[CSD]2004年4月11日《ヘッドライン》

[CSD]2004年4月11日《ヘッドライン》
 = 1面 =
◎<イースターメッセージ>「神の然り」を受けた人 記・川谷 威郎
★「苦しみに耐え抜いた人」を伝えたかった——映画「パッション」監督メル・ギブソン語る
★第7回ゴスペルCCM大賞、コーラスグループ「リラ」に決まる
★北京に新設教会——会見で模型も公開
★<落穂抄>人類にとって唯一の希望

 = 2 面 =
★桜の名所、休息は教会でどうぞ——インマヌエル・中目黒キリスト教会
◎<緊急連載・心の監視はどこまで来たか>[5]人格解体する抑圧体験
★テンプルトン賞に反アパルトヘイトのF・R・エリス氏
★<論説>牧師の退任・引退——交代できない「献身者」事情に理解を 記・山口 譲
★<今週の本棚>『伝道する教会の形成』近藤勝彦著(教文館、2,100円) 評・藤野純一
★<今週の本棚>『聖徒たちを整えよ!』藤本光悦著(弟子訓練神学校、2,100円)
★<今週の本棚>『私にとって復活とは』林 あまり著(日本キリスト教団出版局、2,100円)
<情報クリップ>催し情報ほか

 = 3 面 =
★神様の愛を伝えたい——難病ALSとの共病日記を書き続ける西村 隆さん

 = 4 面 =
★第20回ペンライト賞発表(奨励賞1作品、佳作5作品)
★<新連載>笑顔の力 作・田島直秀(佳作受賞作品)

 = 5 面 =
★戦場に生まれた友愛の源泉は?——映画「クワイ川収容所の奇跡」の史実
★実を結ぶ心の癒すと和解——英国人元捕虜らを日本へ招待
★戦時中、敵艦乗組員を救助——海軍中尉どうし生涯のともに

 = 6 面 読書特集=
★<書評>『ナザレのイエスは神の子か』リー・ストロベル著(いのちのことば社、2,100円)
★<書評>『ストーミー』ストーミー・オマーティアン著(いのちのことば社、1,575円)
★<書評>『内野一人百首』清水 氾著(本の泉社、2,100円)
★<書評>『フレッシュ・パワー』ジム・シンバラ、ディーン・メリル共著(新生宣教団、2,400円)
★<書評>『妥協はしない』C・H・スポルジョン著(いのちのことば社、1,680円)

 = 7 面 =
★森に包まれ神を黙想する——ディアコニアセンター・八ヶ岳中央高原キリスト教会

 = 8 面 地域宣教特集:神戸=
★震災が生んだ新たな宣教協力——神戸宣教祈祷会の牧師らに聞く
★西日本の伝道拠点復活——神戸バイブル・ハウス
★諸教会から「祈りのリクエスト」

 = 9 面 特集・南米から宣教の使者=
★サンフレッチェ広島・サンパイオ選手——J1復帰!それは神の後押しによって
★FC東京・ケリー選手——最高のタイトルは神様の子ども

 = 10 面 イースタースペシャル=
◎ホームレスの人たちと始めた養鶏——神奈川・早川こっこ牧場
★人生のどん底で出会ったけん玉——けん玉日本一5回の前田隆宏さん
★ひよこで難民支援——旧ユーゴの荒廃に心動かされた牧師ら支援
★イースターのアイデアはこの1冊——「イースターの本」

 = 11 面 =
★中嶋プロを迎えゴルフ大会——下関キリスト聖書教会が主催
★建学の精神に立ちチャペル2つ——全館バリアフリーになった玉川聖学院
★<ひと>戦災で左目を失った杉山千佐子さん——民間人のため「戦時災害援護法」を求めた半生
★下関キリスト教書店オープン(Tel.0832-67-1884)
★米国:米国の教会員は肥満体?——礼拝熱心な信徒は朝食にドーナツ
★<召天>賀川純基氏(財団法人雲柱社名誉理事長、81歳)

 = 12 面 家族のページ=
★「書くこと」に一家で全力投球——ことばと向き合う17歳・成沢未来さん
★<ちいろばの心>[8]復活はまさに自分のことだった 記・榎本保郎/榎本 恵
★<カウンセリングカフェ>[12]カップルの問題と勘違い  記・丸屋 真也
★<家族診断>[18]主の与えられる学校は最高です 記・碓井 真史

<イースターメッセージ>「神の然り」を受けた人 記・川谷 威郎0404110101

パウロの復活信仰   コリントの信徒への手紙?の15章で復活信仰について論じてきたパウロは、「わたしたちの主イエス・キリストによってわたしたちに勝利を賜る神に、感謝しよう」(57節)と述べて結びの言葉を始める。神学者バルトはコリント書の注解を書くに当たり、復活に重点を置くため15章から始め、書名も『死人の甦り』として刊行した。イエス・キリストの復活はキリスト教を支える唯一の基礎と解釈したからである。
 結びの言葉は58節へと続く、「わたしの愛する兄弟たち、こういうわけですから、動かされないようにしっかり立ち、主の業に常に励みなさい。主に結ばれているならば自分たちの苦労が決して無駄にならないことを、あなたがたは知っているはずです」。このように言い切ることができたパウロの信仰の確かさの内実である復活信仰が、私たちにとっても深い意味をもっていることを悟りたい。その上私たちもこの境地に到達することができると思える時、暗い気持ちに陥っていた自分が明るい気持ちへと転換していくだけでなく、さらに神と人に仕えていこうとする積極的な歩みへと進むことができる。 三浦綾子と復活  1963年正月、朝日新聞社が公募した新聞連載小説に応募し、1年かけて書き上げた「氷点」が翌年7月に1等入選し、作家として活動を始めた三浦綾子さんは、52年受洗している。彼女を導いた前川、西村両氏が本物のキリスト者であったことの深い影響をうけた綾子さんは本当に真摯なキリスト者で、命がけで証しのために生きた。おざなりの言葉は一切使わなかった。他者を深く思いやった。教会のために尽くした。これらを貫いていたのは、復活信仰だった。
骨を拾ってくださる主  
コロサイ3章1節~4節は、第2の主要部分の導入部を形成している。実践訓に当てられるが、信仰と並び、これに続くところの第2の要素ではなく、むしろ信仰を貫徹することにほかならない。
 2章20節では相手を論駁するため「キリストと共に死ぬ」ということが手掛りとなったが、キリストの救いを受けた人々の生活の規範を積極的に述べるため、「キリストと共に復活させられた」と言うことから論じ始めている。キリスト者はこの世的にはキリストと共に死んだ者であって、悪魔的な力から自由にされている。3節で「あなたがたは死んだのであって、あなたがたの命は、キリストと共に神の内に隠されている」と記されているとおりである。
 これらを背景としてすでに1節で「上にあるものを求めなさい」と勧めている。上にあるものとは、続く言葉が示すように、神の右に座して支配されるキリストのご意思である。
 主イエスは「だから、明日のことまで思い悩むな。…その日の苦労は、その日だけで十分である」(マタイ6章34節)と教えられた。賜物を惜しみなく出し切って、前向きの姿勢で生きることを勧める励ましの言葉である。それはこれからの歩みを精一杯生き、失敗があったとしても最後には復活の主が骨を拾ってくださる、と信じえた時、結果の評価は神に委ね、あらゆることや人に対し神の愛と真実に基づいてかかわっていく(まさに「上にあるものを求めて歩む」)純粋なあり方ができる。
 復活信仰に生きることは、このイエスご自身の言葉に支えられ、パウロの言葉に励まされて成り立っている。キリスト者は「赦された罪びと」であるから、根本的な罪の自覚を保持しつつ、人生を肯定的に生きることができる。「神の然り」を受けた者にふさわしく生きるからである。
 最近起こった自動回転ドアの事故の犠牲者の葬儀で、仲間の園児たちが今流行の歌「世界に一つだけの花」を歌ったと報じられた。評論家の寺島実郎氏はこの歌に感動しないと言い、この歌がもたらす安易な自己肯定に問題を感じている。「神の然り」はすべてを手放しで良しとするような肯定ではない。十字架の死を経た厳しさと復活の希望に生きる積極性を持つ。 (聖書の引用は新共同訳によりました)

<緊急連載・心の監視はどこまで来たか>[5]人格解体する抑圧体験0404110202

 「まず話さなければならないことは『君が代』強制による音楽教員の体と心の苦しみです。友人の小学校の音楽教員が今、胃から出血して入院中です。救急車で入院した病院で、胃の中の血柱の写真を見せられたそうです。よく映画などで刀で首を斬られて血がぴゅうっと噴き出す、そのように動脈から血が吹き出ている、と医者に言われたそうです。文字通り『血を吐く思い』という苦しみをなんとか言葉にして伝えなければならないと思って、ここに来ました。友人はキリスト者であり、『君が代』伴奏という絶対にできないことを強制される苦しみの中で、このままでは殺されてしまうと感じます」
 都立校教員228人が国歌斉唱義務がないことの確認などを求めた訴訟の口頭弁論で3月22日、意見陳述した都立高校音楽教員の気迫に満席の法廷は息をのんだ。
 入院したのは国立市立小学校の音楽教員、佐藤美和子さん。祖父の代からの牧師家庭に育ち、「かつて天皇を神とする礼賛に用いられた『君が代』の演奏をすることは、信仰上の強い抵抗があり、内心の自由、信教の自由を著しく侵される」と卒業式・入学式でのピアノ伴奏を断ってきた。
 3月4日、現任校より通勤が片道40分遠い杉並区に異動の内示があった。土曜や早朝に課外活動の指導を求められ、両親を介護する佐藤さんには勤務が困難な学校だ。事情を述べて不服申し立てをしたが、10日には杉並区教委から「内示の結果は変わらない」と伝えられた。しかも「キリスト者だという理由で『君が代』伴奏を拒否しているそうだが、入学式には職務命令で弾いてもらう」と拒めば処分することを告げた。教委間で本人の信仰・信条まで伝えられていた。露骨な報復人事、強制異動である。内示前後から胃の痛みを覚え、3月12日、胃動脈出血が分かり緊急入院した。
 著書『させられる教育―思考途絶する教師たち―』(岩波書店)で日の丸・君が代に傷つく教師たちの問題を書いた京都女子大学の野田正彰教授(比較文化精神医学)は、強制されることで苦しみ、その苦しみが分かってもらえないもどかしさを感じる教師らの状態を「人間の人格を解体するような抑圧体験」と表現する。「下痢や便秘を繰り返したり、胃かいようになる『君が代神経症』の教師がたくさんいます。人がいやだと言っていることを、これくらいのことが何ですかと強制する。周囲が暴力に対して鈍感になっている。これが教育全体を覆っている状況です」
 自分らしく生きたいという欲求が許されない。それは教師ばかりでなく、子どもたちをも抑圧する。「いい子を装って生きなければならない現代の病理が行き着くところまできている。その帰結が少年の残虐事件などに表れています」
 3月31日、都教委は「君が代」斉唱時に起立しなかったなどとして171人を戒告処分とし、5人の嘱託職員の更新を取り消した。これほど素早く、校名を挙げての大量処分は異例のこと。教師への強制のかたちで牙をむいた「心の監視」体制は、すでに子どもたちの心にも押し寄せてきている。
 「予防訴訟」の弁護人は言う。「これは戦後最大の民主主義の危機です」    【根田祥一】

ホームレスの人たちと始めた養鶏−−神奈川・早川こっこ牧場0404111001

 ホームレス生活体験者を追いながら、そこに働く神のみわざを浮き彫りにした本紙の連載「青天幕に射した光」(02年)で紹介した「養鶏を始めたホームレスの人たち」を覚えているだろうか。神奈川県小田原市で路上生活者たちに給食伝道をしている杉山慶子さん(62)=グローリー・マラナタチャーチ代表=は、02年に住所不定などで仕事に就けないホームレスの人たちや障がいをもった人たちと一緒に養鶏を始めた。名前は「グローリー・マラナタチャーチ早川こっこ牧場」(略「こっこ牧場」)。現在、この働きは得意先に卵を発送したり、戸別訪問で卵の販売をするなどして、少しずつ軌道に乗ってきているという。
 「こっこ牧場」は、小田原市早川の、みかん畑が並ぶなだらかな斜面にある。前回訪れた時は鶏舎が2つ、ニワトリが180羽だったが、現在は鶏舎が5つで、ニワトリもひよこを合わせて約600羽に増えた。その分、ニワトリの鳴き声も賑やかになり、どの鶏舎からも「コッコッコッコッ」と元気な鳴き声が聞こえてくる。
 ニワトリは平飼いでのびのびと育ち、酵素入りのえさと緑の草をふんだんに食べる。そのニワトリが産む卵は黄身、白身に弾力があり、栄養が豊富だ。
 今回の訪問では、母と3人の妹とともに教会に助けを求め、逃げ込んできた藤田秀格さん、借金苦からホームレス状態になり、関東一円を渡り歩いた坂本さんら、懐かしい顔に出会った。
 「毎日、350個から400個は産むんです」と笑顔で語る軽い知的障がいをもつ藤田さんは、今ではニワトリの世話から、採卵、数え、パッキングする仕事まで、養鶏の仕事を一通りこなす。「若いのに、一番まじめに働いてくれる」と杉山さんの信用は大きい。
 そのほかブルーシートから通う所健一さん、教会に寝泊まりする緒方幸男さん、菊沢富雄さんと新しい顔ぶれが、藤田さんと共にニワトリの世話をしていた。朝7時から5時までのハードな仕事だが、みな、仕事ができる充実感にあふれている様子を見ることができた。
 教会から仕事に通う坂本さんは、養鶏は合間を見て手伝うのみだが、給料の一部をその資金に充てている。「いろいろあったんです。杉山さんから『出ていって欲しい』と言われたこともありました。最近やっと落ち着きましたね」。今では、教会の顔になった。
 一見して順調そうに見える養鶏。しかし、「まだまだ採算が取れるまでにいっていない。給料もまだ払えない状態です」。「えさ代が高いので、卵を一生懸命売っても支払いで困ります。援助はどこからもないので、自転車操業でやっています」。鳥インフルエンザの影響もあり、「卵の売り上げも、少し落ちました」。さらに信頼していたホームレスの人が問題を起こして突然いなくなったりするなど、今も悩みの種は尽きない。
 杉山さんは現在「こっこ牧場」をNPO法人にする準備を進めている。NPO法人になることで、この働きを路上生活者支援事業、職業能力開発事業として確立していきたいためだ。手続きは全部、元ホームレス生活者で、坂本さんと同様、教会から仕事に通う芳賀敏雄さんがした。5月中には「特定非営利活動法人こっこ牧場」として認められる。
 「ホームレスの人たちは、仕事も、住所も、お金も、保証人もありません。立ち上がろうにも立ち上がれません。でも神様は魂だけでなく、そのような環境からも救ってくださる方だと信じ、ホームレス生活者の自立支援のため養鶏をし、少しずつ形になってきました。食費、住まいなど受け入れ体制はまだまだ不十分ですが、今後は同じ信仰をもったクリスチャンのホームレスの人たちと一緒に、この働きをさらに広げていきたい」と杉山さんの夢は大きい。
 「グローリー・マラナタチャーチ早川こっこ牧場」の問い合わせは、Tel&FAX:0465・32・3101まで。