チェリノブイリ原発事故で強制移住させられたプリピャチ市四半世紀を過ぎた現在も居住禁止だ。
チェリノブイリ原発事故で強制移住させられたプリピャチ市四半世紀を過ぎた現在も居住禁止だ。

タイトルの0.23μSV(マイクロシーベルト)とは、放射性物質汚染対処特措法に基づいて汚染状況重点調査地域の指定や除染実施計画を策定する地域について、環境庁が定めた要件の規準数値。だが、この基準数値よりも高い地域は、福島県以外にもある。事故直後も、その後今に至っても放射能被ばく関しては、経過の分析も放射能被害の現状も予測も行政当局からは実態が知らさていない。今後どのような障がいや影響が出るのか、死への不安と向き合う’フクシマ’の未来を、韓国のイ・ホンギ監督が追っていく。

2011年の3.11以後、政治・行政はじめさまざまな社会の基盤や判断基準、価値観が崩れつつある。放射線量の公示値にしても、ほんとうなのだろうかと信頼できない重たい不安感。毎日、放射能測定器で線量をチェックする人たち。それは福島に住む人たちに限らない。福島第一原発から180km離れた千葉県白井市に住む主婦、嬰児や幼い子どもを持つお母さんたちの不安は大きい。

放射能の健康被害はどうなのか。福島の原発事故の経験者、放射能線量に不安を抱く人たち17人が、1986年4月26日に爆発事故を起こしたチェリノブイリ原子力発電所と近郊、避難者が移住した地域を訪問する。国立医学アカデミーの放射線医学センターの研究者らが語る当時の分析と長年の研究成果。小児科病院で白血病やガンの治療を受けている幼い子どもたち。線量の値は低くても、いまも脚の痛みや頭痛、のどの痛みなどの身体の不調を自覚するモザリン村の学校の子どもたち。

10年、15年という事故を忘れた頃になって現れる様々な症状を知らされる日本からの訪問者たち。イ監督は、チェリノブイリがもたらしている26年後の’いま’と、福島の未来を真摯に見つめていく。【遠山清一】

国立ガン研究所・小児科病院には放射能の影響か子どもの白血病やガン発祥の患者が多い。
国立ガン研究所・小児科病院には放射能の影響か子どもの白血病やガン発祥の患者が多い。

監督:イ・ホンギ 2013年/韓国/69分 配給:シグロ 2014年2月1日(土)よりユーロスペースほか全国順次公開。

公式サイト http://www.mujin-mirai.com/FM/

*本作は、住民が避難し無人となった20km圏内を’いま’を撮った藤原敏史監督作品「無人地帯」とともに、2月1日より東京・渋谷のユーロスペースにて特集上映「連帯、そして再生-福島」で2作品同時ロードショーされます。(入替制・別料金)

映画「無人地帯」:http://www.mujin-mirai.com/NMZ/