幸せが崩れた時 《連載》世の目人の目聖書の目―世相を読む(37)
碓井 真史 新潟青陵大学大学院教授/心理学者
前回
幸福は安定から、希望は変化から
4月は希望の季節だ。古いものは過ぎ去り、新しい生活が始まる。復活と希望の祭りイースターもある。研究によれば、幸福は安定から生まれ、希望は変化から生まれる。幸福は特別な贅沢(ぜいたく)ではなく、毎日の日常生活から生まれるのだが、その幸せな生活がいつまでも続くわけではない。子どもは成長する。大人は老いる。
4月は、故郷を離れ都会へ行く若者たちも多い。幸せで安定した家族や仲間たちから離れ、新しい旅立ちだ。だが4月は、まだ新しい場所に慣れない不安定な時期だ。カルトはこんな若者たちを狙っている。カルトは、愛にあふれた居場所と、やりがいのある使命を与える。もちろん見せかけに過ぎないのだが、見破ることは難しい。
幸せな生活が、いつまでも続けばよい。しかし、変化がなければ成長もできない。変化し、今までの幸せが崩れた時こそ、希望が求められる。目標を達成すれば歓喜にわくが、休まず次の目標だ。夢やぶれて、目標を失ったときも、新しい目標がいる。人生は残酷であり、もっとも愛していた大切なものを失うこともある。そんな人にこそ希望が必要だ。
「希望学」の研究によれば、希望は、新しい大切な何かを見つけ、みんなと一緒に一歩を踏み出す時に生まれる。入学試験に落ちて絶望する人がいる。失恋して、ストーカーになってしまう人もいる。新しい大切なものを見つけられなければ、もうだめだと思い込み、破綻(はたん)が待っている。
夢が大切だと言われるが、夢は夢のままだと、その人を押しつぶす。小学生が、将来はプロスポーツ選手になりたい、歌手になりたいと語るのは良い。しかし、何の努力もチャレンジもしないままで、18歳になっても同じことを言っているのでは困る。
夢が力をもつのは、夢に向かって着実に進むときである。プロを目指して、部活を頑張るのは素晴らしい。ある女子中学生たちが、宇宙の不思議についておしゃべりしていた。そこで私が「君たちが宇宙飛行士になって調べてきたら?」と言ったところ、、、、、
(2025年04月13・20日号 03面掲載記事)