この本は、2016年4月22日から29日までの8日間にわたって東京で開催された「NCC宗教改革500年記念、第七回日独教会協議会」の報告書である。日独教会協議会は10年ごとに開催されて、この年7回目を迎えた。今回はスイス・アールガウ改革派州教会からも2人が参加された。ドイツからの訪問者は7人、公開プログラムの参加者は58人であった。

この協議会のプログラムは多彩であった。実施されたプログラムに沿って編集されている目次を見ると協議会の概要が分かる。

(1)開会礼拝・閉会礼拝(2)協議会講演(3)主にある交わり(8か所の教会でされた礼拝と講演記録)(4)現地研修(福島原発事故の被災地、被差別部落と「かにた婦人の村」への訪問記録)(5)みことばをうたう(6)公式声明文・報告文

 通読して、この協議会に参加した人々のメイン・テーマは、今日的な奉仕(ディアコニア)の課題であったことが分かる。協議会の最終声明には「スイスとドイツと日本では、宗教改革後の教派にとって今日にいたるまで隣人奉仕の神学が危急の課題であることが明らかになった」とある。

 わたしは公開講演会にのみ出席したのであるが、隣人としての難民が「これまで慣れ親しんできたことが当然でなくなる」(23頁、ウルリッヒ・リリエ)ほどの「神学の危急の課題」とされていることが印象的であった。日本の教会がまだ直面してはいない課題である。

 ドイツ・スイスからの訪問者たちによる現地研修の記録は貴重である。日本に住む私たちが慣れて、鈍くなっている感性を呼び覚まされる思いがする。

 プロテスタント教会において、奉仕の課題は出来ていることより出来ていないことのほうが多いのだろう。しかし、まさにその自覚の時にわたしたちはM・ルターが言う「恵みのみによる義認」が与えられるのではないかと思った。

評・山本光一=日本基督教団京葉中部教会牧師

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