© 1975 CASTANETS

1990年代から火がついたといわれるゴスペル・ソングブーム。20年以上続けば、もう’ブーム’というよりは日本の音楽文化の一つになりつつあるのかもしれない。各地のカルチャー教室や教会などで受講者が多いのはブラック・ゴスペル。黒人霊歌などをベースに現代の作品の多くがキリスト教の福音そのものの歌詞が多い。’god spell’を語源とする’gospel’。日本の人たちの心に響いている’god spell’とは何かを問い続けているドキュメンタリー。

ファーストシーンに引き寄せられる。亀渕友香、淡野保昌、ラニー・ラッカー、塩谷達也ら日本のゴスペルのパイオニア的なアーティストがアカペラでコーラスし、やがてアーティトが増え、その歌の輪が広がっていく。
一転して、さまざまなゴスペルコンサートで解放感いっぱいにハイトーンのコーラスを歌うメンバーたち。舞台出演後のメンバーへのインタヴューでは、楽曲のすばらしさやみんなで歌うことの喜びを異口同音に語る。だが、「あなたはクリスチャンですか?」との松永監督の質問には、ほぼ全員が「いいえ。クリスチャンではありません」と回答。実際、さまざまなゴスペル・クワイヤーに参加しているメンバーの9割はクリスチャンではない人たちといわれている。
取材は、ゴスペル・ソングの本場アメリカへも飛ぶ。教会での礼拝賛美も会衆とリーダーがコール・アンド・レスポンスで迫力がある。アーティストたちが語るゴスペルのスピリット。塩谷達也、塩谷美和らのゴスペルツアーのルポなどでゴスペル・ソングの歴史や現代に受け継がれているものが紹介されていく。

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日本のゴスペルブームに火をつけたと言われるミュージカル映画「天使にラブソングを」と「天使にラブ・ソングを2」が、日本で公開されたのは1993年・94年のこと。「Oh Happy Day」や「Joyful,joyful」という曲名を挙げれば、思い当たる人も多いだろう。同じころゴスペルをメインにしたクワイアー「亀渕友香&VOJA(The Voices of Japan)」が結成され、淡野保昌は新宿のゴスペル東京での指導をスタートしている。時のうねりを感じさせられる。このドキュメンタリーが印象深いのは、波のうねりの高見だけでなく、ゴスペルのもつ厳しい労働と自由への渇望を表現した’ことば’の深さに深く触れていることだろう。亀淵友香のそのインタヴューや最後の数分間のイラストに、クリスチャンではない監督の心に響いた’god spell’に触れた思いがする。 【遠山清一】

監督:松永大司 2014年/日本/57分/ドキュメンタリー/ 配給:GACHINKO Film 2014年8月23日(土)よりシネマート六本木ほか全国順次公開。
公式サイト:http://www.g-film.net/gospel/
Facebook:https://www.facebook.com/eiga.gospel