祖父の家族が暮らす田舎の駅に着いたトントンとティンティンの兄妹 (C)A MARBLE ROAD PRODUCTION 1984
祖父の家族が暮らす田舎の駅に着いたトントンとティンティンの兄妹 (C)A MARBLE ROAD PRODUCTION 1984

祖父の住む田舎でひと夏を過ごす幼い兄妹の姿を通し、自然の美しさや子どもたちの友情をみずみずしく描いたホウ・シャオシェンの自伝的作品。最新のデジタル・リマスター技術で蘇えった美しい画面からは、日本人のノスタルジーが呼び起こされる佳き日本映画時代の芳香が漂ってくる。

【あらすじ】
小学生のトントン(ワン・チークァン)は、まだ幼い妹ティンティン(リー・ジュジェン)とお母さん(ディン・ナイジュー)の田舎で夏休みを過ごす。だが、お母さんは急な病気で入院した。急きょ、田舎から叔父のチャンミン(チェン・ボージョン)が、彼女のビーウン(リン・シューイン)を連れてトントンたちを迎えに来た。だが、途中下車したビーウンを改札まで送ったチャンミンは、列車に乗り遅れてしまう。

目的地の銅鑼駅に着くと、トントンは叔父に恥をかかせてはいけないとティンティンに言い聞かせ、駅前の広場で遊びながら時間をつぶすことにした。都会から来た子がリモコンカーで遊んでいるのを見て、阿正國(イェン・チョンクォ)らは地元の子たちが近づいてきて遊んでいるうちに、トントンのリモコンカーと正國のカメを交換する。

叔父チャンミンと町医者の祖父(グー・ジュン)の家に着いたトントンたち。ほどなく、地元の子どもたちがやってきて、ほかのおもちゃとカメと交換しようという。そのままトントンと地元の子どもたちは、川遊びやどこへ行くのにもいっしょに行動する。まだぬいぐるみを持ってついて行くティンティンは、仲間はずれにされていく。

あまり言葉がしゃべれず、いたずらな子どもたちを時折りぶってしまう寒子(ジャン・ジューフェイ)。町の男たちに弄ばれては妊娠するので、トントンの祖父は避妊手術をするよう父親に進めているが、父親は不憫で承諾しない。ある日、仲間外れにされたティンティンが、線路につまずいて倒れて泣いている。そこに汽車が近づいてきたが誰にも気づかれない。そこに日傘をさした寒子が来て危機一髪のところを助け起こすと、そのままティンティンを背負って歩いて行く。それに気づいたトントンは、ティンティンに寒子から降りろと言葉をかけるがティンティンはそのまま背負われて行く。ティンティンは、寒子の心を感じ取っている。

(C)A MARBLE ROAD PRODUCTION 1984
(C)A MARBLE ROAD PRODUCTION 1984

ある日トントンは、チャンミンの家に行くと、叔父は不在だったが二人の男が中にいた。以前に昼寝をしているトラックの運転手から金品を盗み取ろうとしてるところを見たた男たちだった。その後、トラック運転手に大けがを負わせた強盗容疑者として顔写真が町に張られていた。逃げるトントンを追う男たち。そこにチャンミンが帰ってきた…。

【みどころ・エピソード】
台湾は日本による統治時代があったことから、駅舎や民家の建築様式に日本と中国の文化融合、日本的な田園風景など80年代の懐かしい空気感がスクリーンに広がりどこか癒される。また、トントンの小学校卒業式での「仰げば尊し」やラストシーンの情景に「赤とんぼ」が流れるなど日本人の郷愁にもピッタシ合う楽曲が挿入されている。

本作は1984製作だが、前年の4月にアジアで初のディズニーランド(東京ディズニーランド)が浦安に開園され、子どもたちの海外旅行の話題に登場する。3年後の87年には戒厳令が解除され、夏休みの子どもの成長物語にとどまらず、台湾の経済発展と民主化への気運が感じられる愉しさがある。 【遠山清一】

監督:ホウ・シャオシェン(侯 孝賢) 1984年/台湾/台湾華語・客家語/98分/デジタル・リマスター版/原題:冬冬的暇期 英題:A Summer ot Grandpa’s 配給:熱帯美術館 2016年5月21日より(土)ユーロスペースほか全国順次公開(日本初公開は1990年8月25日)
公式サイト http://tontonrenren.jp
Facebook https://www.facebook.com/tontonrenren/

*AWARDS*
第7回ナント三大陸映画祭グランプリ受賞。第30回アジア太平洋映画祭最優秀監督賞。第38回ロカルノ映画祭スペシャルメンション受賞作品。