの励ましと力が与えられるようになど、参加者一同で祈りをささげた。
(クリスチャン新聞web版掲載記事)