「宣教戦略策定支援地図システム」開発 教会未設置情報1キロごとに地図で可視化
青いバーは教会所在地と規模を表す。赤いバーは無牧教会。緑のタイルにカーソルを合わせると人口など地域情報が表れる
「歩いて通える教会」必要地域の特定に
どこに教会が必要か。その特定の一助となる情報を多角的に分析できる宣教戦略策定支援マップシステム「マップ・ディビッド」(以下MD)を国際教育開発合同会社ITチーム(代表社員福井誠牧師=バプ教会連合・玉川キリスト教会牧師)が開発した。そのシステムの内容、狙いとは何か。
福井牧師
「大きく」より「多く」
福井牧師は二子玉川聖書学院、パスターズスクールを運営する国際教育開発合同会社代表として、いのちのことば社の教会情報をもとにMDを開発した。「システム名は、宣教がなかなか進まない日本の宣教事情を強敵ゴリアテに見立て、かつて彼を倒したディビッドにもじった」と言う。以下その要点を福井牧師が述べる。
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これからの日本の宣教を考えるにあたり、「より大きな教会ではなく、より多くの教会を設立していく」ことが重要である。果たして無牧教会がますます増え、献身者不足が嘆かれる昨今において、それが現実的な発想なのかと思われる向きもあるが、逆にそうであればこそ、実際には、より丁寧に牧会がなされる小規模教会(40人程度)が、歩いて通える距離に建て上げられ、信徒が養われていくことが、重要である。
というのも、教会が生まれるのみならず、そこに集う一人ひとりのクリスチャンが成長しない限り、実は残っていかないからである。いわば、教会を地域に根付かせていかない宣教は、その地に残るクリスチャンを生み出さない。それを、教職不足を補うというのではなく、これまで牧師と信徒の共同という古くから言われてきて、今なおその豊かな実を結んでいない、宣教・牧会のあり方を変革することと共に、真剣に取り組まれなければならない。
MDは、地図上に日本の諸教会および、世界の日本語教会の位置、規模、信徒数、牧師の有無の情報を可視的に提供する。実はそればかりではない。
布教率、教会規模、無牧も一目瞭然
これまで、日本の教会の位置情報を示すマップシステムは既に幾種類か作られてきているが、これらは、地図上に教会の所在を確認し、検索ができる程度のものであり、分析的なものではなかった。
MDはさらに、日本の人口密度情報を重ね合わせて表示することが可能であり、その教会がターゲットエリアとするところでの大まかな布教率を考察できるようになっている。たとえばデフォルトで、グレースケールとなっており、立ち並ぶバーで教会の位置と規模情報がわかる。また色分けで、青は教職のいる教会、赤は教職のいない、いわば無牧教会も一目でわかるようになっている。
今後は、兼牧の教会を黄色にする修整を加えることで、日本の教会の教職不足がさらにはっきりとわかると思われる。
足元に宣教強化必 要エリアがある
背景のグレースケールに現れるグリーンのスポットは、人口密度(政府統計のポータルサイト人口統計ラボ国勢調査情報)を示す。ターゲットエリアを拡大し、グリーンのタイルにカーソルを合わせてみると、その範囲の人口がわかる。タイルは一辺が 1キロメートルで、つまり歩いて通える距離に、どれくらいの人口があるかがわかる。大切なのは、その数の大きさに気づくことだ。
「宣教1%の壁を破る」とはよく言われてきたことだが、実に、足元の1キロメートル四方にいる人たちを、その教会がどれだけ、救いへと獲得できているかを計算してみると、1%を超える教会はまずないと言ってよい。実は、歩いて通える距離にいる人々が、教会にほとんど獲得されていないとしたら、まずはそこから、真剣に取り組まなければならないのではないか。
サテライト(衛星画像)モードに変えると、地形の起伏、どのような建物があり、川、幹線道路で宣教エリアが、仕切られているのかをよく理解することができる。たとえば神奈川県平塚方面で拡大して、サテライトモードで見てみると、教会の所在に偏りがあり、歩いて通える距離に、教会がないエリアがあることに気づかされる。家庭集会なり、小集会なりの拠点を配置し、宣教エリアを強化しなくては、この地域に住む子どもたちが、福音に触れる機会は極めて少ないと言える。
漠然としたチラシ配布、伝道会でなく
大切なのは、漠然とチラシを配布したり、伝道会を計画したりせず、エリアを特定し、そこにどのような教会があるかを踏まえて、どのような人々がいるかを考察することだ。必要とあらば、近隣の教会との協力関係でいかに宣教を進めていくかを考えたい。
今後、2022年のデータを追加入力し(現在は 18年情報)、コロナ前とコロナ後でどのように日本の宣教事情が変化したかを視覚化したい。さらに世界各国の日本語教会の所在、距離関係も確認できるようにする。
単純に教会未設置地域に、新たな教会をという掛け声のもと宣教を進める時代は過去のもので、もはや科学的な検証の上で、必要のあるところに、必要な宣教拠点を、しかも、歩いて行ける距離に、教会をつなげ、交番の数ほどに、牧師と信徒が一体になって教会を設置していく、そのための戦略策定支援マップとして、活用されていくことが期待される。
問い合わせ先はoffice@thousandtimesbless.com
二子玉川聖書学院では、試作品の段階であるが、本システムを使って、宣教ターゲットの決め方などを共に考える「宣教戦略分析講座」(http://www.futakotamagawa.myserver.ne.jp/wordpress/?p=750)を開講している(動画あり)。