オリジナルの賛美歌、海外の賛美歌の翻訳、替え歌による賛美歌など、ユニークな歌を紹介し実際に歌ってみて豊かさを分かち合うグループがある。新しい賛美歌を紹介し合うネットワーク「これもさんびかネットワーク(以下「これさん」)」だ。最初に始めた、代表の川上盾さん(日基教団・前橋教会牧師)に話を聞いた。
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「これさん」の賛美は、いわゆる賛美歌、ワーシップソングとは一味違う。川上さんは「サブカルチャー的な、隙間を埋めるような歌」と表現する。例えば、ユーモア・遊び心のあるような歌、現代の状況下で歌えるようなメッセージを持つ歌、従来の賛美歌と異なる視点時代・社会を歌った歌、などだ。

川上盾さん

現在、100人ほどがメンバーにおり、毎年、主に夏に合宿を行って自作の賛美を持ち寄り、40、50曲ほどの曲を一曲ずつ歌い、感想を述べ合い、20曲ほど新しい歌集に載せるために選曲する。Aさんは作詞でBさんは作曲といった合作もあったり、合宿中にアイデアがひらめいて歌が生まれることもある。このような活動を通し、これまで歌集17集、300以上の「これさん」が誕生した。
「始まりは、2004年、僕と池上信也さん(現:日基教団・犀川教会牧師)との話し合いから」と川上さんは言う。「手紙のやり取りの中で、お互いに新しい賛美を作っているのが分かり、『何か一緒にできたらいいね』と。新しい賛美歌を作る人は全国にいるだろうから、そういう人たちに呼びかけました」
翌年、兵庫県の六甲山で第1回の合宿を開催。15人ほどが30~40曲を持ち寄り、みんなで一緒に歌えるという観点で選別し、20曲ほどを選曲した。

2020年度応募賛美歌を歌う会の様子

歌集はいろいろなところに配っているが、「販売しているわけではない」「曲はすべて著作権フリー」とも語る。「同人誌に近いです。300曲を全部歌っているわけでもない。ただ『これさん』を歌ってほしいというオファーがあれば歌う。その中から、「主につくられたわたし」(平良愛香作詞作曲)など、いろいろな教会で歌われるようになった賛美もあります」
コンセプトを見ると興味深い。例えば▽聖書の人物を美化しない、▽よく知られた個所なのに賛美歌になっていない、▽聖書にこんなことも書いてるの? という疑問を歌うもの、など。その理由についてこう語る。「『これさん』は、『こういう賛美がないよね』『信仰生活においてこんな賛美があればいいのに』『こんな賛美があってもいいのでは』という思いから始まっています。隙間産業ですね。そういうところに見合った歌を作っていくということです」
時代、社会を歌うこともコンセプトの一つだ。東日本大震災の後は、そのことを意識した歌がたくさんできたと言う。「釜石の被災地の牧師の詞に、曲が五つついた。同じ歌詞でメロディーが五つありますが、全部歌集に載せています。今回のコロナ状況ではあんまり新しい歌が生まれてこないですね」
昨年と今年はコロナのため合宿は中止。来年はぜひ開催したいと願っている。「60歳のオッサンが引っ張っていくのには限界がある。今後は若い人、新しい感性を持った人に入ってもらって、ラップとか今までにない新しいジャンルの歌をどんどん作ってほしい」と若者に期待した。
詳細はウェブサイトURL http://kore3net.comで。

クリスチャン新聞web版掲載記事)