畑で多くの失敗と、 小さな成功体験を 環境と教会を考える17 大村真理さん

環境や持続可能性のテーマに日本の教会はどう取り組めるか。横浜市で有機農業に取り組む大村真理さんに聞く最終回。
§   §
残暑が厳しかった訪問時の9月は、まだまだ畑の雑草が生い茂っていた。「本当だと農家として悲惨な状況だけれど、周りの人が温かく見てくれた。でもそこに甘んじてはいけない」と大村さんは気を引き締めていた。 家族の支えがある。「生計が成り立たないまま、何年もやっているのは、普通は赦されない。でも両親は、『神様と共に生きることならば、それを突き詰めなさい。神様が導かれているのだからその道を貫くしかないよ』と後押ししてくれました」
兄弟姉妹も畑を手伝うことがある。「双子の一人は、もともと保育士で、ものをつくるのが好き。放課後デイサービスなどもしていて、いわゆる『グレーゾーン』の子たちと向き合っていて、畑についても、人が育つ場ということで関心をもっている。畑は自然の学び場。いろんなことができると思います」
「私も畑でいっぱい失敗してきた。ここは失敗できる場所だと思う。社会に出ると、なかなか失敗は許されない。でもここで、失敗も含めていろいろ経験してほしいなと思う。学校を出て、研修をして、そのまま新規就農者となり、いろんな人たちに許されて、今の私があります」


「ただ心が折れそうになったのは、成功体験がなさ過ぎたということ」と言う。「失敗は悪いことではないんだと自分の中で言い聞かせるが、やっぱり心のどこかで傷ついている。成功体験も大事です」
そこで実践しているのは、畑のうねを短めにしたこと。「わたしはそんなに体力があるわけではない。うねは一本10メートルまでにした。長いと途中でどこまでやったか分からなくなるし、精神的にも気力がもたない。一回の肥料も一人でまける量になり、管理も楽になる。小さな成功体験を積み重ねていけます」
「『力がないとやれません』『技術ないとやれません』ではなく、いろんな人でもやれるようになっていくことがいい。手軽ににかかわれることを目指したい」。
「栽培にはいろんな人が入ってもらい、私の役目は、要所要所をみて、草や全体の畑の管理をやることかな。みんながみな草を刈ることはできない。私は私でできるところがある。私の手の届かない部分、苦手な部分は、共にやっていければなと」。

大村さんの農業の取り組みは、再スタートを切った。多様な人々が失敗を許されながら、除草、種まきから収穫、四季の移り変わり、動植物との触れ合い、食べ物、を共有する農園。そこから持続的なコミュニティーを学べそうだ。(大村さんの項終わり、「環境と教会」連載は次回につづきます) 【高橋良知】