７月４日未明から九州南部を襲った豪雨は、球磨川氾濫による浸水被害もあり、熊本県人吉市をはじめ広範囲に被害が出ている。ＮＰО法人九州キリスト災害支援センター（九キ災、横田法路理事長）は４日、熊本ベースを「九州南部豪雨災害対応拠点」とし、安全を確認しながら情報収集、資材の移動を開始。６日に市来雅伸本部長、諸藤栄一熊本ベースディレクターを現地視察に派遣した。【中田　朗】

７月７日には、九キ災主催の初動ミーティングが、災害時に協力する全国ネットワーク「キリスト全国災害ネット」（略称・全キ災、北野献慈世話人代表）の加盟団体及び同会参加団体に向け、オンラインで開催。被害に遭った教会の現状報告と九キ災の初動対応について報告があった。コロナ禍での初めての支援活動でもあり、被災地に感染を持ち込まないため、現時点では九州地域外からの一般のボランティアは受け入れないことを決定。報告では、制約された中での支援活動にとまどいや苦慮も感じられた。

今回の豪雨で被害を確認できている教会は以下の通り。

熊本県人吉市の人吉バイブル・プロテスタント基督教会（森下薫牧師）は、教会の１階部分が完全に浸水。森下牧師夫妻は２階で生活している。車は浸水し、使用できない。
バイブル・プロテスタントともしびキャンプ場は、キャンプ場内にあるともしび聖書チャペル（松崎義治牧師）に浸水被害はなかったが、キャンプ場までの道路が土砂で遮断。車両は高台に避難させ大丈夫だった。
トータル・人吉神愛キリスト教会（土肥洋子牧師）は、牧師宅が完全に水没。「土肥牧師は避難所にいる模様だ」という。
アッセンブリー・人吉キリスト教会（大﨏浩嗣牧師）は、複数の教会員宅が床上浸水に遭った。「日曜日（５日）に数人で泥のかき出しにあたった」という。
バプ連盟・人吉教会（永渕一隆牧師）は、教会前の道路が冠水。教会員宅に床上浸水の被害が出ている。日曜日（５日）の午前は礼拝を行った。

葦北郡芦北町のイエス栄光芦北教会（松岡欣也牧師）は、教会が床上浸水。教会員10世帯が床上浸水し、車両８台が浸水し使用できない。
水俣市の水俣福音キリスト教会（神薗悟牧師）には、一時避難所として地域の一部の人たちが避難している。芦北町の教会員が浸水被害。芦北町の高齢者施設が浸水と停電とのことで、物資と発電機を提供した。
鹿児島県薩摩川内市の希望キリスト教会川内チャペル（松本貢牧師）は、教会が床上浸水。車両が浸水し使用できない。

九キ災では発災当日、今後の方針として①被災地の教会を助ける、②教会の再建と共に地域の再建に努める、の２点を理事会で確認。「ＮＰО法人なので、一般の団体との協力の下に災害支援を行うことも一つの方針にしている。今回、人吉市、芦北町、鹿児島の一部で、教会の被災が確認されている。教会が存在する地域全体が甚大な被害が出ている場合は、教会自体の被害の大小にかかわらず、被災地の教会としてサポートに当たる。今回は人吉市全体が被災しているので、そこにある教会、牧師とその家族、教会員とその家族、周辺住民に対して支援活動をしていく。そのことによって新たな関係づくりのきっかけとなる」と、副理事長の中村陽志氏は話した。
一方、人口約３万人の人吉市には五つのプロテスタント教会があり、盆地を流れる球磨川が氾濫し教会、教会員が多数被災しているが、コロナ禍での初めての災害で海外や九州外からのボランティアは受け入れられないこと、雨季がまだ続いており次の被害を抱えていることなど、懸念材料も指摘した。

その上で、今後の九キ災の対応として、①益城ベースにスタッフを配置し、現地調査とボランティア派遣の実施計画を行う、②熊本の教会のネットワーク「熊本チャーチネットワーク」と協力し、熊本県内でボランティア派遣を行う、②人吉バイブル・プロテスタント基督教会の復旧作業に取り掛かり、その後の可能性の広がりを探る、③ボランティアは日帰りを基本とし、宿泊施設は斡旋しない、④被災教会の経済的なサポートを行う、⑤ミッション系の学校、他団体との協力体制を模索する、などを挙げた。
６日に現地視察にあたった市来氏は、「人吉バイブル・プロテスタント基督教会の森下先生にパンの缶詰と水を届けた。森下先生は自身も大変な中、それを地域の人一人ひとりに配られ、『被災した状況の中、このような交わりが生まれたことに感謝します』とおっしゃっていた」と報告した。
九州南部豪雨の支援活動については九キ災のフェイスブック（URL https://www.facebook.com/kumamotoshien/）で随時配信している