[CSD]2009年2月22日号《ヘッドライン》

[CSD]2009年2月22日号《ヘッドライン》

 = 1面 ニュース=
★2・11集会:国でなくキリストに結集——負の歴史に学ぶ教会のあり方
★「豪史上最悪の天災」祈り要請——山火事被害広がる
★各に残る初期宣教の結実

 = 2 面 ニュース=
◎各地の2・11集会——新たな戦前の危機 「平和つくり」模索
★都心の庭園で国際礼拝40年——ホテルニューオータニのガーデンチャペルでD・ジャクソン氏が懐かしの講演
★<落ち穂>韓国人二人の定年後日本宣教

 = 3 面 =
★ロシア正教:総主教にキリル氏——西側宣教師に厳しい姿勢を継承
★国際:解放の神学の主導者、今は環境問題の論客
★いのちのことば社系列書店で月刊「幸いな人」販売停止に
★緊急検証:小牧者不祥事をどう捉えるか[1]カギは事実確認と説明責任
★<オピニオン>牧師の性的逸脱 教会は何をすべきか 記・藤掛 明

 = 4 面 ビジネスパーソン=
★電気供給の使命感を支えに——武井 邦夫さん[上](四国電力[株]常務取締役火力本部長)
★<サーバントリーダーシップ>[9]不完全だから協力し合える 記・真田 茂人

 = 5 面 情報 =
★<情報クリップ>催し情報・放送伝道ハイライトほか
★EBOOK:『ジュニアの祈りは聞かれる!』ストーミー・オマーティアン著(CS成長センター、1,050円税込)
★CD:「とっておきの賛美歌」歌・西由起子(ライフ・ミュージック、1,575円税込)
★BOOK:『ワカ オン ステージ』春風イチロー(ロゴス腹話術研究会、5,000円税込)
★REVIEW:『父とショパン』崔善愛著(影書房、2,100円税込)評・根田 祥一

 = 6・7 面 宣教座談会/岡山・広島・山口 =
★教会に閉塞感はあるのか?——まずは危機意識の共有から
赤江弘之・小林啓一・拝高真紀夫・三浦栄樹

 = 8・9 面 新学期特集 =
★随想:新しい学びと出会いが待っています 記・守部喜雅
★「臨床死生学・グリーフケア分野」——聖学院大学大学院で新分野スタート
◎自身の霊性と牧会見直したい——牧会塾開設に大きな反響
★やさしい聖書ギリシャ語など——お茶の水聖書学院が公開講座
★伝道のための実践的学び——東京聖書学院一年訓練コース

 = 10 面 教会学校 =
★<教会学校の実情を探る>福音を手渡す 教師の特権——御言葉の驚き・喜びを聴く側に立って 記・錦織 寛
★<CSもうひと味>『はじめての信仰問答 キリスト教がよくわかる』鞭木由行著(CS成長センター、892円税込)

 = 11 面 クリスチャンライフ =
★<逝去>信徒伝道者・鈴木留蔵さん逝く——天に宝を積み続け98歳
★「私たちの解放」考えるために——3月19日から部落解放青年ゼミナールin関東開催
★<痛みの中に生きる人たち>子育て編[5]「弱い自分」を教会でさらせない

 = 12 面 教会 =
◎日本プロテスタント宣教発祥の地で「開かれた教会であり続けたい」——日本基督教団横浜指路教会

◎各地の2・11集会−−新たな戦前の危機 「平和つくり」模索=0902220201

 2月11日前後、キリスト教界では「信教の自由を守る日」を覚える集会が今年も各地で開かれた。講演では「戦争準備」が進む危機感や、その中で「平和つくり」を目指すキリスト者の社会責任、歴史から学ぶ信仰のあり方などが焦点になった。

 東京・中野区の同盟基督・中野教会で開かれた2・11信教の自由セミナー 関東地区集会(日本同盟基督教団「教会と国家」委員会主催)では、岡山英雄氏(JECA・東松山福音教会牧師)が「危機の時代に平和の民として生きる」と題して講演した。
 岡山氏は「わが国で信教の自由がなかった時代が2度ある。一つは1614年から1868年までのキリシタン禁教時代、もう一つは1941年治安維持法改定後の戦時中の宗教弾圧時代」だとし、「歴史を見ると完全な信教の自由の時代のほうが短いのでは」と語る。
 この二つの時代に生き、迫害を受けたキリスト者から学ぶべきこととして、特に「来世的キリスト教」を挙げる。「キリシタン禁制時代は『死んで御国へ行く』ことが今を生きる大きな力となった。キリシタンたちは苦しみに遭っても最期まで信仰を貫いた。戦時中はキリストが王の王、主の主として来られるという再臨信仰が、天皇の支配と対抗するとして、特にホーリネス教会が迫害を受けた。共通項は『この世を超えた永遠の世界』への信仰だった」
 最後にクリスチャンの使命は、?国家が自己目的化することを監視・警告する見張り人としての預言者的役割、?時が良くても悪くても御言葉を宣べ伝える福音宣教、?来世と主の再臨への希望をもちつつ迫害下でも死に至るまで忠実であること、と語った。

 東京・新宿区の改革派・東京教会で開かれた2・11集会(改革派東部中会社会問題委員会主催)では、西川重則氏(「靖国神社国営化反対福音主義キリスト者の集い」代表)が「有事法制下の靖国神社の今を考える竏猪ヰカ首相が提案する靖国神社非宗教法人化とは」と題して語った。
 西川氏は、「有事法制下における宗教法人靖国神社」について、「同神社の国家管理を規定した靖国神社法案が初めて国会提出された1969年ごろ、同神社は法案に賛成の立場だったが、現在はそうではない。私は、兄が戦没者として合祀されている関係から、権宮司と靖国神社のあり方を話した。その結果、『宗教法人としての範囲内で活動していくべき』との認識をおもちになった」と解説。
 にもかかわらず、同神社を国営化しようとする動きがあり、その最たる目的が天皇の同神社参拝の実現、と西川氏は指摘する。「しかしA級戦犯を合祀している以上、天皇は参拝しない。そこで麻生太郎首相が外相時代の06年に提案したのが、靖国神社非宗教法人化。宗教法人でなくなれば、A級戦犯分祀の道も開け、政教分離原則にも抵触しない。『天皇の御親拝、国民の慰霊』が麻生氏の年来の悲願だ」
 西川氏は10年以上、国会を傍聴し続けており、「国会では、既に麻生提案を巡って質問が始まっている。『はだかの国会』の現状を知り、私たち主権者が声を上げていかなければ」と訴えた。

 新潟市での「信教の自由」講演会(日本同盟基督教団新潟山形宣教区ヤスクニ委員会主催)では、同教団「教会と国家」委員会委員長の朝岡勝氏(徳丸町キリスト教会牧師)が「神を恐れ、王を尊べ」と題して講演。信教の自由の課題を「教会の告白的な課題」と捉え、ナチスに抵抗したドイツ告白教会闘争の「バルメン宣言」を取り上げた。
 「神を恐れ、王を尊びなさい」と?ペテロ2・17を引用する同宣言第5項に着目し、「そこでは国家もまたキリストの主権の下にあるものと位置づけられている」と指摘。キリストや教会を語るそのままの語り口で国家の問題を語るという姿勢が国家の問題を正しく取り扱う醒めた視点を教えているとして、「教会が国家の問題について発言しようとする際、それが信仰の論理でなくこの世の政治的言説に取り込まれていくことも起こりうる。教会が固有の信仰の言葉を獲得しきれていないという現状があるのではないか」と問題提起した。
 第5項が国家を正しく対象化し、一貫して「聖書はわれわれに語る」という姿勢を保ち続けたことを指摘。?ペテロ2章では国家の政治的権威が重んじられつつも、主なる神の絶対的な権威の前では相対化されていることを明らかにし、日本の時代状況の中で、バルメン宣言の透徹した眼差しをもって地上の権威を相対化し真の王キリストの主権を告白する、キリスト者の国家に対する基本的な態度を提示。「神を恐れる」ゆえに「王を尊ぶ」ことの意味をしっかり受け取るよう促した。

 名古屋市での信教の自由を考える講演会(「信教の自由」東海福音主義者の会主催)では、「学座・とうごまの葉の下」代表の正田眞次氏が「戦前へ突き進む潮流に抗するために―キリスト教会の社会的責任―」と題し講演した。正田氏は、湾岸戦争以降イラク戦争に至る米国の戦争に日本が協力を続けてきた流れと、国会で法整備が進み「憲法九条改正」が目前に迫る状況から、「日本は今や戦後を終えて戦前に突入した」と認識。「戦後責任は、戦前へ突き進む潮流に抗する責任でもある」として、主イエスの平和つくりを共に担うキリスト教会の「社会的責任」に焦点を当てた。
 戦後から戦前へ突き進む潮流に抗するために必要なことは、聖書信仰に立って先輩のキリスト者たちが歩んだ歴史と向き合うことだと主張。キリスト者は政治や社会に関わるべきではないという福音派の伝統に対して、「キリスト者の社会的責任」を打ち出したローザンヌ誓約を、マニラ宣言、沖縄宣言と共に評価し、その意義を概説。内村鑑三、新渡戸稲造、矢内原忠雄らの非戦・平和の信仰にも触れた。
 キリスト者の社会的責任で避けて通れないのが戦争と平和の問題だとして、「この責任を教会が怠ると、致命的で取り返しのつかない過ちへと誘惑される」と、教会が国家に隷属する危険を指摘。「戦争に向けた現在の日本社会の構造的な状況、戦争に関わる政府や国会の動向に注視しなければならない」と警告した。

 東京・杉並区の浜田山キリスト教会で開かれた第17回関東三地区2・11集会(JECA・関東三地区信教の自由を覚える集い実行委員会主催)では、「憲法改正と信教の自由」をテーマに行政案件を専門とする細田浩弁護士(昭和町キリスト教会員)が講演。「冷戦の前後で政策、制度が変化した」として、90年代以降、自衛隊が国内の安寧秩序を守るだけでなく、国連軍との協力体制をとり(PKO法案)、9・11の直後にはテロ対策特別措置法を成立させ、その後数年の間に有事関連3法を成立させるなど「国民不在で一気に戦争準備を進めている」と指摘。安倍内閣時に成立した国民投票法の危険性について、(1)改正賛成・反対の二者択一(2)衆参議院可決後半年以内の投票(3)公務員、教職、一部マスコミの運動禁止(4)最低投票率の規定なし(5)投票権18歳以上を挙げた。
 「改憲が動き出してしまうと冷静な判断が難しい。教会の内外で日頃から議論を深める必要がある」とし、「各論で違いはあっても『礼拝を守る』など一致する部分に目を留める」重要性を語った。
 また、「戦争経験者が語り伝えることは大切だが、『あんなひどい戦争はいけない』という経験者の声がどこまで伝えきれるのか。経験主義に陥らず、戦後世代からの『それでも戦争はいけない』という志向が将来の平和をつくり出すのでは」と述べ、「クリスチャンは信仰の立場から平和を伝えていくことができるはず」と語った。

◎自身の霊性と牧会見直したい−−牧会塾開設に大きな反響=0902220901

 神学校で数年間学んだだけで牧会の現場に遣わされる牧師たちは、様々な問題や悩みに突き当たる。そうした教職者が互いの経験を分かち合いながら学びと交わりを深めようと有志が立ち上げる「牧会塾」が、大きな反響を呼んでいる。4月開講を前に昨年12月に開かれたプレスクールには、主催者の予想を大きく上回る約130人もの牧師・牧師夫人らが参加、申し込み・問い合わせは合わせて30人に達した。
 問い合わせからは、開拓伝道に励んでいる若い牧師が「継続的に牧会を学んでいく場を望んでいた」、長年の開拓・伝・牧会を夢中でしてきて体調を崩し「ゆっくりと休養しながら自分の牧会の歩みを見直したい」などの声が聞こえてくる。前任牧師が長年牧会してきた教会を引き継いで「真の教会とは何かを考えたい」、働きながら牧会している人がその疲れを覚えながらも「もう一度自分を見直し、牧会に取り組みたい」、中には「信徒として共に牧会の痛みを分かち合っていきたい」などの動機もある。
 牧会塾コーディネーターの森直樹氏は「それぞれの方がとても真摯に、今までの自分の歩みを見直し、新たな自身の霊性、牧会の見直し、教会形成を目指している。牧会塾に対する期待に身が引き締まる思い」と受け止めている。
 前期の坂野(慧吉)クラスと太田和(功一)クラスは教職者とその配偶者対象、堀(肇)クラスは教職・信徒とも受講可。申し込みは3月31日まで。Tel.090・1701・3088。URL http://www.pastors.jp

◎日本プロテスタント宣教発祥の地で「開かれた教会であり続けたい」−−日本基督教団横浜指路教会=090

[img align=right]http://jpnews.org/pc/uploads/img499cc866bba70.jpg[/img] 日本プロテスタント宣教の初期、キリスト教布教に大きく貢献した宣教医J・C・ヘボン(James Curtis Hepburn)。そのヘボンが開いていたヘボン塾で学んだ青年たちが中心となり設立された日基教団・横浜指路教会(藤掛順一牧師)は今年で創立135年を迎える。同教会では今年、ヘボン来日150年、同教会設立135年の歴史を振り返ろうと、様々な記念会や特別礼拝、修養会を開く。

日曜の礼拝には
毎回新来者が訪れる
 日曜の礼拝に毎週新来者があるという同教会。国土交通省の景観100選に選定されている横浜市中区の関内駅からほど近く、国道16号線沿いの人通りの多い地区にある。観光名所のみなとみらい地区や中華街に挟まれた立地。平日も木、金、土曜日に会堂を一般開放し、通りがかりの人でも自由に出入りできるようにしていることもあり、訪問者が絶えない。「訪れる人たちは、クリスチャン、クリスチャンでない人、黙想にくる人、静かに祈る人などさまざまです」。そう語るのは、同教会の藤掛順一牧師。
 平日の日中、マティス社(スイス)のパイプオルガンの音色を聴こうと、オルガニストの奏楽練習を聴くのを楽しみに訪れる人もいるという。「『今日はオルガン演奏はないのですね』と質問されることもあります。訪れる目的はいろいろですが、このような機会が、教会外の人たちとのよい接点になっています。日本のプロテスタント宣教発祥地にある教会としての利点を生かし、外に向かって開かれた教会であり続けたいです」


関東大震災で倒壊
大空襲時に内部全焼
 同教会は1874年に設立。初代牧師はアメリカ長老教会の宣教師ヘンリー・ルーミス。当初は「横浜第一長老公会」と名乗るが、1876年に住吉町に会堂を得て「住吉町教会」と改称した。1877年にジョージ・ウィリアム・ノックス宣教師が来日し、牧師に就任。
 その6年後、創立期から教会設立に関わった南小柿洲吾が、同教会の初代日本人牧師となった。この頃「日本基督一致住吉町教会」となった。ヘボンと同年に来日したS・R・ブラウンが開いていたS・R・ブラウン塾卒業生の山本秀煌、井深梶之助らが、次いで同教会牧師となった。「1904年から40年までの36年間(毛利官治牧師時代)に、受洗者数約千600人との記録があります。ある年には毎週受洗者が与えられていたようです」。1923年には、ヘボンの尽力によって現在の場所に赤レンガの教会堂が完成。同時に、ヘボンの母教会Shiloh Churchにちなんで教会名を「日本基督指路教会」と改称した。
 試練もあった。赤レンガの教会堂が1923年9月、関東大震災によって倒壊。3年後に再建された現在の会堂も、1945年5月の横浜大空襲時には内部が全焼した。
 43年間、同教会に通い続けている長老の岡部一興さんは言う。「建物自体は残ったので少しずつ改修工事を進め、更に1960年、1990年の2度の大改修を経て今日に至ります。現在、外観は横浜市認定歴史的建造物に認定されています。会堂を大切にしながら、会堂と共に信仰生活を守ってきました」
 日本のプロテスタント宣教の歴史と共に歩んできた伝統ある同教会。日本基督教団に所属しつつ、長老派の伝統を生かすために「連合長老会」に加盟して歩んでいる。過去を重んじつつも、「イエス・キリストの福音が正しく語られ、誠実に聞かれる」教会であり続けることを求め、次世代にも開かれた教会形成を目指す。

 日本基督教団横浜指路教会=〒231-0015神奈川県横浜市中区尾上町6ノ85。Tel.045・681・3804。URL http://www.yokohamashiloh.or.jp/index.html