01ゴスペル
─沖縄の空・海・陸を人々に取り戻すために

 本書は、約6年前に沖縄の普天間基地ゲート前で始まったゴスペルによる抗議活動と日本各地に広がった祈りの輪の記録集である。タイトルにある琉球語の「ぬるし」とは日本語の「のろし」にあたるが、戦闘の合図としてではなく遠方への火急の合図であったとのこと。2012年10月、オスプレイ配備への抗議活動として「ゴスペルを歌う会」を開始され、終始リードしてこられた神谷武弘牧師(沖縄バプテスト連盟・普天間バプテスト教会牧師)により冒頭で丁寧に解説されている。

 毎週月曜日の普天間基地ゲート前での集会をはじめ、首相官邸前、福岡、岡山県和気、神奈川県戸塚、淡路島洲本、摂津本山、東京御茶ノ水、京都三条、大阪十三、大阪福島でゴスペルアクションが継続されている。ここまで広く各地に広がった事実に驚き、大変励まされた。

「記録集編集委員会」による本書は総勢50人が執筆している。経過記録・ブログ・写真、平和の祈り、各地「ゴスペルの会」からのメッセージ、沖縄・ヤマト(本土)在住支援者の言葉、神学的メッセージなど、教派・教団を超え、市民と共に平和への熱意と祈りが込められた実践報告である。街角に立ち、ほんの数人だけで歌い続ける心の内や、目の前にフェンスがない事実を受けとめて歌うグループなど、内面の葛藤・苦悶が痛いほど伝わってくる。目の前に相手がいない場所で「ヤマトの負い目を連帯しながら同じ歌を歌うこと」の意味は大きく、その歌声は神に届いていると信じたい。

 関田寛雄牧師が指摘されているように、沖縄戦以降の問題だけではなく、薩摩の侵攻、「琉球」植民地化の罪責の視点から沖縄を見つめる必要があることは確かだ。沖縄の空・海・陸をヤマトから切り離し、人々や子どもたちのいのちを脅かしているヤマトの政権や私たち自身に向けてゴスペルは歌い続けられている。私もその歌声に連なりたい。

評・比企敦子=日本キリスト教協議会教育部総主事

『ゴスペルのぬるしをあげて「普天間基地ゲート前でゴスペルを歌う会−歩み・記録集−』
普天間基地ゲート前でゴスペルを歌う会・記録集編集委員会編 いのちのことば社 A5判 2,160円税込

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