2017年10月15日号 04面

 情報テクノロジーや移動手段の発達とともに、グローバル化した宣教協力が推進されている。日本においても、戦後以来、国際的なメディア伝道の働きが展開してきた。近年アジア規模では、放送・インターネットメディアを中心にメディア宣教ネットワーク、アジア・バイ・メディア(ABM)が結成されている。ABMに加盟する団体の中に日本でも活動する団体があることから、ABMの理事会が今年初めて日本で開催。9月22日には、日本の放送メディア伝道団体、文書伝道団体、牧師、信徒らも集い、アジア・メディア宣教カンファレンス(ABM・太平洋放送協会[PBA]共催)が東京・千代田区のお茶の水クリスチャン・センターで開かれた。【高橋良知

1つのからだで一致を求める

01カンファ

 PBA常務理事のティモシー・セランダー氏は、「PBAでは、ローザンヌ運動について学び、神の国のための協力ノ重要性を認識した。金銭的なこと、団体や国の文化など、壁は多くある。しかし、ただ1つの共通点は神の国の建設のため働くということ」と述べた。Ⅰコリント12章12〜17節を引用して、「いくつもの働きがあるが、イエスを頭とする1つのからだ。一緒に協力の方法を模索し、神が日本に何をなさるか期待しましよう。今回は1つの答えを見つけるのではなく、最初のステップとして、顔を合わせて互いを知り、何をするべきか見たい」と語った。

 ABMのメンバーは、トランスワールドレディオ(TWR)からアーロン・タン、クリスチャンビジョン(CV)のリチャード・ダニエル、リーチビヨンド(RB)からヨナス・サントス、タイ・ステークス、FEBCからボブ・バーツ、ガイ・ウェスト、インターナショナルブロードキャスティングアソシエーション(IBRA)からハンズ・オロフソンの各氏。拠点はシンガポール、オーストラリア、インドネシア、マレーシアで、放送形態も独自の放送局を持つもの、番組を放送局に提供するもの、インターネット放送、コミュニティーFMでの放送など様々だ。

02ダン氏

 講演では、ABM代表のタン氏が導き、各メンバーがそれぞれの観点で話した。「ABMは同じ信仰を持ち、アジア全体で戦略的な伝道協力をする。当初はラジオに特化していてAsia by Radioと名乗っていたが、メディアが多様化したので名前を変えた。年に1、2回会合を持つ。祈りをともにし、チームワーク、互いを尊敬し合うこと、誠実さ、透明性、参加、開放性を大事にする。ビジョンは、アジアのすべての人々が福音を聞くことができること。クリスチャンのメディアを通じてコミュニティーを立ち上げる。互いに協力してイエスにあって一致することだ」と語った。

 パートナーシップを大切にし、相談、情報共有、訓練の機会を設ける。特定の視聴者に届ける文脈化、調査の協力。データベースを共有できるようにするなどがある。

03ハルツ氏

04ステーク氏

05オロフソン氏

06サントス氏

 南アジア、東南アジア、イスラム圏への伝道について、短波放送のネットワークの構築や視聴者のフォローアップの協力なども団体間で協力してきたという。また団体を超えた弟子訓練の機会を設けた。

 IBRAのオロフソン氏は「一緒に協力して働くことがカギになる」と強調した。「ただのパートナーだけではなく、密接な友人でもある。神が私たちを近づけた。各団体のネームバリューを上げるのではなく、一緒に神の国を建て上げることが目標」と話した。

 RBのサントス氏は「福音にアクセスできない地域の人々にとって、短波を使うことが効果的であることが分かっている。私たちの力だけではできない。神の国において、個人主義ではなく、互いに協力することが大事」と話した。

 メンバー一人ひとりが代わる代わる登壇し、交代の際にはタッチし合うなど親密な様子がうかがえた。

次世代に聴き、学び続ける

07ダニエル

 CVのダニエル氏はデジタルメディアについて講演した。CVでは、ラジオ放送から、インターネットを利用した伝道に重点を移して働きを推進している。「クリスチャンのコミュニティーは世界の変化に追いついているか」と問いかけた。

 現代では、「多くの人に一度に届ける」から「情報の受け手が選択できる」へ、宣伝よりも友人からの情報を信頼するなどのメディア意識の変化を挙げた。「情報の信頼度では、友人は85パーセント、知らない人70パーセント、宣伝は5パーセントだ。たとえばインターネットの商品情報ならば、コメント欄にある見ず知らずの人の書き込みでも信頼するということがある」と話した。

 フェイスブックにおいては、文章や写真よりも動画がよく視聴されるという。またテーマについても、笑い、愛、悲しみ、怒りの順、内容については食べ物、ファッション、動物などの順で注目されていると分析を紹介した。

   「モーセは神から遣わされるときに、『あなたの手の中に何があるか』と問われた。私たちの手の中には、イエスの再臨の前に、神は素晴らしいものを与えてくださった。スマートフォンだ。日本人は素晴らしい発明をし、創造性に富んでいる。イエスが来られるまでに何かをしないといけない」と語り、日本語版も開発中のアプリケーションソフト“yesHeis”を紹介した。「若い人が触れて、地域の教会につながる働きになってほしい。電車に乗ると、若者たちが、一生懸命スマートフォンを見ている。どのように彼らに福音を伝えるか。働きを緊密にして協力していきたい」と勧めた。

    ◇   ◇

 後半トークセッションでは、セランダー氏、小川政弘氏(福音ネット伝道協力会[FNDK]代表)の対談を交え、日本の宣教課題、メディア宣教の課題を会場とのやりとりを交えて自由に展開。日本人の神観、働きの成果、若い世代に任せられるかどうか、短波の意義、などが話された。

 閉会のあいさつで、PBA事務局長の森田光泉氏は、「若者のアイデアを聴き、取り込めるか、いつも学び続ける必要があることを教えてもらった。各団体のスピーチでは、『協力』がキーワードだった。クリスチャンが少ない日本の環境の中では、協力する思いが非常に大切。今回は具体的なイメージを示してくれた。互いに声を掛け合い、つながりを大切にしていきたい」と話した。

 参加した団体、個人は、キリスト新聞社、CGNTV、TWCジャパン、7media、いのちのことば社、ユナイテッド・クリスチャン・ブロードキャスティング(UCB)、FNDK、OneHope、日本FEBC、RCJメディア・ミニストリー、日本聖書協会、TEAM、新生宣教団、牧師、信徒など。

 メディアへの取り組み

 ローザンヌ運動、日本伝道会議から

 国際ローザンヌ運動では、1974年のローザンヌ誓約の時点から「マス・メディア」の項目を設けて、メディア伝道に注目してきた。

 2010年ケープタウン決意表明では、行動の呼びかけのうち、「ⅡA 多元的でグローバル化した世界にあって、キリストの真理を証しする」の中に「4真理とグローバル化したメディア」の項目がある。そこで促しているのは、批判的に世の中のメディア情報をとらえる「メディアに関する意識」、一般のメディア界でのクリスチャンの活躍を励ます「メディアにおける存在感」、福音を伝える「 メディアミニストリー」だ。

 メディアミニストリーについては、「『従来型の』『旧式の』及び『新型の』メディアについて、創造的な、複数を組み合わせた、対話的な使用法を考案すること」を勧める。

 さらに2014年には、国際ローザンヌ運動が発行している「国際分析」(Lausanne Global Analysis)で、ラルス・ダール氏が、「メディアへの取り組み:世界大の宣教学的務め」を寄稿し、ケープタウン決意表明の項目を解説した(国際ローザンヌ運動ホームページShttps://www.lausanne.org/より、”Lausanne Global Analysis”January 2014 – Volume 3 / Issue 1 ”Media En

gagement A global missiological task”を閲覧できる。日本語翻訳を選択可能)。

 ダール氏は、「現代メディアの中心的な五大特性」として、①デジタル化、②民主化、③断片化、④グローバリゼーション、⑤多元化を挙げる。そして宣教学的に、「メディアへの取り組みは『全教会が、全世界に、福音の全体をもたらすこと』への召しの根本的に重要な部分と考えるべき」と勧め、各課題への指針を示した。

 昨年の第6回日本伝道会議における「170▽200プロジェクト」の成果『データブック 日本宣教のこれからが見えてくる−キリスト教の30年後を読む』(いのちのことば社)では、「第9章 メディア伝道」の項目を設けた。ラジオについては高齢者層へのニーズ、より広い層にはインターネット放送との組み合わせ、教会未設置地域や地方伝道を励ます可能性などが展望された。ラジオ放送、テレビ放送に取り組む団体と地域の一覧を掲載した。