「自殺願望と予防ワークショップ」が5月13日、オンラインで開催され、160人あまりが参加した。同ワークショップは、日本とラテン・アメリカに重点をおく国際宣教団体ミッションズ・コネックスのブライアン・タンゼン氏(日本地区ディレクター)が主催。サウスウエスタン・バプテスト神学校とパートナーシップを組み、ジョナサン・オキナガ氏、シェリル・ベル氏(両氏とも同神学校ビブリカル・カウンセリング教授)が「共通の自殺要因と助けるための聖書的アプローチ」をテーマに講演した。

最初に自殺をめぐる概要として、オキナガ氏が、アメリカにおける自殺の傾向や、自殺の原因、その兆しなどについて話した。「自殺予防は、日本でも大きな課題だ。どういった人が自殺願望を感じるのか。いちばん多いのは児童性虐待の被害者だ。世界的な統計を見ると、女性の約20%、男性の約8%が虐待を経験しているが、実際はもっと大きな数字かもしれない。次に退役軍人。アメリカの統計では、退役軍人は一般人の1・5倍、退役後に自殺している。続いて、高齢者、医療従事者などだ」

ジョナサン・オキナガ氏

「ティーンエイジャーが自殺する原因は、両親の離婚や親の薬物・アルコール依存症、精神疾患などだ。現在、日本では全国的に親の離婚が多いと聞いているが、親の離婚が増えるとティーンエイジャーの自殺率は高まる。自殺の可能性の兆候としていくつか考えられる。自殺未遂、自殺に関するSNSの投稿閲覧・書き込み、例えば、自殺ができる方法や手段の情報などだ。若い人が別れの言葉を口にしたり身の回りの整理をしている場合は注意しないといけない。また、破壊的行為、危険な行動が、一つの兆しとなる。極端な感情の波、孤立、引きこもり、睡眠パターンの乱れなど、こういった兆しが、自殺への予兆になる」と語った。

続いて、ベル氏が児童性虐待について語った。「児童性虐待の定義は、権威や力を使って性欲を満たすこと。加害者の行動パターンには二つあり、一つ目は、計画するのではなく機会を狙うタイプ。二つ目は、用意周到に準備し計画的に行うタイプ。この人たちは子どもたちと仲良くなり、接する機会を増やす中で対象を選択する。対象になりやすい子どもは、周りの子どもたちとの関係が希薄で、近づきやすい子だ。加害者は、最初子どもとの身体的接触の度合いを変え、その子が周りに話さないかどうかの反応を見て対象を決め行為に及んでいく。子どもに触れたり、脅したり、抵抗するのを押さえつけたりして、性行為をする。アメリカでは、性虐待の証拠となるものはほとんど残らないので、法的手段で加害者を捕まえるのが難しい」

「女性の5人に1人は性虐待を受けたことがある。児童性虐待の課題は、全員ではないが、子どもの時に受けた傷が大人になるまで影響を与え続けることだ。受けた傷について、大人になるまで周囲の人たちに話せない。不安、怒り、赦せない心、不信感、自己破壊的な傾向が現れる。皆が一律に現れるわけではないが、不安とうつ、罪悪感と恥などがセットで現れる場合が多い。人に対する不信感から、人間関係で問題が起きたりする。また、感情だけではなく、身体にも症状が現れる。これらのことは、自殺にもつながる。自殺未遂をした女性の多くが、児童性虐待の経験者ということが分かっている」

シェリル・ベル氏

「この児童性虐待で負った傷を癒やせるのは、神様しかおられない」と、ベル氏は力を込める。「すべての心の傷を癒やせるのはイエス様だ。すべての苦しみは、罪から生まれる。罪は、神様が与えてくださる愛を拒むことだ。私たちが傷を受けた時にどう対応するかは、一人ひとりの選択だ」

「エレミヤ書17章7、8節には『主に信頼する者に祝福があるように。(中略)その人は、水のほとりに植えられた木』とある。傷を受けると、神様から遠く離れているように感じる。荒野にいるようであり、周りに人もおらず隔離されているような状態だ。でも、その痛みの中で神様に信頼しようと決断すれば、人生の結果は100%変わる。神様を信頼する人は、水のほとりに植えられた木のように葉は茂り、実を実らす。私たちはいろんな傷を負っているが、御言葉を通し癒やしも受けている」

「虐待を受けている人は、自分は虐待を受けるために生まれてきたのか、と不安に思うかもしれない。決してそうではない。あなたは神様のために、神によって創られている。私たちは罪に満ちた国に生まれているが、神の御国には永遠のいのちが用意されている。不安や恐れを感じていたり、苦しみの中にいたとしても、神様はいつもあなたと近くにいる。この神様に信頼するなら、平安を与えてくださる。だから、恐れる必要はない」

虐待を受けたことで発症するうつについても触れた。「望みを失うと、うつになる。だが、うつになることは、自分が選んだ対応の結果だ。人生に罪悪感や困難が満ちていても、望みを失う必要はない、、、、、、、

2023年05月28日号 07面掲載記事)

 

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