著者は、日本における風力エネルギーの学会創設者で、第一人者である。その働きは、NHKの『プロジェクトX』でも紹介された。そういう学者であり、現場で格闘してきた著者が、日本のエネルギー問題に切り込み、その方向性を指し示しているのが本書である。

 本書の前半は、月刊『いのちのことば』誌に連載されたエッセーをまとめたものなので、聖書が多く引用され、教会・クリスチャンが、エネルギー問題、いや科学技術にどう向き合うかということに対しても示唆を与える。

 本書における著者の基本的な考え方は、大きく二つである。その一つは、原発の再稼働をやめるべきということである。国や電力会社が、大きなリスクをもつ、またそもそも核廃棄物などの処理の見通しが立たない原発を、重大事故が起ってもなお使い続けようとしていることを批判している。

 もう一つは、その裏返しになることだが、安全な再生可能エネルギーへのシフトへの提言である。リスクのもっと小さな代替え手段の自然エネルギーがあるのだから、脱原発は可能だというのである。著者によれば、日本の自然エネルギーの潜在量は、原発二千基を上回るほど巨大な可能性があるという。そして、その最有力候補として、著者が生涯をかけて取り組んできた風力発電を提案する。

 こういう二つの考え方を軸に、世界のエネルギー事情、特に再生エネルギーへシフトした欧州、北欧の現状、また人類が利用してきた各エネルギーの特徴を、専門家ならではの知識の豊かさで、分かりやすく解説する。

 とりわけ、デンマークの歴史やエネルギー事情を引用する。1860年代、戦いに敗れたデンマークがどのように復興したかは、内村鑑三の『デンマルク国の話』に記されているが、その内容を踏まえ、現在、自然エネルギー先進国になったデンマークを、希望のモデルとして示している。『デンマルク国の話』を、本書と共に読むこともお勧めしたい。

評・岸田誠一郎=ミッション東北・福島聖書教会牧師

『自然エネルギーが地球を救う 「脱原発」への現実的シナリオ』

牛山泉著、いのちのことば社・フォレストブックス 1,760円税込、四六判

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