ウクライナの船越真人宣教師から現地の情報が6月12日に編集部あて寄せられた。一部編集して掲載する。

◇ ◇ ◇ ◇

ヘルソンでは厳しい状況が続いています。
今回のダムの決壊がなぜ起こったのか、だれが引き起こしたのか、ウクライナとロシアの間で非難合戦が続けられており、まだ確定的なことは言えません。
ただ、ロシアに関して忘れてはならない3つの事実があります。

(1)爆発・決壊が起こったときにノヴァ・カホフカ水力発電所とダムを実効支配していたのはロシア軍です。そこで6月5-6日に何があったのか、ロシアは速やかに証拠を提示して国際社会からの中立的な調査団を招き入れるべきなのに、それをしません。ロシアは一方的にウクライナを非難するだけで、実際には事実を調べようがない状態を作り出し、その状態を維持しています。

(2)ダム決壊の結果、もっとも一般市民への被害が大きかったのはドニプロ側東岸、つまりロシアが実効支配している地域です。しかし、そこに住んでいるのは「占領下にあるウクライナ人たち」です。報道では10名くらいの死亡が確認されている、とありますが、実際にその地域からウクライナ側に避難できた人々の証言によると、膨大の数の市民が溺死していると言われています(亡くなったそれらの方々は「占領下のウクライナ人たち」です)。その状態に対して、ロシア側は本気で救助活動を行っていないと言われています。つまり水害に苦しんでいる占領下のウクライナ人たちは放置され見捨てられているというのです。そして、そのような報告が本当なのかどうかも(西側のメディアは自由に入れませんから)確かめようがありません。あとでロシアには何とでも言える状態なのです。これがロシアに占領されたウクライナ領を奪還しない場合にそこにいるウクライナ人に起こってしまうことの典型的な例です。

(3)ドニプロ川西側の洪水状態の中から脱出しようとしている市民やその市民を救助しようとしている人々にロシア軍の砲撃が続けられています。これは本当にありえない戦争犯罪です。

さらに付け加えるなら、今回の洪水に関して、一刻も早く調査を始めなければならない事柄(実際の死者の数の調査、流された地雷の処理、農地の被害状況、ザポリージャ原発の冷却に必要な水位に関してなど)がたくさんあります。しかし、それらを一切不可能としているのは砲撃を続けているロシア軍です。早くロシア軍が撤退しなければ、これらの問題は一向に解決しません。

一日も早くロシア軍が占領地から撤退し、ウクライナとウクライナに協力してくださる国際社会がこのボロボロになったウクライナの地を回復するプロセスを始めることができるように心から願っています。

船越真人・美貴