「全キ災第8回会合」(キリスト全国災害ネット主催)が10月31日、東京・千代田区のお茶の水クリスチャン・センターで、JEA援助協力委員会との共催で開催された。川上直哉氏(NPО法人被災支援ネットワーク・東北ヘルプ代表、日基教団・石巻栄光教会牧師)が「支援と宗教」の題で講演した。【中田 朗】

川上直哉氏

最初に、2010年、世界教会協議会(WCC)とルーテル世界連盟(LWF)の関連教会によって設立され、日本キリスト教協議会(NCC)も加盟するエキュメニカルな国際的同盟「アクトアライアンス」の非改宗声明文を紹介。これは、特定の宗教的信仰のために個人やコミュニティを誘導する目的で人道支援、開発援助や政策提言活動を用いることを拒否するなど、適切な支援のための行動規範をまとめたもので、良い点だけでなく適応しにくい点も指摘。その上で、五つのキーワードを挙げて話した。
⑴密着と直結=教会は地域に密着し、その必要がよく分かる。そこに世界の支援が直接届く。避難者も教会ネットワークを使い、逃げて助かっている。⑵身内・客・他人=身内と他人の間のやり取りは大変。そこに客が間に入る。被災地では僧侶がその役を果たしていた。支援現場で、「何もしない」を「して」祈る僧侶の姿勢から学んだ。⑶宗教にもできること=宗教の真ん中に、福音、十字架、信仰、主、イエス・キリスト、他宗教なら仏様、アッラーなどがある。その重心から啓発と広報、追悼と想起、傾聴と伴走、集約と分配が生まれる。ディアコニアには「じたばたする」という意味があるが、そうしているうちに「棚からぼた餅」という経験もする。⑷宗教にしかできないこと=現場で神様が何をしておられるのかを見、赦すこと、祝福することに徹する。神様のすることを邪魔しない。⑸宗教と魂を獲得する高貴な競争=アンフェアな人は敗退する。「立派」であるかどうかが見られている。

ディスカッションで

最後にこう語った。「人が人として扱われない現場に、イエス・キリストの復活の力がある。そこに重心がある。神の裁きの『下げ振り』(アモス7・7参照)は、十字架のキリストに下された。そのキリストに私たちは救われた。だから、委ねて待つと、不思議とまとまる。現場で罪の意味を知らされ、十字架の逆説を間近に見て体験する」と語った。
講演後、質疑応答の時をもった。「私たちは、教会が地域と密着していなかったという認識だったが、その点はどう思うか」という質問に対し、川上氏は「そういう教会の反省もあったのは事実だが、被災者に物資を届ける教会は結構あった。小さい教会ほど地域に密着していたと私は思っている」と答えた。
そのほか、「支援と宗教」、「教会による災害支援の未来像」をテーマにグループディスカッションの時をもった。

2023年11月12日号 01面掲載記事)