4月15日以降、スーダン軍と準軍事組織との間で武力衝突が続いている、北東アフリカに位置するスーダン。国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)報道官の4月28日の発表によると、死者は500人超。その中には人道支援関係者も含まれている。36年以上、スーダンで人道支援の活動を展開してきた国際NGOワールド・ビジョン(WV)は、「何百万人もの弱い立場にある少年や少女が緊急の人道支援を必要としており、すべての子どもたちを危害から守る必要がある」と訴えている。(2面に関連記事)

スーダンは、情勢悪化の前から、ここ十数年で最も人道支援ニーズが高くなっており、人口の3人に1人にあたる千600万人が人道支援を必要としていた。
WVは、スーダンで活動する最大の人道支援機関の一つであり、スーダンにおける世界食糧計画(WFP)の最大の食料援助パートナーだ。これまで数十年にわたり最も弱い立場にある子どもや人々のため活動を展開してきた。昨年1年間では、食料、子どもの保護、保健・栄養、水と衛生の分野を含む緊急支援により、主に国内の女性と子どもを含む150万人に支援を届けた。だが、治安の悪化により現在、活動の一時停止を余儀なくされている。

武力衝突で危険にさらされているスーダンの子ども(写真提供=WVJ)

WVスーダン事務局長のエマニュエル・イッシュ氏は、こう語る。「スーダン全土で激化する暴力は憂慮すべきものであり、罪のない民間人、特に女性と子どもの命を危険にさらしている。特にハルツームと南ダルフールでは、スーダンの人々が何日も家に閉じこもり、食料と水を使い果たし、治安の悪化に直面している。千600万人近くが命を長らえるため人道支援を必要としているのに、暴力の激化は状況を悪化させるだけだ。すべての子どもは暴力、砲撃、トラウマの恐れなく、安全で保護された子ども時代を過ごす権利がある。WVは、人道支援パートナーと共に暴力の即時停止を求める。人道支援団体とスタッフは、アクセスを与えられ、個人の安全と通行の安全を保証される必要がある」
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スーダンで激しい衝突が続く中、子ども支援を中心に活動する国連児童基金(ユニセフ)、国際NGOのWV並びにセーブ・ザ・チルドレンの3団体は、子ども保護のための緊急行動を求める声明を発表。4月26日時点で合意されている停戦がすべての当事者によって尊重されなければ、子どもたちに危険が及ぶことを警告するとともに、何百万人もの弱い立場にある少年少女が緊急の人道支援を必要としており、すべての子どもたちを危害から守る必要がある、とした。
ユニセフスーダン代表のマンディーブ・オブライエン氏は「スーダンでは子どもたちが紛争の矢面に立たされている。彼らは死につつあり、彼らの未来は奪われつつある。ぜい弱な子どもたちが健康、保護、教育サービスを受けることが妨げられるならば、その影響は一生にわたり続く。弱い立場にあるすべての子どもたちが、どこにいようと緊急に手を差し伸べられるよう、戦闘を止めなければならない」と話した。

WVとWFP(世界食糧計画)との連携による栄養治療センターで。子どもの栄養状態を確認するWVスタッフ(2022年6月、南ダルフール)(写真提供=WVJ)

WVのイッシュ氏は「平和がなければ、極めて弱い立場にある少年少女、またそのコミュニティーに食糧援助や栄養支援を届けることは非常に困難だ」と語った。
セーブ・ザ・チルドレン スーダン事務所長のアルシャド・マリク氏は「保健医療施設や学校が受けた被害の全容はまだ明らかではない。私たちは緊急に、すべての子どもたちの食料、水、保健医療へのアクセスを確保する必要がある。子どもたちの命は危険にさらされている」と述べた。
長引く紛争による子どもたちへの影響を深く懸念する3団体は、すべての紛争当事者と国際社会に対し、以下の行動を求めた。
▽停戦を維持・尊重し、人道支援を再開できるように。広範な暴力と治安の悪化により、多くの州で人道支援活動が中止されている。3団体の施設から物資が盗まれている。人道支援組織と職員の安全を保証し、緊急の保健、栄養、保護、教育サービスを、子どもとその家族に提供できるようにすべきだ。▽子どもたちのために平和を受け入れ、学校を再開すること。子どもたちが学校に通っていない日々が続くほど、特に女子にとっては学校に戻って来られる可能性が低くなる。学習危機は世代全体にとっての大惨事となりつつあり、緊急の行動が必要だ。▽子どもを保護し、徴兵を行わないこと。子どもの軍隊やグループによる徴兵と使用は、身体的及び心理的な外傷的事象に深刻かつ長期間さらされることにつながる。
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ワールド・ビジョンジャパン(WVJ)は緊急人道支援募金を常時受け付けている。申し込みはウェブサイトURLhttps://www.worldvision.jp/donate/emergency.htmlから。【中田 朗】

2023年05月21日号   01面掲載記事)