ヘッドライン
[CSD]2011年7月24日号《ヘッドライン》
[CSD]2011年7月24日号《ヘッドライン》= 1面 ニュース=
◎DV卒業した夫婦の軌跡——共依存気づき「暴力受けぬ」決意
★教会の復興支援に優遇税制——震災で「指定寄附金」特例措置
★廃校に おともだちの歓声——北海道新冠町でMEBIG view開設
= 2 面 ニュース=
★戦災児に延べた手から愛の感化が…——橋の下のみかん箱から始まった「深川愛隣学園」創立60周年
★玉川聖学院:学校教師と教会教師らが震災を通して共に学ぶセミナー
★DV、共依存からの脱却——『いつか愛せる』(?朱鳥社、500円税込)
★日本福音教団が宮平勉氏(伊豆吉田キリスト教会牧師)を除名
★<落ち穂>
= 3 面 =
★<竜馬をめぐる人々>[51]坂本直寛の章:11——獄中で聖書読みふける 記・守部喜雅
★心臓外科医が語る創造主——コーヒーアワーで脅威の人体の仕組みをレクチャー
★米国:Facebookでの交流が、ものみの塔に打撃
★<オピニオン>たとい法令にそむいても 記・朝岡 勝
= 4・5 面 特集/被災者の心のケア=
◎被災者に耳を傾ける——傾聴ボランティアのケアトレーニング・プログラムも
★子どもの心を開く——オペレーションセイフのケアトレーニングセミナー
★メモ:被災者に言ってはいけないこと・被災者に言って良いこと
★自分たちの心も——牧師・家族のケア
★メモ:今後の被災地牧会者ケア
= 6 面 情報 =
★<情報クリップ>催し情報・放送伝道ハイライトほか
★CD:「愛と希望のチャリティーCD 祈り」東日本大震災へ募金すると届くCD
★EVENT:「ムスリム 30日の祈り」8月1~30日
★REVIEW:『心を注ぎだして』遠藤嘉信著(いのちのことば社、1,260円税込)評・波多 康
= 7 面 特集 =
★<また行きたい! 教会の魅力>[22:最終回]総集編——成長と喜びが「友達を誘いたい!」魅力に
◎フランスヴェル・ディヴ事件の生き証人J・ヴァイスマン氏 早大生らと語る——「受け入れられない状況を 受け入れてはいけない」
★地域教会が建て上げられるために——ジーザスライフハウスカンファレンス9月開催
= 8 面 教会 =
★単立・愛隣チャペルキリスト教会——町おこしにも期待 MEBIG view
◎DV卒業した夫婦の軌跡−−“共依存”気づき「暴力受けぬ」決意=1107240101
2010年、警察庁がまとめた発表によると、配偶者、恋人から暴力(DV)を受けたと警察が認知した件数は3万3千852件。通常、DVには身体的暴力だけでなく精神的虐待(恫喝や嫌がることを執拗に行う)、性的虐待、経済的暴力(働かせない、家のお金を使いこむなど)、社会的隔離などがあるが、警察庁の統計にはこれらが含まれていない。また、認知されていない件数は相当数に上るだろう。DVは家庭内や個人的関係の中で起きるためにその実態は見えにくいが、誰にも起こりうる身近な問題だ。結婚から19年たつあさみまなさんは、その体験を本にまとめた(関連記事2面)。DVから回復されるまでの軌跡とは。「ガスの元栓は閉めたか?」。「閉めなくても大丈夫よ」。「閉めろって言ったら閉めりゃいいんだよ!」。結婚してまもなく「こんな些細なことで」と思うことで夫が激高したことを、あさみさんはよく覚えている。
すぐにキレて、「バカだ、頭を使え」「ぶっ殺す」などの言葉を浴びせられることもしばしば。「何に怒り何に怒らないのか。日によって違うので、いつもその理由を探していた」とあさみさん。そして「『お前が○○だからこうなった』と夫に言われると、言葉や腕力でふるわれる暴力の一因も自分にあるのかなと思っていました」と言う。
足をけがしたことを機に夫は働かなくなった。ネットにはまり、昼夜構わずお酒を飲むようになった。結婚3年目、友人に誘われて伝道集会へ。それを機に近所にあったホープチャーチ(スティーブン・ケーラー牧師)に集うようになり、夫も共に礼拝に出席。夫婦でキリストを受け入れ、一緒に受洗した。しかし、夫の暴力は収まらず、仕事もしなかった。
その状況を親しい教会のメンバーに相談し、ケーラー牧師が話し合ったり、友人が暴力から逃れるあさみさんを泊めてくれたこともあった。
結婚して7年目の頃、夫に頼まれて睡眠薬をもらいに精神科を訪れた。そこで様々な質問を受け、医師から言われた「共依存」という言葉。「そんなわけない、依存されたくないのに」と思ったが、状況は共依存と合致した。
7年の間、たびたび離婚を考え、家出した時期もあった。クリスチャンになってから結婚式を挙げて神様の前で誓ったこともあさみさんを苦しめた。「離婚は罪」「愛さなくては」そんな思いに縛られていた。「しかし、神様は離婚するかどうかより私の存在を重視してくださっていると気づき、離婚を恐れなくなりました。このまま一緒にいて私が暴力を受け続けることも、夫が暴力という罪を犯し続けることも、神様は喜ばない。夫が変わるかどうかはわからないけれど、もし変わるならその時にまたやり直せばいい。紙切れ1枚の婚姻関係よりも実をとろうという、そんな感覚でした」
「共依存」という現実の前にあさみさんは自分を見つめ、問い直し始めた。意思や感情を殺して生きてきた。「暴力は受けたくない」ではなく「受けない」という決意へ。時間が経っても何を感じたかを伝えた。それを繰り返すうちに関係が変わった。
「問題は暴力そのものでなく、支配関係によるものです。関係の問題は、一方だけの努力や変化では解決しません。加害側の謝罪後に関係が逆転するケースもあります。両者が対等になり、傷を癒す、赦す必要があります。我が家の場合、ふたりが対等になったという点では、もうDVは卒業し、夫は私との関係においてはほとんど暴力を必要としなくなっています。でも神様が望まれるような愛にあふれた夫婦関係には、まだまだ。現在は個々の未熟さに取り組みつつ、関係も成長させていると思っています」
◎被災者に耳を傾ける−−傾聴ボランティアのケアトレーニング・プログラムも=1107240401
クラッシュジャパンで心のケアを担当するアンディ美湖さん(所沢コミュニティーケアセンター・ディレクター)に被災者の心のケアプログラムについて聞いた。「多くの人はどう心のケアをしたらいいか分からない。実は適切な道具を使えば誰でもできるのです」と美湖さんは言う。
被災者との関わり方は、ボランティアそれぞれ。手のストレス解消、マッサージだけでも被災者はうれしい。被災者に寄り添い、「心的外傷後ストレス障害自己チェック表」で、チェックし、PTSD(心的外傷後ストレス障害)の疑いがあれば、「早めに治療した方がいい」とアドバイスする。「治療はほとんど薬で行われているが、それは間違い。心の問題は薬では治らない」という。被災者同士で心情を話し合う「サポートグループ」を勧めることもある。福島で進められており、プログラム用資料もできた。
「東北人の忍耐強さはすごい。しかし、元気な様子が心配な面もある」と懸念する。被災者とともに使う「災害時の心の回復への助言」シートには「涙は癒しをもたらします。泣きましょう」という文がある。多くの人がその場で涙する。「泣かずに涙を溜めると、うつになる。『いいですよ』と味方になってくれる人が必要。『がんばろう』と言われていますが、がんばり過ぎかもしれません」
被災地の人々は信仰に対してオープンになっているという。 避難所でクリスチャンであることを伝え、「お祈りしていいですか」というと、他宗教の人でも、祈りを受け入れる人がいる。かつて聖書や神様のことを学んでいた人もいた。福島では数人が信仰告白をし、教会に行き始めた人も。現在も教会が継続的に避難所を訪問し、関係作りをしている。
美湖さんは機会を利用したり、プレッシャーを与えたりしないよう配慮した上で、クリスチャンの使命を語った。「クリスチャンの活動でも多くは炊き出しや清掃など物質的なこと。それだけでは十分ではありません。クリスチャンは人の精神、霊的な部分でサポートできる立場にいる。お祈りをしたり、神様の永遠さ、希望を語ることができます」
ケアトレーニングのためセミナービデオをホームページにアップする。「その中には、ボランティアで気をつけること、被災者とどう接するか、被災者の話を聞いてトラウマになり眠れなくなる人の話もある。いろんな団体、教会に見ていただけたらと思います」
ビデオはクラッシュジャパン・ホームページの心のケアから。http://crashjapan.com/index.php?option=com_content&view=section&id=11&Itemid=39&lang=ja
◎フランス“ヴェル・ディヴ事件”の生き証人J・ヴァイスマン氏 早大生らと語る−−「受け入れられない状
第2次世界大戦下の1942年7月16~17日に起きた、フランス政府と警察当局によるユダヤ人住民を一斉検挙して強制収容所へ大量移送したヴェル・ディヴ事件。当日だけで1万3千人近くが検挙され市内の冬季自転車競技場に押し込められた。そ事件の生存者で、フランス映画「黄色い星の子供たち」では逃亡に成功するジョー少年のモデルになったジョセフ・ヴァイスマン氏(80歳)が来日。7月8日に東京・市ヶ谷で早稲田大学の文学部学生らと試写の後にティーチインとトークセッションを行った。
ティーチインでは同大学教授の松永美穂氏が、一斉検挙が行われる1か月ほど前からフランス在住のユダヤ人は胸に黄色い星を縫い付ける命令が布告され、他国からの亡命者に限らず、長年フランス在住のユダヤ人も検挙された状況をヴァイスマン氏と語り合った。当時11歳だったヴァイスマン氏は、フランスから強制収容所へ送られた7万3千人のうち15%以上の人数を占めるこの事件の大きさと共に、「父は人権の国、自由思想と哲学の国フランスを篤く信頼していた。むしろ、子供たちが黄色い星を隠さないように注意していた。隠すことで(官憲に)暴力を受けたり、逮捕されたりしないようにと」語り、一斉検挙への恐れは家の中では話題にならなかったという。だが、ヴェル・ディヴ事件は起き、幼い子どもたちから大人までアウシュヴィッツへと送られた。
トークセッションでは、「何も知らない世代の人たちに、大事なこととして伝えたいことは何か」との学生からの問いに、「私は過去の人間です。だが私が証言を語る相手は、明日に向かって生きている人たちです。これからも難しい状況を受け入れられるのか、受け入れられないのかを判断しなければならないことを経験するかもしれません。そのようなとき、受け入れられない状況を受け入れてはいけないということを伝えるのが重要と考えています」と答えた。
フランス政府は、ヴェル・ディヴ事件に当時の政権が関与したことを認め、93年に7月16日を「ユダヤ人迫害の日」に制定している。