橋下徹・大阪市長(日本維新の会共同代表)の「従軍慰安婦は必要だった」発言に対し、国内外で非難や抗議の声が高まる中、1886年創設以来、公娼制度廃止や買春防止法制定に力を注ぐなどキリスト教精神に基づき女性の人権を守る活動をしてきた(財)日本キリスト教矯風会(以下・矯風会)は、「慰安婦」問題を研究する歴史学者の林博史氏(舘と医学院大学教授、日本の戦争責任資料センター事務局長)を招き、講演会「日本軍『慰安婦』問題と女性の人権」を7月6日、東京・新宿区百人町の同所で開いた。

 林氏は、日本の慰安婦問題で重要な時期が、軍が南京に入る1937年12月から38年初めにかけてだと指摘する。「南京に入る頃から、日本軍はあちこちに慰安所をつくり始め、業者を使って女性を中国に送ろうとした。だが警察文書によると、その行為は刑法226条で国外移送人身売買罪にあたるため、取り締まることになった。だが、業者は軍からの依頼でしていると証明書を出す。警察はどう対処すればよいか困る。38年2月、内務省警保局は『現地に於ける実情に鑑みるときには蓋し必要已むを得ざるもの』とし、『黙認』の通達を出した。犯罪行為と知りながら軍と警察が一体となって黙認した」(中田 朗)