[CSD]2003年6月8日《ヘッドライン》

[CSD]2003年6月8日《ヘッドライン》
 = 1面 =
◎「新改訳聖書」改定第三版固まる——「らい病」は「ツァラアト」に
★聖書翻訳は教会との共同の作業——新改訳聖書刊行会・津村新理事長語る
★SARS禍の香港クリスチャン聖書で、証しで励ます
★東北地震:会堂に亀裂、敷地に地割れ
★歌手・小林幸子さん姉妹と父をめぐる証し秘話
★<復活——中嶋常幸プロ>[8]和也はかけがいのない弟
★<落穂抄>「イエスに出会う」DVD映画

 = 2 面 =
★SARS最前線に志願する香港のクリスチャン医療従事者たち
★<論説>21世紀の牧師夫人像は?——明るく元気に輝いて 記・杉本 玲子
★<詩>クチナシ 作・中山 直子
★<今週の本棚>『ザ・クロク』奥村 修武著(いのちのことば社、1500円) 評・高橋 芳江
★<今週の本棚>『喜びの大地』村椿 嘉信著(日本基督教団出版局、3000円)
★<今週の本棚>『ねんねだよ、ちびかいじゅう!』マリオ・ラモ著(平凡社、1400円)
<情報クリップ>催し情報ほか

 = 3 面 PRのページ=
☆日韓親善教会宣教大会 2003年8月20日~22日
事務局:聖契・寒川キリスト教会(Tel.0467-75-0542)

 = 4 面 ペンテコステ特集=
★大阪オオンリ教会のQT(Quiet Time)実践に聴く——みことば黙想すれば教会も信徒も変わる
★依存症や虐待の場から回復——米サドルバック教会、成長の1/4は体験者
◎教派分裂の意味は?教会協力の根拠は?——石川洋一郎牧師が冊子自作
★聖書の示す質の高い教会とは?——『風よ吹け』日本ナザレン教団伝道委員会が発行

 = 5 面 =
★「実妹、歌手・小林幸子への伝道」——姉の塩崎静江さんVIP横浜で証し
◎生きた心届けたい——難病と闘う人々の命の詩集『2002車椅子の青春』
★賛美チーム年々レベルアップ——岡山・第14回Victory2003
★<CDの時間>「心をいやす愛の調べ——ああ十字架」(ゴスペルワールド、2300円)
★<恵みのどんでん返し>強さは、内なる聖霊が与えてくれます 記・谷 清志(大阪みぎわチャペル牧師)

 = 6 面 ゴスペルのページ=
★<インタビュー>田中 武さん(REJOYCE GOSPEL CHOIRディレクター)——やってきたことは間違いなかった
★礼拝の中のゴスペル音楽特集:今教会に求められているもの
★おすすめ楽譜・教則本:「African American Heritage Hymnal」「How To Play Black Gospel Book 1」
★NEW RELESE:「ゴスペル名曲を歌おう+カラオケ付き名作選Vol.1~3」(Pヴァイン・レコード、各2330円)
★NEW RELESE:「Live At The Wetlands」(ワーナー・ミュージック・ジャパン、2430円)
★<北嶋和之のゴスペルトーク>It's All About The Love
★<いまさら聞けないゴスペル用語>JOY(喜び)
★コンサート・ワークショップ情報

「新改訳聖書」改定第三版固まる−−「らい病」は「ツァラアト」に0306080101

現代日本語訳として広く普及している聖書「新改訳」の改訂第三版の訳文訂正・改善作業が2年越しで終結し、新改訳聖書刊行会・日本聖書刊行会・いのちのことば社の三者の協力のもと、年内に発刊の運びとなった。改訂個所は900節に及び、その大半はいわゆる不快表現・差別表現にかかわるもの。中でも改訂の要望が強かった「らい病(人)」の訳語選定は、ハンセン病療養所関係者や諸教会の意見聞き取りをするなど慎重に熟慮を重ねていたが、旧約聖書の原語であるヘブル語にもとづいて「ツァラアト(に冒された者・人)」に決定した。  新改訳聖書は1970年に発刊、78年に改訂第二版が出された。翻訳団体の新改訳聖書刊行会ではその後も、不快語・差別語を含む訳語に関する調査研究を続けてきた。
 90年代、従来の日本語聖書で「らい病」と訳されてきた聖書中の症例が現在の「ハンセン病」の症状と一致しないことなどについて、研究成果が知られるようになってきた。日本では特に「らい予防法」の隔離政策により、ハンセン病者に対する社会的偏見が根強かったこともあって、ハンセン病療養所関係者らを中心に、聖書の訳語中の「らい病(人)」を改訂してほしいと強い要請の声が上がっていた。
 これに対し財団法人日本聖書協会は97年、新共同訳の「らい病」を「重い皮膚病」に言い換えることを決定。口語訳も昨年の版から「重い皮膚病」に改めた。訳語として検討の余地があることを認めつつ、聖書中の「らい病」表記が差別を助長する恐れがあるとして改訂を求める教会の要請が強かったことから緊急に対応し、暫定的に「重い皮膚病」とした経緯がある。
 一方、新改訳聖書刊行会は01年6月、「らい病」を含む不快表現・差別表現を見直し、改訂作業を進めることを決定。当初02年春をめどに第三版発行を目指したが、療養所関係者らの意見を受けて訳語候補に慎重な熟慮検討を重ね、予定が遅れていた。改訂にあたっては、単なる言い換えによる差別回避にとどまることをせず、聖書の使信にふさわしい訳語を模索し、造語の可能性にも取り組んだ。
 今年4月には、これまでの経緯や問題点の解説を付け、具体的な訳語候補を挙げたアンケート調査を、頒布団体である日本聖書刊行会、発売元であるいのちのことば社と共同で、日本福音同盟傘下の約2千教会に実施。5月29日までに515通を回収した結果では、「重い皮膚病」206票、「ツァラアト」170票、「らい病」94票と続いたが、新改訳を使うとする374通では、「ツァラアト」137票、「重い皮膚病」127票、「らい病」71票、それ以外の聖書を使う140通では、「重い皮膚病」79票、「ツァラアト」33票、「らい病」23票となり、使用する聖書による回答傾向に顕著な違いが現れた。最終的に、新約で「らい病」と訳されてきたギリシャ語の「レプラ」「レプロス」も含め、「ツァラアト」とすることを決定した。ツァラアトは家の壁や衣服の状態にも使われるが、人の皮膚が特殊な症候に冒されている状態を表す場合を「ツァラアトの者・人」「ツァラアトに冒された」と表記する。新約の初出個所(マタイ8章2節)では、脚注に「特殊な皮膚病。レビ13章を参照」と説明し、更に詳しくは巻末の「第三版あとがき」を参照するよう勧めている。
 これ以外では、身体的弱さを表す語として従来使われてきた「めくら」「おし/つんぼ」を、「目の見えない(人)/盲目/盲人」「口のきけない(人)/耳の聞こえない(人)」などに変更した。
 新改訳聖書刊行会では今回の改訂を暫定的であるとし、聖書の改訂作業が世代から世代へと受け継がれ不断の改訂が行われることを願っている。

教派分裂の意味は?教会協力の根拠は?−−石川洋一郎牧師が冊子自作0306080403

地域の教会が教派を超えて協力事業を進めている神奈川県相模原市の、中心的なひとり、石川洋一氏(基督聖協団相模原教会牧師)が小冊子『教会協力と教団、教派|これひとつとならんためなり|』を手作り出版した。
 相模原市では、牧師会の親しい交流から市内の各教会の牧師・信徒らが地域の宣教を考えるシンポジウムを開くようになり、そこから高齢者のグループホーム、信徒のための聖書学校、共通トラクトの製作・配布などに実を結んでいる。同書では、相模原での実践の経緯とともに、教団の成り立ちと使命、プロテスタント教会が分離分裂をしてきた意味、地域教会の働きと使命などについて考察している。  抗争さえ益とされ
 不足を補い合える  石川氏は、教派や教団が生まれてきた原因の中には「本来なら愛し合い、互いに研鑽し合うべき仲間同士が、抗争的になってしまったケースが多い」としつつ、一方で、分離分裂によって「聖書のいわんとするところを、むしろ全般的に網羅することになっている」ととらえる。ひとつの団体が聖書の真理のすべてを極められるわけではなく、他の団体が違った部分を深く極めていると考え、福音派も社会派もペンテコステ派も、それぞれが互いの弱いところや足りないところを補い合ってくれるという。
 人間的な争いという過ちも神の憐れみのゆえに益とされ、むしろ様々なタイプの教派や教団が器官として成長し、組み合わされてキリストのからだが成長すると、エペソ書の教会観を当てはめて積極的に見る。そこに「違いがあるからお互いが大切であり、互いが必要な存在なのである。その違いを喜び楽しんで受け入れ、互いに活用し合うのである」と協力の基盤を置いている。
 相模原に現在のような教会協力が築かれる30年近く前、まだ30代だった石川氏が経験した協力の実践が興味深い。  伝道は自教会を
 大きくするためか  高校生に伝道しようと考えた石川氏は、高校の前でトラクト配布を始めて疑問がわいてきたという。トラクトに自分の教会のゴム印を押してあるということは「私の教会に来てください」というメッセージになる。それは福音を伝えるためなのか、自分の教会を大きくするためなのか。当時の学区制は広く、教会の近くの高校でトラクトを配っても、生徒は様々な地域から通ってくる。教会に来てくれるのはうれしいが、その生徒が聖日礼拝だけでなく祈祷会や様々な交わりに参加するには、住まいの近くにある教会に行く方が良いのではないか||。
 「福音の本質は、人が救われることが第一であり、その次に、救われた人々を通して教会が形成されていくことである。自分の教会の成長ということより、滅びに行こうとしている人々が、少しでも救われやすい状況を作っていくことの方が、本来の福音の本質なのであり、伝道の姿勢であるべきではないか」。そう考え、当時市内にあった15~16の教会を訪問し、一緒にトラクトを高校に配布する協力を依頼した。7教会が同意し、各教会の地図や住所、特徴や牧師の写真を入れた合同の教会案内を印刷して配った。
 そして今、「個々の教会での働きしか考えられなかった時代から、これからの時代は、地域の教会が、宣教において協力し合って活動する時代が来ているのではないか」。しかし、教会が教団・教派を超えて協力し合うとき、サタンは必ず働いてくる。秩序の混乱、牧師のねたみ、成長する教会としない教会の歪みといった要素を用いて問題を起こすと警告する。そうした問題に対しても、石川氏は自らの実践例を示している。「教会」を「神の家族」ととらえると、こうなるという例だ。  自分の神の家族
 を愛せるように  ||聖日礼拝に、他の神の家族の人が来ることがある。…そんな時、心から歓迎の気持ちを表すことにしている。しかし、そればかりではなく、「あなたの家族は、兄姉のあなたがいないことで、風邪でもひいたのかな、とか、重荷に悩んでいるのではないか、等と心配していますよ。お家に帰られたら、あなたの家族、お父さんに連絡をとって事情を説明しておきなさいよ。そして、来週は、自分の家族で、一緒に食事をしなさいよ」等と話すことにしている。その信徒が、自分の神の家族である教会をこよなく愛せるようにという思いを持って指導することにしている。
 結論はこうだ。「これからの時代、牧師が囲いを作って自分の羊を守ろうとしても、現代のような情報化社会では、様々な情報が勝手に入ってきてしまう。囲いを作って自分の教会を守るよりも、地域教会が協力し合い、相互牧会して、それぞれの教会を貴び合い、はずれる信徒を相互に指導し合って、相互に教会を建て上げていくことが、これからの働きであり、また、この情報化された時代に対応していく方法なのかもしれない」  ▽基督聖協団相模原教会=〒229-1122相模原市横山6ノ6ノ3、TEL、FAX:042-752-7150、042-755-3020。

生きた心届けたい−−難病と闘う人々の命の詩集『2002車椅子の青春』0306080502

「死ぬことはとっても怖いことだけど一日一日を生きることは本当にうれしい」と作品冒頭に小さく手書きで記したのは、難病の筋ジストロフィーと闘うクリスチャンの中沢利江さん。身体が思うように動かない。ほかの人は自分の足で動き回っているのに、どうして自分だけが手を動かすこともままならないのか。そんな実際に難病と闘う人々が思いをつづった詩集が『2002車椅子の青春』(ありのまま舎)=写真左=だ。
 本書は2部構成で、1部は「語り継がれた詩(ことば)たち」というタイトルで85年から00年まで、16年にわたって続いた「障害者ありのまま記録大賞」詩部門から選ばれた詩、2部は「時空を越えて蘇る」というタイトルで、01年に全国の難病の人々から応募があった中から選ばれた詩、計50人78編を掲載。表紙絵・題字は俳優の石坂浩二さんが担当。子どもから大人に至るまで様々な難病と闘う人々が、それぞれの切実な思いを「詩」という言葉に込めた。
 編集・出版したのは社会福祉法人ありのまま舎(仙台市太白区西多賀4ノ19ノ1、齊藤久吉理事長。身体障害者福祉ホーム(自立ホーム)仙台ありのまま舎、重度障害者・難病ホスピス太白ありのまま舎を建設、キリスト教精神に基づき運営するとともに、ありのまま生活福祉講座や障害者自立絵画展を開くなど、「障害」者という枠にとらわれずに前向きに生きようとする人々を支援している。この詩集が出来上がったのもその活動の一環だ。
 作者一人ひとりは、おもに進行性筋ジストロフィー、ウェルドニッヒ・ホフマン病、脳卒中などの難病をかかえる。作品には、日中病室にこもることへの苦痛や、病気への不安・恐れから、明日への希望、未来への思い・憧れなどがそれぞれの言葉で記されている。中には子どもが自分の死を予期して「おかあさん、空から見守っているからね」などと母親へ別れの言葉を記しているものも。確実に迫る「死」を、幼い子どもでさえ受け止めようとしている。
 これらの作品には苦しい中にありながらも「生きよう」とする人々の思いがあふれていて、読み手の心に強く訴えかけてくる。日々の生活の中で健康な者が見ることのできないもの、そして見過ごしているもの。「詩」という短い言葉の中には、自らの命を見つめる人々の、深い思いが込められている。「自分の命と向き合って闘っている、つくりものではない心の中の詩をぜひ読んでほしい」とありのまま舎スタッフも語っている。