[CSD]2003年11月2日《ヘッドライン》

[CSD]2003年11月2日《ヘッドライン》
 = 1面 =
◎犯罪被害者、加害者双方を救援——社会的弱者救援機構(PFIJ)発足
★銀座でみことば大写し——聖書館ビルに電光掲示板を設置
★ペテロが見たイエスを演出——ミュージカル「The Witness」を上演
★<恵みのどんでん返し>脳こうそくになり、言葉を失い 記・泉 昭憲
★<落穂抄>神様がすべてをコントロール

 = 2 面 =
★今に継がれる真の教養教育——東京女子大で新渡戸稲造没後70年シンポ
★米国:「対テロ戦争は宗教戦争」?——国防省高官発言が物議
★バチカン:教皇在位25周年、退位の意志なし
★<論説>基本に返ろう——当たり前のことを手抜きせずに 記・内川 寿造
★<今週の本棚>『心病む者に神宿る』平山正実著(袋命書房、2000円) 評・佐竹十喜雄
★<今週の本棚>『伝道と文化の神学』A・ファン・リューラー著(教文館、1800円)
★<今週の本棚>『告白はあなたを変える』ドン・ゴセット著(エターナル・ライフ・ミニストリー、1760円)
<情報クリップ>催し情報ほか

 = 3 面 聖書特集=
◎25年ぶり改訂「新改訳聖書」(改訂第3版)発売——どこが変わった? どうして変わった?
★名画から聖書のメッセージ読む——見える表現で伝わることの意義
★日本聖書協会:初のスタディ・バイブル発刊へ——誰でも学べる聖書で普及拡大図る
★<書評>『新約聖書のギリシア語文法』織田昭著(教友社、6800円) 評・正木うらら
★<書籍案内>『聖書伝説物語』ピーター・ディキンスン著(原書房、1800円)

 = 4 面 関西だより=
★暴力団から立ち返った息子——近畿福音ルーテル・名谷教会 山岡由紀子牧師
★「私は伝道せずにはいられない」——(株)めぐみ堂社長・西本誠一郎さん
★挫折したお父さんに夢を——「ツラノ・父の学校」日本発上陸
★近放伝30周年:羽鳥明氏デジタル放送の双方向性に着目——メディア伝道セミナーも開催

 = 5 面 =
◎三浦文学が人と人を会わせる——綾子ファンのオアシス「光綾の会」
★「『花咲きまっか』超えた」——本紙読者の集いで俣木聖子さん、新作の思い語る
★三浦綾子メモリアルブクレットのリニューアル版発売——内容、デザインを一新
★「赦しと和解」テーマにコンサート——新作賛美1000曲目指す「歌声ペトラ」
★米国:プロミスキーパーズ新総裁にトーマス・フォートソンJr氏
★<召天>マーク・ジ・マクセイ氏(九州クリスチャン・ミッション宣教師)

 = 6 面 チャチャ・チャーチ=
★合い言葉はファンキー!——大阪/単立・Jesus House
★「芸術の秋」をチャペルで満喫!——千葉/聖協団・千葉教会
★<もりべぇのへぇ~>「お寺に泊まっていた宣教師」の話
★<今月の買いどき>アニメ・ビデオ「ファースト・クリスマス」
★<いいもんみっけ>「祈りの里親」運動


犯罪被害者、加害者双方を救援−−社会的弱者救援機構(PFIJ)発足0311020101

キリスト教の博愛精神を活動の指針として、犯罪被害者とその家族への救援、犯罪当事者と犯罪経験者の更正支援などを実施する「Prison Fellowship International Japan」(社会的弱者救援機構=PFIJ=山田亘理事長、鈴木啓之チェアマン)が正式に発足し、10月22日、東京都内で発足記念式典が開催された。犯罪発生率上昇が深刻化する日本で、PFIJの今後の活動に期待が集まる。  「私の兄は今、薬物使用で服役中です。彼には家族の支えがなければなりません」。記念式典にゲスト出演したゴスペルシンガーのKiKiさん(インターナショナル・クリスチャン・フェローシップ教会員)は、会場に向かって語った。KiKiさんもPFIJのこれからに注目する1人だ。「犯罪者と家族を支援するのは簡単なことではありません。私も信仰がなかったらあきらめていました。PFIJには具体的な働きを期待します」とKiKiさんは語る。
 記念式典でチェアマンの鈴木啓之さんは、「犯罪者の救援というと、おしかりを受けるかもしれない。しかし、犯罪者は罪を犯す少し前まで被害者だったという現実をこれまで見てきた」と語る。鈴木さんは元ヤクザの伝道集団「ミッションバラバ」代表で、単立・シロアムキリスト教会の牧師。自身2回の服役経験がある。
 99年、鈴木さんにとってショッキングな事件が起こった。海外から帰国中の飛行機内で、東京・池袋で3人を殺傷する通り魔事件発生のニュースを知る。帰宅して犯人の青年を知った鈴木さんはがく然とした。以前アメリカで伝道旅行をした鈴木さんは、現地で生きる自信を失っていたその日本人青年と出会い、話を聞き励ましていた。「日本に帰ったら連絡してほしい」と言って別れたが、その後、音信は不通。その青年が殺人事件を起こした現実に、「犯行を自らの責任と受けとめ、『何とかしなければ』と思いました」と鈴木さんは話す。「ひとつひとつのことを神様に祈り、行きついたのがPFIJの働き。被害者から加害者となってしまう前に救済していきたい」と語った。
 国際的な組織PFI(Prison Fellowship International)は世界105か国に活動拠点を置き、10万人以上のボランティア、約3千人の弁護士、5千人の医師団によって構成されており、国連経済社会理事会に諮問資格をもっている。シンガポール、ブラジルなどでは、PFIの実施するプログラムによって再犯率が激減するなどの実績があるという。
 PFIJでは?犯罪被害者とその家族への救援?受刑前・起訴前の容疑者やその家族への救援?未成年者・薬物犯罪への対応と犯罪予防のための啓蒙?出所者の再犯防止のための支援活動を実施するとともに、広い意味での社会的弱者として、医療ミス被害者とその家族への救援、路上生活者自立支援活動も行う。
 記念式典であいさつしたPFI代表のロナルド・ニッケルさんは、「犯罪は地域社会の問題でもある。地域社会全体が、被害者と加害者の救済に取り組まなければならない」と呼びかけた。このことばは、日本の実情を示すとともに、地域に根ざす日本の教会への大きなチャレンジともなろう。   【藤川 義】
 PFIJのURLは http://www.pfijapan.jp/

25年ぶり改訂「新改訳聖書」(改訂第3版)発売−−どこが変わった? どうして変わった?0311020

25年ぶりの改訂で約900節にわたる変更が施された聖書「新改訳」改訂第3版が、このほど出版された。改訂の主眼は「らい病(人)」をはじめとする、いわゆる不快語・差別語の変更だが、聖書そのものの解釈やとらえ方に関係する重要な変更個所もいくつかある。どこをどのように、なぜ変えたのか||その中から主なものを拾ってみると、原語に忠実であることを編集方針とする翻訳の最新の研究成果から、みことばの深みがかいま見えてくる。
 まず、目に付くのが創世記1章2節で、これまで「地は形がなく、何もなかった」と訳されていたのが、第3版では「地は茫漠として何もなかった」に変えられた。ちなみに新共同訳は「地は混沌であって」、口語訳は「地は形なく、むなしく」。
 新改訳聖書刊行会の津村俊夫理事長によると、この個所の原語は「トーフー・ワ・ボーフー」だが、ヘブル語の「トーフー」は本来「荒野」を指し、「ボーフー」と対になって「何もない状態」を意味する。形があるかないかの問題ではない。普通よく知られている「地」とは違う、植物もなければ動物もない、人もいない、そのような意味で「茫漠」が適当と判断した。
 「混沌」という理解は、背後にバビロニアの混沌神話があるという仮説によるが、100年間定説だったこの仮説は、今や少なからずの学者によって否定されているという。
 一方、日本語の「混沌」は、現代では「秩序」の反意語、すなわち無秩序を意味し、そのカタカナ表現「カオス」は「コスモス(世界)」に対立する概念と考えられている。そこで「混沌」を使うと、無秩序な地を神が創造したことになり、聖書の主張と異なる。聖書でいう創造が「混沌から秩序をもたらすこと」であるとするならば、創造の理解だけでなく、救いや終末の理解にも大きな影響を与えることになる。これは聖書全体の神学にかかわるとして改訂第3版がこだわったところだ。
 ヨブ記42章1~6節を第2版はすべてヨブ自身の言葉として訳していたのを、第3版では3節の前半を「知識もなくて、摂理をおおい隠す者は、だれか」、4節を「さあ聞け。わたしが語る。わたしがあなたに尋ねる。わたしに示せ」と、38~41章の主の言葉を受け、それをヨブ自身の言葉として述べていると理解した。40・4、5で「もう口答えしません」と言ったヨブが、今さら「どうか聞いてください。わたしが申し上げます」は不自然。むしろ38・3、40・7の「さあ、あなたは…示せ」を、ヨブ自身の言葉で言い換えたという解釈だ。6節の「悔い改めます」は「悔いています」に変えた。この個所の原語の意味は「悔いる」であり、「悔い改める」は罪との関連を示唆し誤解を与えやすい。
 ヨハネの手紙第一の5章19節、第2版では「全世界は悪い者の支配下にある…」を「世全体は…」に変えた。ギリシャ語原文は「コスモス」で、「世界」とも「世」とも訳せる。この個所は「すべての世(世界)」という文脈だが、「全世界は…」と訳すと、悪しき者(悪魔)の力を過大に評価することになりかねない。「世」はもともと神に敵対する人間の罪深い営み全体を表す言葉なので、「世全体は…」の方が適切だととらえた。
 「先祖」と訳されていた言葉の原語は「父たち」。この原文のニュアンスを生かして第3版では「父祖たち」とした。それによりイエス・キリストが「わたしの父」と呼んでいる単数形の「父」と、複数形の「父祖たち」とのコントラストが読みとれるようになった。

三浦文学が人と人を会わせる−−綾子ファンのオアシス「光綾の会」0311020501

クリスチャン作家三浦綾子さんが亡くなって4年たつが、その作品は今も多くの人たちに愛され、読み継がれている。ホームページを通じて愛好家たちの交流が盛んになり、定期的に会をもつようにもなった。東京では、三浦綾子ファンの集い「光綾の会」が、01年5月から隔月、中野区のアッセンブリー・新中野キリスト教会で開かれている。  10月11日で16回を数えた「光綾の会」。呼びかけ人は、新中野キリスト教会員の松下真佐子さん。
 主な活動内容は、三浦綾子作品のビデオ鑑賞会と、喫茶店で自由に作品について語り合うこと。毎回20人ほどが集まり、多い時は30人を超える。集まってくる人たちも主婦、薬剤師、看護師、保険会社員、教師、劇団関係者など多彩だ。
 喫茶店では、一人ひとりが三浦綾子の作品について、思いを熱く語る。主婦の坂口奈美さん(聖泉基督・東京ミレニアムチャーチ会員)は「結婚して次の年に、『氷点』を読んでハマってしまいました。私は『自我の構図』『広き迷路』など人間同士のドロドロした関係を描いた作品が好きですね」
 三浦綾子さんの最後の小説『銃口』を舞台化した劇団前進座の制作部・内藤克巳さんは、戦時中の思想教育や弾圧をテーマに書かれた『銃口』が今の時代にも当てはまる普遍的な問題を扱っており、「旭川での公演では予想以上の反響を得ました」と興奮気味に語る。
 ある人は『氷点』などのドロドロ系、ある人は『塩狩峠』など信仰を強く出した作品、またある人は『細川ガラシャ夫人』など歴史を扱った作品と、思い入れは様々だ。中には作品を読み、その舞台となった土地を訪れ、さらに作品を味わうというファンも。
 きっかけは、松下さんが旭川を訪れたファンの人たちと会ったことから。旭川に3年間いた松下さんは、当時三浦綾子文学館でボランティアをしていた。その時に三浦綾子ファンのためのホームページを作成。やがて「旭川に行きたい」という人たちからメールが届くようになった。「メールでしか知らない人たちと会うのは抵抗があったが、会ってみると話が通じる人たちばかり。とても楽しかった」
 01年、旭川の生活を終え、東京に戻ることになった時、「東京でもオフ会をやろう」と綾子ファンにメールで呼びかけたところ、十数人が集まってきた。
 名前の由来は光世の「光」と綾子の「綾」から。名付け親で第1回目からのメンバー土屋浩志さん(東京ミレニアムチャーチメンバー)は「キリスト教は嫌いだけど、綾子さんは好きという人も来るんです。綾子さんが好きだったら、他宗教の人でもOK」と語る。
 綾子作品とかかわるほかのグループとの交流も。立ち上げ当初から三浦綾子読書会(長谷川与志充代表)のメンバーが参加。最近では綾子作品の『母』、『銃口』を上演する劇団関係者が集う。
 逆に光綾の会メンバーの三浦綾子読書会参加や『母』、『銃口』の舞台観賞も。劇団アドックの依頼で『母』の舞台にメンバーがコーラス出演したり、11月29日、東京で開催の第1回三浦綾子フェスティバル(三浦綾子読書会主催)で『ひつじが丘』の舞台(劇団みどえ=三浦綾子読書会演劇部門)に出演するなど、その輪が広がってきている。「綾子さんは、本当に人と人を会わせる名人です」と、松下さんは笑顔で語った。ホームページhttp://www.ann.hi-ho.ne.jp/matsushita/kouryounokai.htm。 【中田 朗】