幼い妹ルートゥは監督自身の娘が演じている © No Dream Cinema, Mantarraya Producciones, Fondo para la Produccion Cinematografica de Calidad (Foprocine-Mexico), Le Pacte, Arte France Cinema

観る側の好き嫌いが、はっきり分かれる映画と言える。私は、見る者の感性を磨いてくれるこのような作品に魅かれる。テーマは、タイトルどおり’闇’と’光’。だが、論理的に’暗’と’明’、’邪’と’聖’を対比し物語るようなアプローチは取られていない。いま・現在こそが、’闇’と’光’の過去と未来の顕れであることを感じさせ、未来の光へと誘われる。カルロス・レイガダス監督の作品は、本作が日本で初の一般公開という。感性を刺激する映像から思索の深みへと導いてくれるレイガダス作品が食わず嫌いされないようにと願う。

物語のメインは、メキシコの山間に暮らすファン(アドルフォ・ヒメネス・カストロ)と妻ナタリア(ナタリア・アセベド)に幼い兄エレアサルと妹ルートゥの4人家族。裕福な家庭なようで、セブンら数人の使用人を雇っている。

ファンは、セブンにさそわれて掘っ建て小屋での依存症の会に顔を出した。アルコール、売買春、薬物など様々なものに依存している現状と自分の過去について分かち合っている。集会の後、セブンは自分も家族に立ちして暴力を振るいしばらく離れていることを話すと、ファンもポルノ映像のネット中毒に陥っていることを打ち明ける。

幼い兄妹と連れだってファンとナタリアは旅行へ出かける。途中、忘れ物を思い出し、自宅に戻ったファン。そのとき事件は起きた…。

ファンと妻ナタリアと子どもたちが物語のメイン © No Dream Cinema, Mantarraya Producciones, Fondo para la Produccion Cinematografica de Calidad (Foprocine-Mexico), Le Pacte, Arte France Cinema

物語の展開は一応あるが、説明的ではなくストーリーを読み解きながら観ようとすると不安定な気分に陥るかもしれない。映像は美しい。だが、野外シーンのほとんどが中央部にピントを合わせ周囲をボカして幻想的な感覚を抱かせられる。それは過去だけでというわけではなく、現在も未来も同様なため時制の感覚が不安定になる。思えば’現在’は、その不安定さのなかに成り立っている。

その不確実さの中で’闇’と’光’がつくり出している’いま・現在’。作品の原題は’Post Tenebras Lux’で邦題そのものだが、キリスト教プロテスタントの宗教改革記念碑(スイス・ジュネーブ)を思い浮かべる人もおられるだろう。

その語源ともいえる聖書のことばが、「私の日は過ぎ去り、私の企て、私の心に抱いたことも破れ去った。『夜は昼に変えられ、やみから光に近づく』と言う」(ヨブ記17章11―12節)であることを想うと、赤い像が見つめるシークエンスがたんに’悪魔’として観てよいのか?。カルロス・レイガダスが、絵画的なポエムで描いた問わず語りが心に響いてくる。 【遠山清一】

監督・脚本:カルロス・レイガダス 2012年/メキシコ=フランス=ドイツ=オランダ/115分/原題:Post Tenebras Lux 配給:フルモテルモ、コピアポア・フィルム 2014年5月31日(土)よりユーロスペースほか全国順次公開。
公式サイト:http://www.yaminoato.com
Facebook:https://www.facebook.com/yaminoato

2013年第25回東京国際映画祭WORLD CINEMA出展作品。2012年第65回カンヌ国際映画祭監督賞受賞。シネマニラ国際映画祭最優秀監督賞受賞。リマ・ラテン・アメリカン映画祭批評家協会賞・APRECT Prize受賞作品。