2014年10月19日号 6面

「危機の時代を共に生きる~教会ネットワークから学ぶこと~」をテーマに9月29日、東京・千代田区のお茶の水クリスチャン・センターで「『JEA宣教フォーラム』2014」(日本福音同盟[JEA]宣教委員会、第6回日本伝道会議、DRCネット共催)が開かれた。主題講演(小平牧生氏、10月12日号既報)で語られた「ネットワーク論」を受けて、被災地、防災、教会と宣教団、ユースといった、異なる分野におけるネットワークについて、担当者が発題し、議論が展開された。
【高橋良知】
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宮城県の被災地支援と宣教のつながり、宮城宣教ネットワーク(MMN)は、被災地を5つのブロックに分け、定期的な世話人会開催や求道者情報の共有。研修会、伝道集会などで協力する。各教会独自の活動、教会成長を尊重していく。
課題として、代表の大友幸一氏(保守バプ塩釜聖書バプテスト教会)は、被災地の問題を神学的に検討できる宣教研究所の必要、地域教会のネットワークを保つエネルギーの供給などを挙げた。
首都圏防災について、栗原一芳氏(クラッシュ・ジャパン DRCネット)は、「震災が起これば、交通が遮断され、教団・教派の支援が届かないかもしれない。地域教会どうしの協力が現実的。その関係を築くには、日ごろからお互いが顔を合わせること」と勧めた。
様々な地域の牧師会を訪問したり、牧師会がない地域の教会には、個別に説明をするなどして、防災ネットワーク形成をサポートした。現在までに、台東区、板橋区、新宿区大久保地域、NHK(埼玉県新座市、東京都東久留米市、清瀬市)、埼玉県戸田市、でネットワークが立ち上がり、西東京市、所沢市でも立ち上げに動きがある。
ネットワークの講演会開催を、まちの社会福祉協議会に知らせたところ、感銘を受けられ、社協のブログに掲載してもらったという例も紹介し、「神社や寺に比べて、行政からみれば、教会は小さな存在。だがネットワークにより、存在感を示せるのではないか」と意義を述べた。
教会と宣教団については、岩手沿岸で開拓伝道と支援の働きをする高橋和義氏(一般社団法人「いっぽいっぽ岩手」現地リーダー、JECA岩手開拓伝道委員会・開拓従事者)。高橋氏の働きは震災直後に世界中のネットワークから支援金を受けた宣教団体OMFのスタッフとしての支援活動から始まった。   2014年からは、従来から協力関係にあったJECA(日本福音キリスト教連合)の岩手開拓伝道委員会が開拓伝道の働きを、JECA・北栄キリスト教会が立ちあげた一般社団法人「いっぽいっぽ岩手」が支援活動を引き継いだ。現地の行政、地域社会とよい協力関係を築いている。
当初2年で終了予定だったOMFの支援活動はJECA総会の決議まで延長し、スムーズに引き継げた。今もOMFは協力団体として関わる。
今後の活動には宣教師の協力も必要と言う。宣教師のために、語学研修や子どもの教育、宣教師どうしのコミュニティーの場として、「宣教センター」設立を提案。「現地の牧師が歴史や被災地支援の経緯を伝える場になる。神学校も関わってもらい、現場の問題意識を神学的に吸い上げて、積み上げていければと思う」と述べた。
ユースについては、西村敬憲氏(JEA青年委員会代表)が語った。ユースのネットワークではSNS(交流サイト)が強力なツールになっている。つながりやすさ、帰属の自由さ、情報の拡散力、地域格差の減少を生み、教会、教団、教派の境界線が低くなった。
一方で、単につながるだけではなく、「サブスタンス(実体)の形成が大切」と強調。教会だけでなく、組織や団体のほか集会を形成する集まりなど、実際に奉仕や活動で目的を共有できる場が実体となる。
「課題は、ネットワークを利用し、サブスタンスを形成できるリーダーの発掘、育成だ。教会と青年の両方から信頼されることが求められる。ネットワークとサブスタンスを健全に育てるためには、青年たちが神学的な判断、たとえば自分の理解と違う人とどのように一緒にできるかを自ら考えられるための、地道な教理教育が必要です」
分科会「地域教会ネットワーク」では、被災地支援ネットワーク、イザヤ58ネット代表の鈴木真氏(福音伝道教団戸塚めぐみキリスト教会牧師)が発題した。
「現在は、インターネットなどにより、誰でも情報を持てる時代。、ピラミッド型の組織が成立しづらい。牧師が知る情報を信徒でも知っている」という状況を説明した。一方、「牧師が知らない所でもネットワークがありえる。異端の働きも盛んだ」と注意した。
ネットワーク形成には、「地域の諸教会の共通理解が大事」とする。「防災、福祉などの目的は共有できるのではないか。自分のしたい方向にもっていかない、無私な調整役が必要」と話した。
そのほか会場との意見交換の中で、「ゆるやかな交わりの関係で、防災研修、震災支援に協力できた」「使命感や方向性をもたないとネットワークは続かない」「日本宣教全体のグランドデザインをつくり、各地で具体化できるようにしては」などの声が上がった。
鈴木氏は「今は地域の教会が、団体に働きかけて、全体を動かす時代なのではないか。志を高くもって、まず小さく始めたい」と締めくくった。