[CSD]2012年3月11日号《ヘッドライン》

[CSD]2012年3月11日号《ヘッドライン》

 = 1面 ニュース=
◎腰を据えた復興支援:内職で生活自立を応援——生きがい・地域再生 教会が手助け

 = 2 面 ニュース =
★3・11主日に連鎖祈祷を——JEA 世界福音同盟とおして呼びかけ
★イムマヌエル:災害対策室常設で危機管理——教団新代表に藤本 満氏
★福音自由:大規模災害に備え対策本部設置——各地の災害支援センターで迅速対応
★<落ち穂>塩狩峠から103年
★<情報クリップ>催し情報・放送伝道ハイライトほか

 = 3 面 教界ニュース =
★<いのちへのまなざし>[2]寄り添うケアと背負うケア 記・柏木哲夫
★ネット上で対話伝道——eコーチセミナー各地で展開
★<オピニオン>「3・11大震災」あれから1年(前編)——教派の壁を超える「支援と宣教」 記・森谷正志

 = 4 面 全面広告=
☆奥山実 宣教50周年記念事業 リバイバルに備えて
2012年3月23日(金)午後2時~8時 会場:淀橋教会
TEl.090-7079-5011(ツボイ)

 = 5 面特別企画/東日本大震災から1年=
★腰を据えた復興支援:放射能不安訴える福島県民——「いのちの水」届け続ける
★過酷な被災地に讃美歌で慰めを——全盲の福音歌手 北田康広さん

 = 6—9 面 特別企画/東日本大震災から1年=
★心のケアのため礼拝して——南三陸町にクリスチャンセンター設置へ
★「地域振興のシンボル」——教派超えた協力で石巻クリスチャンセンター設立
★パワーの源知りたくて聖書を読み始め——支援ボランティアに出会い「見捨てない神様」を信じた
★避難者の生活再建を応援——仮設住宅・アパートを訪ね続ける教会拠点のNPO「グレースコミュニティサービス」
★「私は郡山に留まります」——チェリノブイリの信者の励まされ 三箇豊実牧師
◎救世軍:地元に益仮設店舗建設に参画——行政の手届かない「みなし仮設」支援を宮城県が要請
◎「忘れない思い」を世界へ——被災地の教会から「しんちゃんねる」
 = 10 面 仕事と信仰 =
★安部克衛さん([有]愛隣オフセット印刷社社長)[下]——震災境にすべてをリセット
★<定年後の挑戦>[11]リタイア後の家族?——高齢者の気概と自立 記・星野 隆三——

 = 11 面 伝道・牧会を考える =
★教会ルポ<ここも神の御国なれば>[2]神の家族・アガペチャペル土岐?——おともだちは礼拝者です
★ケープタウン決意表明(19)パート?解説——私たちが仕える世のために(2)

 = 12 面 ひと=
★キム・セジュン(ドキュメンタリー作家)——世界が日本のために祈れたら




◎腰を据えた復興支援:内職で生活自立を応援−−生きがい・地域再生 教会が手助け=1203110101

 東日本大震災から3月11日で1年。押し寄せたボランティアは激減したが、被災地は町と生活の再建にまだまだ大きな課題を背負っている。被災者への支援活動が中・長期的なものへとシフトしている中で、息の長い「腰を据えた復興支援」に取り組むキリスト教関係者の動きを追った。

 あの日、東北沿岸部を襲った津波で、宮城県本吉郡南三陸町は全建物の6割を超える3千棟以上が全半壊、死者・行方不明合わせて875人(2月15日現在)、避難者4千数百人に上る甚大な被害を受けた。この町に教会はない。中でも罹災率約75%と厳しい志津川地区で、オアシスチャペル利府キリスト教会(松田牧人牧師)が震災後に設立したボランティアグループ「オアシスライフ・ケア」が、内職支援プロジェクトを進めている。地元の人たちに革細工を教え、ストラップやキーホルダーなど出来上がった製品を販売して収入につなげる。地名にちなんで、「SHIZU革」と名付けて商標登録も出願し、昨年12月販売を開始した。
 震災直後は水や食料、生活物資を運ぶなど、支援活動は「今日(いま)の必要」を満たすことから始まった。だが支援の舞台が避難所から仮設住宅に移るにつれて、これからの日々を生きていく生活の再建という「明日(みらい)の必要」に軸足を移していった。
 町を壊滅状態に陥れた津波は、住む家だけでなく、職場の多くも奪った。人々はやることがないから仮設にこもりがちになり、うつ傾向の人も出てくる。収入の道を開いて経済的必要を満たすとともに、何か目指すもの、生きがいがいる。津波による避難生活は地域のコミュニティーも分断してしまったから、孤独やうつから守られるためには心を分かち合える場、語り合えるコミュニティーがほしい…そこで目を付けたのが革細工だった。
 革細工は比較的短期間に技術を習得でき、売り物になる製品を作ることが可能。スタッフやボランティアも作り方を学び週1回、車で1時間半の道のりを通い、志津川の沼田地区コミュニティーセンターで地元の主婦たちと製作にいそしむ。
 中核は、家が残り炊き出しなど被災者支援に立ち上がった地元のお母さんたちだ。震災後、町に届いた援助物資は避難所が優先され、自宅がある人には回してもらえなかった。津波の被害を免れた人たちもまた別の悲哀を味わっていた。オアシスライフ・ケア代表の松田牧師が、そんな悲しい思いを涙ながらに話す地元主婦グループのリーダーと出会ったことから、行政が届きにくい人々の細かい要望に応じた援助を続けてきた。その延長上に「SHIZU革」はある。このプロジェクトが軌道に乗ったら、彼女たちがさらに一人きりで仮設に閉じこもっているような人たちを誘って「SHIZU革」の輪が広がっていけばと、神学生でスタッフの菊地祥彦さんたちは願っている。
 被災した沿岸の塩竈市や七ヶ浜町から少し内陸の利府町は津波の影響が少なく、大きな被害を免れた。牧師夫人の松田ゆきさんは、「ここが助かったのは『よかったね』と言うためではなく、被災地に仕えるためにわざわざ残された」と感じる。「SHIZU革」プロジェクトは、近くに被災者がいるのに自分たちは助かって申し訳ないと思っている利府町の人たちに、支援の機会を提供することにもなる。
 80年の歴史がある利府キリスト教会は発足当初から農繁託児所を設けるなど、地域貢献のDNAを受け継ぐ。松田牧師は「千年に一度の地震で利府教会はどう動いたかという、100年、千年の大きなスケールで物事を見よう」と教会員らを励ます。その視野の先に、「永遠(とこしえ)の必要に応える」という教会のパストラルケアの使命を見据えている。

◎救世軍:“地元に益”仮設店舗建設に参画−−行政の手届かない「みなし仮設」支援を宮城県が要請=120

 東日本大震災発生直後から帰宅難民への宿泊と食事の提供、被災地での緊急給食・物資支援、みなし仮設への物資支援、女川漁港に作業船を寄贈など、その時々の必要に合わせ多様な活動をしてきた救世軍。現在は宮城県南三陸町、女川町、岩手県大船渡市で仮設店舗街建設支援プロジェクトを進めている。これまでの活動と今後の抱負について、震災支援事務局長の石川一由紀大尉に話を聞いた。
     ◇
 「救世軍はこれまで、ニーズのある所に出かけ、地元の益になるということを判断した上で支援をし続けてきました」。救援に使った支援金は6億円を超える。
 昨年末以降、力を入れているのが、みなし仮設への物資支援だ。「みなし仮設とはマンション、アパート、公営住宅などの空き部屋を、県の側が家賃を負担し借り上げをして住んでもらう仮設住宅。宮城県内では2万1千人がみなし仮設に入っています」
 だが、みなし仮設には災害救助法が適用されず国からお金が下りない、個人情報保護法の関係で一切情報が把握できない、などの問題があり、行政の支援が届きにくい。そのみなし仮設の支援を救世軍にしてほしいと宮城県庁からの要請を受け、昨年11月から仙台市のみなし住宅に居住する被災者に布団セットを2千セット提供し、12月には名取市、多賀城市、岩沼市、大崎市など11市・町のみなし住宅に暖房器具約6千台を提供した。「『初めていただきました』というお手紙、お礼の電話も届いています」
 今後は福島のみなし仮設にも届けたい、と石川氏。「どの場所にも自主避難されている方、仮設にも入れず物資も届かず不便している人がいる。福島では県外に避難されている方も。限界はあるが県や市町の要請に応えて、現地のNPO、NGOと連携を取りながらサポートしたい」
 また、仮設店舗街建設支援プロジェクトにも力を入れる。「世界中にある救世軍のネットワークからいただいた義援金で行っています。昨年12月にオープンした大船渡市の仮設店舗街『おおふなと夢商店街』では、商店を連結するウッドデッキや駐車場の地盤整備、看板や植栽、ベンチの提供をしました」
 2月25日には、南三陸町志津川の「南三陸さんさん商店街」がオープン。15年ぶりと言われる大雪の中、テープカットが行われた。救世軍は気候・天候に応じて屋根が開く全天候型フードコート(床はウッドデッキ)、敷地全体の舗装、障害者用スロープ、駐車場整備、各店舗看板、エアコン設置、イベント用PA、防災用放送器具など、建物以外の工事を行った。4月末には、現在建設中の女川町の仮設店舗街がオープンする。
 今後は物資や給食支援を続けつつ、他の支援団体とも協力しながら、被災者の心のケアやコミュニティー作りに力を入れていきたいという。「私どもの支援は1、2年では終わらない。少なくとも2015年までは支援を続けていく方針なので、中長期を含めた活動計画を立てていきたい。世界中の救世軍も日本のことを覚え支援してくださっています」
 ▽救世軍=Tel.03・3237・0881、 http://www.salvationarmy.or.jp/

◎「忘れない思い」を世界へ−−被災地の教会から「しんちゃんねる」=1203110902

 「被災地を忘れず、祈り続けたい」という願いから、活動チーム名を「シンコーポレーション」(sHin corporation)とし、被災地の教会から発信するインターネット動画番組「しんちゃんねる」が始まった。撮影編集は昨年3月以来、被災地を撮り続けたドキュメンタリー映像作家のキム・セジュンさん。
 いわき市の単立・平キリスト福音教会(グローバルミッションセンター)のスタジオで収録をしている。いわき市は震災直後、原発事故の問題もあり避難のため、NPOなどが活動できなかった。同教会は各地からの教会の協力によって救援拠点となり、活動した。
 副牧師でありラジオDJの五十嵐義隆さんや、昨年末いわき市に引っ越したゴスペルシンガーの横山大輔さん、救援に何度も駆けつけたゴスペルフォークシンガーの神山みささん、女優の須貝まい子さんらが震災、救援活動を振り返る。現場や被災地の人々の映像とともに、シンガーの弾き語り演奏もある。
 セジュンさんは被災地のドキュメンタリーを動画共有サイトVIMEOで配信していたが、リンクの不都合があり、ホームページ(www.shinco.tv)を開設をした。
 「震災から半年が経った頃、被災地の情報がメディアから減り、被災地の必要が知らされる手段が減ったように感じた。そこで短い期間で頻繁に情報を配信出来る番組を作ろうという案が生まれた」。そこで「しんちゃんねる」という番組名で始まった。この番組も同ホームページにて配信中。
 sHin corporationの名前の由来は、2011年の書き初めに書いた横山さんの「進」、神山さんの「新」、須貝さんの「信」から。sinは英語で「罪」という意味になる。大文字のHはアブラム、サライが、それぞれアブラハム、サラと改名したときに加わった音だ。セジュンさんたちは罪から救われたという意味を込めた。ヘブライ語で「シン」と発音される「W」に似た文字はユダヤ人が日々唱える申命記6章6節の中心にある文字。字形はイスラエルの山々の形で、神が住まわれる所(申命記16・2)を表す。
「教会を建てる働きとなれば。東北のリバイバルにとどまらず、日本からイスラエルの宣教までつながるように願います。イエス様の再臨の備えをしたい」と抱負を語る。