11月3日号紙面:「小さないのちのドア」1周年記念公演 子どもが笑顔で 生きる国に
「小さないのちのドア」1周年記念公演 子どもが笑顔で 生きる国に
写真=左から永原代表、渡邊さん、西尾さん
思いがけない妊娠や育児で思い悩み追い詰められた女性と赤ちゃんを支援している「一般社団法人小さないのちのドア」(神戸市北区)の1周年記念公演「いのち輝く社会の実現へ」が、10月5日に神戸市産業振興センター・ハーバーホールで開かれた。1周年セレモニーでは永原郁子代表理事が挨拶に立ち、兵庫県議会議員の北浜みどりさんが来賓挨拶をした。その後、福音歌手の森祐理さんのチャリティーコンサートと、「夜回り先生」として著名な教育者で花園大学客員教授の水谷修さんの特別記念講演が行われた。
「小さないのちのドア」は、永原さんが開業するマナ助産院内に開設している。スタッフの西尾和子保健師、渡邊和枝助産師、同じく助産師の永原さんの3人が中心となって、24時間365日、メールやライン、電話、来院などで寄せられる相談に対応している。
開設以来の相談件数は約千350件。その多くは貧困や家族の崩壊が背景にある。永原さんたちは「どうしたらいいかわからない、死にたい、助けて」と訴える女性たちを受け止め「お母さんと赤ちゃんにとっていちばんいい道をいっしょに考え」、医療や行政、福祉等、必要な機関と連携して、母子の心身を守る働きに奔走している。
永原さんは1年間の感謝を述べて、失われる小さないのちの問題に触れた。子どもの虐待死の大半は実母による。さらに2016年のデータでは、中絶で失われたいのちは公表16万人以上。経験者の女性の70%(18年)が傷付き、罪悪感を持って生きている。
「相談できる場所があったら助けられたいのちがあります。私たちの願いはこの働きの継続と、日本のどこかで二つ目、三つ目のドアが開設されること。そして、妊婦さんの生活支援の必要性を痛感した1年でしたから、なんとしても母子が産前産後安心して過ごせるマタニティホームを建設することです。さらに公益社団法人の取得も願っています。女性と子どものいのちを守る働きに皆様の温かいご支援をお願い致します」
北浜議員は「行政側も何とか手伝いたいと、県議会ではプロジェクトチームを立ち上げようとしています。兵庫県から日本に広めていきたい。永原さんたちの活動を応援していきたいと願っています」と、挨拶した。
「小さないのちのドア」は100%寄付で活動している。チャリティーコンサートのステージで森さんは、子どもの死亡率が非常に高いエチオピアで希望を持って生きる子どもたちの姿や、阪神大震災で亡くなった弟の渉さんがつなぐ希望に触れた。
「たとえ望まれずに生まれるいのちでも、神は愛してこの世に送ってくださいました。私たちにはこのいのちを守る役目があります。手を差し伸べるということが、どれだけその人の希望になることか。この働きが神様に祝福され、広がっていきますように」
水谷さんは「“夜の世界”に生きる子どもたちを“昼の世界”に戻すことが私の使命」だと、長年多くの傷付いた子どもたちと接してきた体験を語った。
「どんな子も、昼の世界に生きたいのです。夜の世界の子は捨てられた子ども。捨てたのは誰だ。子どもが殺されるような社会が、いい社会か。この世の中は間違った方向に行っています。求められているのは強い国じゃない。子どもが笑顔で生きる国だ。どうか、下を向いている子どもには優しいことばをかけてください。忘れられた子を一人でも救えるようにしてください」
最後に小さないのちのドアのスタッフ3人が登壇して「これからも思い悩む女性たちが笑顔になる場所でありたい。どうかご支援をお願いします」と、挨拶した。満席となった会場から、大きな温かい拍手が送られた。【小さないのちのドア】L&O078・743・2405Qinfo-inochi@door.or.jp