「笑顔があふれる夫婦関係」栗原加代美さん講演 愛を築くために「傾聴」大切  JEA女性委員会「かたりば」

日本福音同盟(JEA)女性委員会主催第6回「かたりば」が7月15日、オンラインで開催され、NPO法人女性・人権支援センター・ステップの栗原加代美理事長が「笑顔があふれる夫婦関係」をテーマに講演した。同センターではDV被害者の保護活動を進める中で「加害者が変わらなければ根本的な問題解決にならない」と、11年前から加害者更生プログラムを開始、千人以上の参加者に対応し成果を上げている。仲の良い夫婦の“真の秘訣”は何か。

ある30代の夫婦の場合は、「私が何を言っても聞いてくれません」「そんなことない」と平行線だった。栗原さんが夫に「奥さんの顔を見て『そうなんだね』と言ってみてください」と助言し、夫がそう言った時、妻は泣き出した。
「初めて人間として扱われました。顔も見ず、相づちもなく、虫けらのように扱われてきたけれど、初めて自分を受け止めてもらった」と語った妻は、離婚を踏みとどまって夫婦関係は修復していったという。
栗原さんは、DV、ストーカー虐待の専門家として、全国で啓発活動や講演を重ねる。当日の講演テーマ「笑顔があふれる夫婦関係」のサブタイトルは「愛が笑顔を運んでくる」。栗原さんは、夫婦のコミュニケーションの土台となる、もっとも大切な「愛」の関係について語った。
「愛の関係を壊す7つの悪い習慣」と「愛を築く7つの良い習慣」を対比。信頼関係が遠のく悪い習慣とは、「批判する」「責める」「文句を言う」「ガミガミ言う」「脅す」「罰する」「褒美で釣る」。一方、信頼関係の深まる良い習慣は、「傾聴する」「支援する」「励ます」「尊敬する」「信頼する」「受容する」「意見の違いを交渉する」。これら良い習慣の中で、最も大切なのが「傾聴する」ことであると強調した。

「会話の目的は相手の願望を知ること。加害者更生プログラムに来る男性はみな、妻の話など聞いていなかった、自分が何を言うかばかり考えていた、と言います」
「この“7つの良い習慣”は、イエス様の愛の行為でもあります」

傾聴の時は「さ行」で相づちを

傾聴する時に大切なことは、「サ行」で相づちを打つこと。やってはいけないのは「ダ行」での相づちだ。サ行は「そうなんだね」「さすが」「その通り」「知らなかった」「素晴らしい!」「それで?」と、相手の話に興味津々だ。ダ行は「だめだ!」「だから?」「でもさ~」「どうせ」と、否定して説教したがる挑戦的態度だ。「1時間の説教より2分の傾聴です」と言う。
また、「怒り」は愛を失う感情だと指摘。更生プログラムでは、怒りや不安を消すプラスの考え方を伝えている。
「三流の生き方は不平不満。二流は我慢。一流は感謝です。イエス様は、感謝しなさいと言っておられる。起きた事柄をどのように解釈するか。幸不幸は自分の解釈が作っていくのです。プラスの解釈を自分の引き出しに入れておくといいです」
DV加害者に勧めているのが、プラスの考え方。「まあ、いいか」と受容できれば、些細(ささい)なことで怒らなくなる。多くの人が怒ってけんかをするきっかけは「些細なこと」と共通しているという。例えば、「トンカツにソースがかかっていない! 俺を大切にしていない」と、逆上するように。
想定外を作らない「何でもあり」の考え方や、リフレーミングという「良かった探し」は、大きな効果がある。一日の中で「良かった」と思えることを数えるだけで、人生が変わる。更生プログラムは思考を変えるプログラムなのだ。
「うちに来られる多くの方はクリスチャンではありません。私は神様を直接伝えることはできませんが、“サムシング・グレート”の存在を語ることはできます。その存在は、心配から『大丈夫』という信頼へと変化をもたらします」
愛を伝える三つの質問が、「どうしたの?」「どうしたいの?」「どうしたらいい?」。これらが夫婦、親子、友人知人に寄り添う声掛けだ。
栗原さんはアメリカの心理学者アルバート・メラビアンの法則を挙げて「良い環境作り」の55%は表情、38%が口調であると説いた。さらに「『違って当たり前』が愛の証し」だとして、助け合い、補い合うために違いを楽しもうと呼びかけた。
グループディスカッションの後、「今すぐできることだから実践したい」「教会でも学べたらいいと思う」など、多くの感想が寄せられた。【藤原とみこ】