本書は著者が「おわりに」で書いているように、発達障害を抱えた児童・生徒の具体的な支援方法について書かれた書ではない。発達障害を分類しその特徴を明らかにするために書かれたものでもない。著者が長年カウンセラーとして接してきた人たちとの交流を通して、気づき、悩み、心配し、理解した「臨床の知」を紹介し、当事者の苦しみや哀しみを代弁している証言の書である。それは「仲間たち」という題名に込められた著者の思いであるように思う。

 ここで紹介されている四人の事例は、複数のエピソードが合わさった架空事例であると断り書きがあるが、読む者には「ケンくん」や「綾ちゃん」、「ユウくん」や「透ちゃん」がそこにいるようなリアリティが感じられる。それぞれ課題を抱えつつ自分の生を懸命に生きる人たちが、大人になっていくまでの長い道のりに、関わり続けたカウンセラーの眼差しがそこにあるからだろう。全編を通して人として寄り添うとはどういうことかを教えてくれる。

 したがって読者は、本書を発達障害(自閉症スペクトラム障害、学習障害、注意欠如・多動性障害)についての知識を得るために読もうとしたり、身近にある状況の診断や対処法を得るため本書を用いようとするならば、現実に当てはまらない距離感を感ずるだろう。しかし、目の前の人をわかろうとして著者の試みた接近方法を読んでいくと、自分と異なった感じ方、考え方をする他者をどのように理解していくかのヒントが数多く与えられる。何よりも目の前の人を、神に造られたかけがえのない人間としてリスペクトすること、愛することの幸いが伝わって来る。

 どの事例の場合も当事者の家族について言及され、苦しみながら練られていく家族の品性の豊かさが語られている。ここにも著者の眼差しの温かさが感じられる。このような仲間たちの存在を知ってほしい、「こちら側とあちら側」に分けないでほしいとの著者のメッセージが伝わってくる良書だ。(評・水口洋=玉川聖学院理事

大人になった発達障害の仲間たち

森マミ著、いのちのことば社・フォレストブックス、1,404円税込、B6判

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