[レビュー3]『信仰と建築の冒険 ヴォーリズと共鳴者たちの軌跡』『銀幕の中のキリスト教』『神学と神話 ドイツ文化誌の視座から』
「私は、日本の琵琶湖畔に、神の国の福音宣伝のため、命を捨てたいです。私は敢えて信仰の冒険をやります」。各地で文化遺産になっている建築を始め、多様な働きで知られるヴォーリズ。今回新たに整理された資料や豊富な写真を駆使した『信仰と建築の冒険 ヴォーリズと共鳴者たちの軌跡』(吉田与志也著、サンライズ出版、2千800円+税、四六判)では、ヴォーリズ周辺の人々との関係性を重視。YMCA、英語教育、家庭薬販売、医療支援、学校教育、労働者支援、教会形成、出版、多様な活動は一人でできたことではない。著者の祖父をはじめ、数々の困難を乗り越えた仲間たちとの友情があった。
聖書物語と不可分に展開した欧米の映画。時代と共に真正面から聖書を扱う主流の映画は減っているが、いまだ様々な作品に聖書的な問いかけを見出せる。『銀幕の中のキリスト教』(服部弘一郎著、キリスト新聞社、千700円+税、A5判)では、キリスト教背景の濃い名作映画はもとより、「ターミネーター2」のようなSF作品、エンターテインメント作品にも、イエスのような救済者像や聖書的な構造を見いだせるとして、多様な49作品を紹介し、批評する。「ドラえもん」「愛のむきだし」など邦画からも、「神なき時代」の現状と教会の課題が浮かび上がる。家族がクリスチャンという著者は、キリスト教に愛着がある。その上で教会へは「愛に生きてほしい」と激励。牧師との対談では「弟子だけではなく、ファンも増やすべきでは」と提案する。
『神学と神話 ドイツ文化誌の視座から』(河崎靖著、現代書館、3千円+税、四六判)は、文化的格闘という観点でドイツの言語と思想に着目してキリスト教史を見る。全体はキリスト教の成立と伝播(でんぱ)、現代の神学、神話学の三つの部分で構成。総合的な結論はないが、三つの観点が並置されることで、それぞれの文化的格闘を浮き彫りにする。
戦争と平和のテーマが基調になるのは、ドイツにおいてナチスと教会の葛藤がハイライトとなるからだ。ルター訳聖書やボンヘッファーなどの神学者の文書のドイツ語原文と語釈を添える。神話学では言語学との比較を意識して、ゲルマン神話やグリムの昔話、日本の記紀神話を分析する。
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