[CSD]2011年9月11日号《ヘッドライン》

[CSD]2011年9月11日号《ヘッドライン》

 = 1面 ニュース=
★支援と宣教は一体——第12回シンポジウム「地方伝道を考える」
★苦しむ人の痛みに出会う旅——明治学院高校の韓国研修旅行

 = 2 面 ニュース =
◎東アフリカ最悪の干ばつ——ソマリアなど1200万人以上 飢饉に直面
★各地で活躍する賛美リーダーら6人がCD「僕らのすべて」を合作——「すべてを共有しささげる」を大切に
★ノルウェー:テロ攻撃に悲嘆する国民——国内外教会の支援に慰めうける
★<落ち穂>龍馬の甥・坂本直寛 没後100年

 = 3 面 教界ニュース =
★<竜馬をめぐる人々>[59]坂本直寛の章:18——相次ぐ妻の死 失意と信仰 記・守部喜雅
◎<逝去>三谷幸子さん102歳 主のみもとに凱旋——「賛美は生活から湧き出る神さまへの応答」
★日本福音教団:宮平勉牧師を正式除名——伊藤牧師司祭会など諸教会に謝罪

★<オピニオン>被災地にボランティアを送る意味 記・ジョナサン・ウィルソン

 = 4・5 面 全面広告=
☆10月16日は「世界食料デー」 主催:世界食料デー実行委員会/日本国際飢餓対策機構
☆2011 世界食料デー大会 各地で開催 
 ホームページ http://www.jifh.org/

 = 6 面 ビジネスパーソン=
★萩原 達夫さん[下](CVSリーダーシップインスティテュート インストラクチャー)——日系企業をサポートしたい
★<定年後の挑戦>[5]リタイア・ライフは居場所づくり 記・星野 隆三

 = 7 面 牧会/神学/神学=
★関東大震災を宗教者はどう受け止めたか[上] 天譴、試練、摂理、犠牲的贖罪死…
★米国:『共通英語聖書』旧新約が刊行——理解しやすい翻訳、最近の動向も反映

 = 8 面 ひと=
◎ヘザー・バウザーさん(米国の枯葉剤被害者)——ベトナムの枯葉剤障害者家族を訪ねて橋渡し

 = ?—?面 別刷クリスチャンライフガイド =
★キリスト教学校におけるリベラルアーツのうねりが意味すること 記・阿久戸 光晴(聖学院大学学長)=1109110901
★様々な人と出会い人格を磨く 記・小暮 修也(明治学院高等学校校長)=1109111001
★伝統生かし活気ある学校に——坂田雅雄(横浜共立学園 学園長・校長)=1109111002
★キリスト者を成熟へと導く教育を——小林高徳(東京基督教大学神学部長)=1109111201
☆神学校案内



◎東アフリカ最悪の干ばつ−−ソマリアなど1200万人以上 飢饉に直面=1109110201

 「アフリカの角」と呼ばれるアフリカ北東部の国々(エチオピア、ケニア、ソマリアなど)では現在、過去60年で最悪と言われる干ばつが発生し、千200万人以上が食糧危機に陥っている。国連はこれまで、ソマリア南部が最悪レベルの「飢饉」に陥っていると宣言。国際社会が直ちに対応しなければ、問題は瞬く間に拡大する恐れがあると警告している。キリスト教支援団体は地元NGOと連携し、緊急支援活動を行っている。

 370万人が食糧危機の影響を受けているソマリアでは、39万人の子どもたちが栄養不良状態にあり、南部の約14万人が急性栄養失調で死の危機に直面している。今も内戦状態にあるソマリアでは、140万人がソマリア国内で避難民となっており、遊牧民らは家畜を失い、食糧支援を求めて都市に移動。戦闘から逃れ、水と食糧を求めて、これまで60万人が隣国のケニアやエチオピア、ジプチに難民として流出しており、国境付近の難民キャンプは飽和状態だ。
 ケニアでは約400万人が食糧危機に瀕しており、干ばつの影響がある地域に住む38万5千人の子どもらと9万人の妊婦や授乳中の母親たちが深刻な状態にある。
 これを受けワールド・ビジョン(WV)は、ソマリア南部、エチオピアとの国境付近のドロ地域とプントランドで栄養失調の子どもたちを対象とした栄養補給、緊急医療、水・衛生、子どもらと女性の保護を中心とした支援活動を実施。ケニアでは少量や水、衛生キットを配給すると共に、栄養供給センターを開設し、栄養補給プログラムや外来治療を通じて、子どもたちと妊婦や授乳中の母親に栄養補給の支援を実施している。
 ワールド・ビジョン・ジャパンでは募金を募っている。【郵便振替】00130・6・2544059、特定非営利活動法人ワールド・ビジョン・ジャパン(通信欄に「アフリカの角」と明記)。
     ◇
 日本国際飢餓対策機構(JIFH)は、パートナー団体の国際飢餓対策機構(FHI)、ストップ・ハンガー・ナウ(SHN)、バルナバス・ファンドと協力し緊急援助活動を行う。また9月12日から24日まで、清家弘久スタッフをソマリアから多数の難民が流入している隣国ケニア北東部の難民キャンプなどに派遣、飢餓の現状や支援状況を視察する。
 FHIはすでに、ソマリアからの難民流入で食糧危機が悪化しつつあるケニア北東部とエチオピア南部のソマリア国境地域で食糧支援と予防接種を行っている。バルナバス・ファンドはエチオピア南東部のソマリア国境地域で小麦粉の配給を行っている。SHNは、ソマリア国内各地の名人キャンプ、学校、孤児院で緊急食糧パック57万食を配給予定。ケニア東北部、エチオピアでも緊急食糧パック70万食分の配給を計画している。
 JIFHでは募金を募っている。 【郵便振替】00170・9・68590、日本国際飢餓対策機構(通信欄に「ソマリア」と明記)。

◎<逝去>三谷幸子さん102歳 主のみもとに凱旋−−「賛美は生活から湧き出る神さまへの応答」=110

 東京基督教大学の前身、日本クリスチャンカレッジ・東京基督教短期大学の創立当初から27年間、教会音楽の教鞭をとりクワイヤーを指導し、教会の牧師・牧師夫人など大勢の教え子たちから慕われていた三谷幸子さん(同盟基督・中野教会員)が、8月28日午前1時31分、地上での102歳の生涯を閉じ主のみもとに召された。
 三谷さんは、日本で最初の音楽伝道者、また聖歌・讃美歌作者としても知られる三谷種吉の次女として1909年(明治42)に生まれた。30年(昭和5)に米国カンザス州のサライナー音楽院に留学し35年に帰国。その後、55年(昭和30)に日本クリスチャン・カレッジ(後に東京基督教短期大学となる)で音楽を教え始め、82年(昭和57)に東京基督教短期大学の音楽教師を退任し、同校の名誉教授となった。
 退任後も教え子たちとの絆は強く、諸教会からの求めなどにも応じて、日本全国および海外にも足を伸ばして音楽活動に取り組んでいた。91歳となった2000年には、神学校の卒業生ら四十数人がクワイヤーを組み「三谷クワイヤーミレニアム・コンサート」を開催。かくしゃくとした姿で指揮をし、「賛美は生活から湧き出る神への応答」という三谷さんの信仰姿勢が証しされた。  28日は、入居していた埼玉県草加市の草加キングス・ガーデンで午後8時から葬儀(密葬)が行われた。遺族、教え子、東京キリスト教学園関係者ら七十数人が参列。三谷さんの愛唱歌の数々を歌い、元クワイヤーメンバーらが急きょ「主イエスの歩みし道」を合唱した。司式は中野教会の石川弘司牧師。教え子の一人で式辞を述べた藤原導夫牧師(バプ教会連合・市川北教会)は、三谷さんの愛唱聖句イザヤ46・304を読み、「三谷先生は、神様に背負われて歩んで来た過去、歩んでいる現在を、いつも感謝しておられた。神に愛され、神を愛し、人を愛し、人に愛されて、その人生を歩まれた方であった。私たちも先生に倣って自らの人生を歩みたい」と、神に信頼して歩む生活からの賛美を、しっかりと受け止めて語った。
 三谷幸子さんのお別れの会は、10月17日(月)午後5時から同盟基督・世田谷中央教会(世田谷区桜新町1ノ14ノ22)で行われる予定。

◎ヘザー・バウザーさん(米国の枯葉剤被害者)−−ベトナムの枯葉剤障害者家族を訪ねて橋渡し=11091

米国での枯葉剤被害者としてベトナム被害者を訪ねたへザー・バウザーさん
——枯葉剤被害者として癒しの旅だった



ベトナム帰還兵の父の家族にとって「癒しの旅」であり、枯葉剤による米国人障害者として初めてベトナムの障害者家族を訪問したヘザーさん


 ベトナム戦争時、米国は1962~71年まで南ベトナムの密林に大量の枯葉剤を散布し、ダイオキシンなど有害な化学物質を浴び続けた。広大な土地とベトナムの人たちや米軍帰還兵たちの身体に有害な化学物質は蓄積し、薬物による重い障害を負って誕生する子たちが今も続出している。その現状を撮ったドキュメンタリー映画「沈黙の春を生きて」(坂田雅子監督)。へザー・A・バウザーさんは、その障害者の一人としてベトナムの被害者家族を訪問。同作品でもその交流の様子が描かれている。

この作品に「一つ
の力が加わった」

 なんともステキな笑顔の人だ。枯葉剤薬物の影響で四肢に障害を持つが、暗さなど感じさせない自然な雰囲気。昨年10月、枯葉剤被害者の米国人として初めてベトナムの被害者家族を夫のアーロンさんと共に訪問した。映画「沈黙の春を生きて」を撮った坂田監督は「彼女との出会いで、この作品に一つの力が加わった感じを受けた」という。
 ベトナム帰還兵の父は、1968~69年までビエン・ホア基地で軍務に就いていた。いまも高濃度の有害化学物質を計測するホットスポットの一つだ。その影響で、右足のひざ上から下がなく、左足の親指と両手の指も欠損という障害を持って生まれた。
 「私が生まれたとき、母はとても大きなショックを受けました。父も責任を感じて、二人ともお互いに自分を責め合っていた。まだ、原因が何か分かっていなかったからです」。それが、ベトナム戦争での枯葉剤の影響で帰還兵自身が身体的精神的にさまざまな病気を発症し、生まれてきた子どもたちにも障害が見られるようになってきた。「両親も私も声を上げて、闘うようになりました」。
 小さい時から義足に擦り傷をたくさん作るようなおてんばさんで好奇心も旺盛。高校の時はマーチングバンドに入り行進しながらトランペットを吹いた。そのチャレンジ精神と稀有な存在は、新聞でも報道され町でも有名になった。そして、枯葉剤の影響のことも訴えた。
 小さな町で枯葉剤による障害者はヘザーさん一人。その孤独感はあった。だが、インターネットを検索していて、2008年から活動し始めたベトナム帰還兵の枯葉剤被害者の未亡人と障害者のネットワークエージェント・オレンジ・レガシーを知り、心からうれしかった。「私と同じような被害者が、この広い国にもいる。私は一人じゃないんだ」。このネットワークを通じて、ベトナムの枯葉剤被害者を追っていた坂田監督とも出会った。



ツーズー病院を訪問し、同じ枯葉剤の化学物質で障害を負った若者や子どもたちとも交流したヘザーさん(右端。映画「沈黙の春を生きて」より
©2011 Masako Sakata/Siglo

いやしと希望の
アートと心理学
 「アートは私の人生にとても大きな役割を果たしいる。非常に強いストレスに落ち込んだ時に、その苦しみから逃れられる一つの道であったし、いやしを与えてくれた」。自身でも油絵を描き芸術での学位も取得。05年には、心理学の修士課程も修了した。人付き合いが好きなこともあるが、「父と同じベトナム帰還兵が、心理面でケアされていないと感じさせられてきたこと」が、学びを続けた理由の一つでもある。「私自身、ベトナム帰還兵家庭に生まれ、PTSDにも苦しんだ父のような状況を経験してきた。私にとっても一部なのです」。
 ベトナムの枯葉剤障害者家族を支援するNGOは、諸外国から参加しいくつもある。だが「米国には、そういう組織は無い状況です」。それだけに、オレンジ・レガシーの存在がうれしかった。全くの民間外交だが、枯葉剤を散布した国の同じ障害者として初めてベトナムの被害者家族を訪問したのは、「米国にも同じ被害者がいることを知ってもらいたかった。そして、私の家族には癒しの旅でもあった」。訪問した感想は「すべての経験をとおして強くされた。これから、親密な関係を作っていく橋渡しのような働きができたことは意味があったと思う」と、歴史的な一歩を踏み出せたことを素直に喜ぶ。
 「映画は、美しい形で枯葉剤や科学物質被害について問題提起している」。その美しいシーンの一つ。全盲の一弦琴奏者が奏でる「アメイジング・グレイス」に合わせてハミングするヘザーさん。その現実の記録が、これからの新しい現実を作り出していく力になるようにと祈らされる。
◇     ◇     ◇
 ドキュメンタリー映画「沈黙の春を生きて」は、9月24日(土)より10月21日(金)まで東京・神田の岩波ホールにて限定上映される。【遠山清一】
 映画の公式web http://cine.co.jp/chinmoku_haru/