[レビュー1]「自分はダメダメ」と思う若者にこそ 『ななさんぽ 弱さと回復の“現場”で神がいるのか考えた』 みなみななみ著
自分一人ではなかなか行かないだろうな、と思う場所。自分一人だけでは多分考えないだろうな、と思う事柄。でも信頼できる誰かが一緒に来て案内してくれるなら…。この本は、これまであまり関心がなかったり、踏み込むのにちょっと勇気が必要だったりする未知の領域を、散歩のような気軽さで一緒に旅してくれるルポマンガだ。
ガイド役はイラストレーターのみなみななみさん。飾らない等身大の自分自身を素直に描きながら、いつだって読者目線でそこにある痛みや叫びのリアルを伝えようとする彼女の筆致を、多くのファンは愛してやまない。かく言う私もその一人だ。時に鋭い問いを突き付けられるが、共にいてくださるイエス様も同時に思い出させてくれる。だから励まされる。
自分の足で世界を渡り歩き、自分の感性を大切にしながら社会に関わり続けてきた彼女だからこそ、若者に届く言葉を持っている。私はこれまでキリスト者学生会の学生に彼女の本を紹介してきたが、ここにまた新たな一冊が必読書リストに加わった。このマンガは、学生が自分の将来や生き方について考える時、そして教会の宣教のあり方について考える時に、新たな光を投げかける大切な一冊になると思う。
本書には、弱さを抱えている人や助けを必要としている人たちの傍らに寄り添い、共に回復を志しているクリスチャンが大勢登場する。彼らの現場は様々だ。人身売買、ホームレス、飢餓、アルコール依存、などなど。実に20以上の社会問題を取り上げている。数々のこの世の苦しみを前に、「神は愛」とはどういうことかと本書は問う。そして、それぞれの現場に生きるクリスチャンたちの生き様を通して、その苦しみの中にこそ神がいる、と一貫して訴える。
一見、意識高い系の人たちのための本? と思われるかもしれない。でも、そうじゃない。むしろ「自分なんかダメダメだ」と思っている若者に手に取ってもらいたい。ちょっと気晴らしに散歩に出かける感覚で。だってマンガだから(笑)。
(評・吉澤慎也=キリスト者学生会副総主事)
みなみななみ著、いのちのことば社、1,400円+税、A5変型
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