マーク・ウォールバーグとラッセル・クロウが演じる知力と胆力での闘いはすさまじい迫力 ©2012 Georgia Film Fund Seven LLC and Monarchy Enterprises S.a.r.l.

ニューヨークが’壊れた町’の舞台。ニューヨーク市長選挙にからみ現職市長の大規模な汚職の秘密を、裏社会を知る元刑事の私立探偵が追い詰めていく。ブロークンなのは、町の腐敗した権力構造なのか。フィルム・ノワールな作品に必要なお膳立てにしたがって料理されて行くハードボイルドな展開。強い正義のヒーローの登場はないが、元刑事の贖罪意識が秘密を暴いていく起爆剤であり、最後の勝負に出たときの切り札として効いている。

7年前、レイプ犯の青年を追って射殺してしまった刑事のビリー・タガート(マーク・ウォールバーグ)。巷では刑事が殺人を犯したとスキャンダラスに取り立てるが、裁判では正当防衛が認められ無罪になった。だが、直後に、新たな証人がいることが分かり、ニコラス・ホステラー市長(ラッセル・クロウ)とコリン・フェアバンクス本部長(ジェフリー・ペッパー)に言い含まれ辞職させられた。

私立探偵になったタガートに、ホステラー市長から尾行調査の依頼がまいこんだ。尾行する相手は市長の妻キャサリン(キャサリン・ゼタ=ジョーンズ)。市長は、なかなか掴めない妻の不倫相手を突き止めろという。

尾行調査を進めて突き止めた不倫相手は、市長選挙の対立候補者の右腕ポール・アンドリュース(カイル・チャンドラー)だった。キャサリンは、自分が尾行されていることに気づき、タガートに止めるよう直談判する。しかも、ポールとは不倫関係ではないという。

だが、受けた仕事としてタガートは市長に報告せざるを得ない。すると、ほどなくポールが自宅で強盗に襲われ殺害された。手際の良さからタガートには、行きずりの強盗殺人でないと判断した。

ホステラー市長と妻キャサリンの間には不可解な緊張関係が漂う。 ©2012 Georgia Film Fund Seven LLC and Monarchy Enterprises S.a.r.l.
ホステラー市長と妻キャサリンの間には不可解な緊張関係が漂う。 ©2012 Georgia Film Fund Seven LLC and Monarchy Enterprises S.a.r.l.

やがて、市長選でも焦点の一つになっている40億ドル規模の地域再開発計画に、市長と建設会社との間に癒着の疑惑が見え隠れしてきた。殺害されたポールの一件といい、タガートは自分は市長に利用されているだけではないかと疑い、市長とかつての上長のフェアバンクス本部長との関係なども調べていく。いわば権力への挑戦に一歩踏み出して行く。

アカデミー賞に2回ノミネートされているマーク・ウォールバーグが、ブライアン・タッカーの脚本に惚れこみ、自ら主演し、制作にも加わっている。ハードボイルドな映画としては王道だが、人間関係の緊張感と疑心暗鬼からのミステリアスな展開に引き込まれて行く。眼光鋭いマーク・ウォールバーグと絡むアカデミー賞俳優のラッセル・クロウ、キャサリン・ゼタ=ジョーンズ。重厚な演技者たちの迫力は見応えがある。 【遠山清一】

監督アレン・ヒューズ 2013年/アメリカ/109分/映倫:G/原題:Broken City 配給:ショウゲート 2013年10月19日(土)より新宿バルト9ほか全国ロードショー。
公式サイト:http://brokencity.jp
Facebook:https://www.facebook.com/brokencity.eiga