行き場のなかった知的障がいの人々と共同生活をし、世界に影響を与えたラルシュ共同体。その取り組みで著者が見出したのは、「脳の損傷が苦痛ではない、拒絶されることが本当の苦痛だ」ということだった。『梯子を降りる 悲嘆からコミュニティへ』ジャン・ヴァニエ著、宮永久人訳、女子パウロ会、千80円税込、B6判)では、その営みの中で、他者に勝ろうとする「上がる」生き方から、ありのままの価値を認める生き方への転換を促す。そしてコミュニティーの葛藤と希望を説く。第二次世界大戦での従軍経験から戦後、生き方を転向した著者は、「心の武装解除」から、国々の平和への道筋を語る

 国、民族レベルでの和解を考える上で、イスラエル・パレスチナ問題は避けて通れない。無知や無言ではなく、まず知ること、対話、プロセスを重視するのはわが親愛なるパレスチナ隣人へ—イスラエルのユダヤ人からの手紙(ヨッシー・クライン・ハレヴィ著、神藤誉武訳、ミルトス、2千700円税込、四六判)著者は、もともとシオニズム強硬派だったが和解を模索。米国でムスリムリーダー向けのユダヤ理解のプログラムに協力してきた。それぞれの主張の背景が伝わっていない現状を痛感し、パレスチナ人への手紙という形式で、ユダヤ人のイスラエル観を伝える。エピローグではパレスチナ人側からの反論を矛盾や対立を残したまま掲載。著者は「反対者を打ち負かするのではなく、それと違う対話モデルを築きたい」と言う。訳者による著者へのインタビューや解説が知識を補う。日本人仏教者の名も挙がる。この対話の「実験」に日本のキリスト者はどう向き合うか。

 対話や和解は身近な所に。『聖書が語る妻と家庭』(イ・キボク著、ツラノ書院、千280円税込、B5判)は聖書的な観点で、女性の尊厳を回復し、教会、家庭でのあり方を勧める。著者は韓国人だが、女性の役割についての「儒教文化」の影響は、日本の教会にもありそうだ。まず自尊心の回復から始まり、男性の理解、誤解を整理して、家庭の癒しをアドバイスする。

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