いその産婦人科の外観

キリシタンの歴史が残る長崎県南島原市。ここで、いその産婦人科(磯野潔院長)は、マタイ7章12節を土台にした黄金律「自分にしてもらいたいと思う事を他の人にもしなさい」を基本理念にした運営をしている。

潔さんは、島原半島で江戸時代から続く、医者の家系で育ち、医療が身近にあったが、患者と向き合う思いを新たにした出来事がある。「祖父が大病で苦しんで亡くなった。そのとき、初めて患者家族の立場を痛感した。医者が来てくれるだけで本当に頼りになる。弱っている人、病んでいる人を助けたいという思いになった原点の出来事でした」

娘のすみれさんも産婦人科医として、2019年から同クリニックに従事、二人体制で診療に取り組むが、特に 「女医外来」が好評だ。潔さんは「地域の開業産婦人科医で女医は少ない。普段の診察でも初診に女医を選ぶ方が増えている。女性ならではの子育ての話ができるのもいいようだ。いつ何時、お産があるか分からず、外出もあまり遠くに行けないというのが産科医の家庭の宿命だった。地域の病院は、人口減少と同時に、後継者問題のために閉じざるを得ないところが多い中、助かっています」

妻で助産師の憲子さんは、桶谷式乳房管理法の認定資格を持ち、産後のケアを支えている。「セルフケアでは難しい授乳トラブルに対応するので、安心していただいています」

使命として取り組んできたのは、1994年から2017年まで、「小さないのちを守る会」(PLJ)の特別養子縁組事業に協力したこと。39人の妊婦を受け入れ、30人の赤ちゃんが養父母の元に届けられた。18年以降、PLJの同事業は終わったが、継続的な働きを模索している。「中絶の相談を受けたが、説得の結果、出産にいたったケースもある。胎児のいのちを守る、という故・辻岡健象さん(PLJ創設者)の思いを継いでいきたい」と話す。

お産の2割は、何らかの医療介入が必要だという。「母子のいのちが同時に危機にさらされた難しいケースも経験した。幸い助かったが、人のいのちにかかわる仕事のストレスは大きい。信仰が非常に大切です」

伝道活動に積極的だ。潔さんが信仰をもったのは栃木県の医大生だった1976年。トラクトを見て、保守バプテスト同盟宇都宮聖書バプテスト教会の特別伝道集会に出席した。その年のクリスマスに信仰告白をし、翌年バプテスマを受けた。「訪問した前年に開拓されたばかりの教会。来年は50周年となる」と振り返る。

磯野さん
93年のクリニック新築移転とともに、保守バプテスト同盟加盟のファミリーキリスト教会も開設、、、、、

2024年11月03日号 05面掲載記事)