ミャンマー・クーデターから半年 宗教者ら祈り 暴力の停止求め連帯

ミャンマー市民への連帯を示す「鍋叩き」の要領でそれぞれ身近な物を打ち鳴らした。手前が渡邊さん

 

国軍のクーデターから半年。ミャンマーでは、国軍による弾圧が続く一方、市民側にも武装勢力が立ち上がっている。このような中、「非暴力で暴力の停止を求める市民を支えよう」とキリスト教、仏教などの諸宗派が結集し、「ミャンマー 祈りと連帯の集い」(以下「集い」)を6月24日に開催した。東京・港区の浄土真宗光明寺を主会場にオンラインを交えて開いた。「集い」にも参加したマイノリティ宣教センター(CMIM)は、毎週金曜午後9時にミャンマーのための祈祷を続けてきたが、25日に20回目の集会を開いた。これらの報告を合わせて紹介する。【高橋良知】

「内戦化やむなし」を傍観の理由にしない

6月22日には、ミャンマー第二の都市マンダレーで国軍と市民側の銃撃戦が起き、市民8人が死亡、8人が拘束、国軍兵3人が死亡と報じられた。CMIMスタッフの渡邊さゆりさんは、「このようなニュースで『内戦化する』『手がつけられない』と言ってしまうと、状況への傍観を肯定する」と注意を促した。「そもそも放置していたのは誰か。ミャンマーはクーデター以降ずっと内戦状況だった。抵抗する市民をバッシングして、権力に加担するのではなく、国軍の暴力を止めないといけない」と話した。

宗教者らで連帯の祈りをした

 

ミャンマーの人口約9割が仏教徒だが、1865年に発足したミャンマー・バプテスト連盟をはじめ、キリスト教の伝統もある。日本でも日本バプテスト同盟、日本バプテスト連盟がつながりをもってきた。近年難民問題で注目されたロヒンギャは主にイスラム教徒だ。「集い」では、プロテスタント、カトリック、仏教に加え、イスラム教徒の祈りもあった。各団体の祈りのほか、渡邊さんや在日ミャンマー人たちからの状況報告、全体での「ミャンマー連帯の宗教者の祈り」、ミャンマーとの連帯を示す「鍋叩き」が実施された。

日本でできることは心と耳を開くこと

渡邊さんは、市民の抵抗活動の例として、10~20代のいわゆる「Z世代」の取り組みを紹介した。コスチュームを着たり、ライトを利用したり、SNSを駆使したり、デモが難しくなると人形を使ったりと自由な発想で抗議運動を展開した。

市民は毎晩午後8時に鍋を叩(たた)くなどして抗議していたが、「今はそれもできない状況。リーダーたちが指名手配され、テレビで逮捕者の名前を公表している」と言う。女性の暴行の問題も明らかになってきた。「世間にさらされるのを恐れ、数か月沈黙していたが、若者が、暴行を再現したメイクや血の色に染まったシャツの写真をSNSで広げる活動をするなどして広がりました」

「国軍の攻撃で亡くなった人は900人以上と言われるが、空爆で亡くなった人は数えられていないので、もっと犠牲者がいる」とも話す。

教会ではクーデター後に、アモス5章24章が読まれた。「デモに出られなくなった3月以降はフィリピ(ピリピ)4章13節が読まれた。これらの言葉が選ばれた意味を考えたい」と述べた。

日本にいる私たちができることとして、「在日ミャンマー人が安心して暮らせるようにする。彼らの活動に耳と心を開く。在日のミャンマー人は北海道から沖縄までグループで活動し、声を上げている。日本では言いたいことをいって、いのちを狙われることはない。しっかり声を上げていきたい」と話した。
在日ビルマ市民労働組合会長のミン・スイさんは、ミャンマーの状況について「本当に情けないこと」と肩を落とした。ミャンマー社会の歴史を振り返り紹介した。

英国の植民地統治に抵抗したアウンサン将軍(アウンサンスーチーさんの父)は、日本軍で訓練を受けて国軍をつくった。以来国軍は英雄視され、尊敬される存在だった。1980年代になると、社会主義政策が進み、紙幣が廃止された。88年3月に学生と有力者の息子のケンカがデモに発展する事件が起きた。治安部隊の銃撃で学生が死亡したことで、反政権、民主化運動に拡大していった。「民主派の象徴だったスーチーさんは20年軟禁された。今、私たちは、コロナで数週間家にいるだけでも耐えられない。20年耐えて、精神を保ったスーチーさんを人々は尊敬している。2015年にスーチーさんらが政権を取り、国際的な経済支援もあり、『アジア最後のフロンティア』と言われるほどになった。若者もインターネットを利用し、国内外で学ぶ。若者も88年のデモを知った。2月の国軍によるクーデター後は、若者たちが動いた。様々な方法で抵抗した勇気に頭が下がる。日本でもこのことのために全国で、活動している。ミャンマーの平和と民主主義を取り戻すため、頑張ろう」と語った。

ミャンマー出身のマキンサンサンアウン牧師(バプ同盟・杉並中通教会)は、故郷を心配しつつ、難民たちの声を紹介した。「白いお米を食べたい」「爆発や銃撃音のしない安全な村にいきたい」「友だちと安全に遊びたい」といった声があった。コロナ、マラリヤなど病気のリスクがあること、「国軍が市民による犯行を装って放火している」といった現状も伝えた。

全国からの祈りの連帯では、鹿児島宗教者懇話会、西南学院神学部有志、真言宗僧侶、日本バプテスト神学校、カレン・クリスチャン・フェローシップ、カチン族のクリスチャン、曹洞宗の僧侶、バプ同盟・関東学院教会牧師、日本イスラーム文化センター、在日のミャンマー人僧侶などが参加した。

シスターの姿を図案化したロゴ

カトリック築地教会司祭のレオ・シューマカさんは、「若者の代わりに私を撃ってくれ」と国軍の前に出たミャンマーのシスターについて紹介した。その姿を図案化したロゴも紹介された。