「キリスト教は西洋のものか」。全アジア規模で開かれた宣教会議「アジア2021」(10月11~14日開催、10月24日号で一部既出)では、西洋からアジアへという空間的な潮流(2、4日目)、「次世代」という世代的、時間的な潮流(3日目)について多様な報告があった。今回はアジアの潮流を中心に紹介する。【高橋良知】

 

 重心は移ったが西洋の影響は強い

 

「キリスト教の中心が、欧米からそれ以外の地域、多数派地域(アフリカ、アジア、ラテンアメリカ、中東・北アフリカ)に移っているが、いまだにキリスト教は西洋の宗教と思われており、神学校教育や教会の在り方も西洋のやり方に基づいているという現実について話し合われた。西洋への前向きな評価、反省が謙虚に語られた」と参加者の西岡義行さん(東京聖書学院教頭兼教務主任)は振り返る。

会議2日目「2021年におけるアジア教会の現状」では、世界キリスト教百科事典の編さんに携わったトッド・ジョンソンさん(ゴードン・コンウェル神学校世界キリスト教研究センター共同代表)が、豊富なデータをもとに西、中央、南、東、東南のアジア地域ごとにキリスト教の特徴と課題を提示した。キリスト教はそもそもアジア発祥であり、4世紀のニカイア公会議の時点では、アジア、アフリカの指導者が多数派だったという歴史的経緯も確認した。現代のアジアのキリスト教による貢献として、①21世紀の多元主義的文脈において活躍するモデル、②他の信仰を持つ人との対話、③福音に対するアクセスが乏しい人たちへの最前線の宣教、④深いレベルでキリスト教の文脈化に苦闘、⑤移住者の役割、の五つを挙げた。

これに対して異文化間研究が専門のスティーブ・サンチョル・ムンさん(カリス研究所創立者兼CEO)は、民主化の弱体化、信仰の自由の脅かしなど、苦難の中にいるクリスチャンの現実に目を向けた。「インドなどの大胆な福音の文脈化と同時に、混合主義を警戒した東アジアの慎重さも重要」と述べた。さらに「文脈化の先が大事。閉鎖性や偏狭を克服する世界化が必要」と語った。

4日目「教会の重心のシフト:欧米から多数派地域へ」では、マレーシアのフワ・ユンさん(アジア2021/22プログラム委員長、アジアローザンヌ委員長)が語った。西洋キリスト教がアジアにもたらした六つの課題(①世俗化や理性主義、②多数派地域での成長と超自然的なものの回復、③経営学的宣教と聖霊の導き、④浅い弟子訓練と名目的なクリスチャン、⑤神学教育、⑥キリストの福音への確信)を挙げた。

これに対して西洋の立場からリンゼイ・ブラウンさん(国際福音主義学生連盟総主事)が応答。初代教会の時代では、感染病への対応などで、言葉と行いによる宣教が実践されていたことを指摘した。宗教改革では、福音の本質が確認され、文化の改革、宣教のビジョンが確認されたとその意義を述べた。

 

 文脈化を地域で実践
対話から謙遜に学ぶ

 

参加者のバックホルツ美穂さん(東京ライフチャーチ共同主任牧師)は「アジアに多くのクリスチャンがいることを改めて知り、世界宣教を担う大きな励ましを受けた。一方東アジアと東南アジアは2050年までにクリスチャンが6%増加すると予想される中で、日本がどれだけ貢献できるかあせりも感じた」と話す。「ヒントになるのは一日目に語られた協力と一致。コラボレーションで働きが前進できないか」と言う。

(さらに、アジアの中の日本を意識した発言が続きます。2021年10月31日号掲載記事)