[CSD]2010年1月31日号《ヘッドライン》

[CSD]2010年1月31日号《ヘッドライン》

 = 1面 ニュース=
◎砂川訴訟で最高裁「違憲」判断——神社への市有地無償提供に政教分離違反
★桜井美馬選手、バンクーバー冬季オリンピックへ

 = 2 面 ニュース =
◎ハイチ大地震:WV、孤児への支援を最優先——救援団体現地スタッフも被災
◎ハイチ大地震:FH、現地代表らも安否不明——各NGO一斉に募金窓口を開設
★<逝去>岸田 馨氏(シオン・キリスト教団初代理事長、74歳)
★<落ち穂>サムライ・クリスチャン津田 仙

 = 3 面 教界ニュース =
★<ネパール宣教の夜明け>[2]クリシナという神様なら知ってるよ 記・鳥羽季義
★ハイチ大地震:生活基盤ない国 長期支援が必要——元ハイチ医療宣教の根元律子さんも祈りを要請
★<オピニオン>政教分離原則確立に向けた砂川「空知太神社」訴訟大法廷違憲判決 記・小池 健治

 = 4 面 ビジネスパーソン =
★岸本 茂雄さん[中](伊藤忠総務サービス[株]取締役)——妻の信仰を見て、救われていない自分に気づく
★<モノトーンからの脱出>[4]ワールドカフェを体験しよう 記・小川 巧記

 = 5 面 牧会/神学/社会 =
★真の権威とキリスト者の自由<前編>
★<精神障害と教会>[67]自分の助け方(1)「何とかしたい」の思いが希望  記・向谷地 生良

 = 6・7 面 特集/プロジェクト横浜 =
★横浜に宣教拠点の建設計画始動——JECA・本郷台キリスト教会
★「笑顔あふれる街」の第一歩に——教育、福祉、スポーツで地域貢献

 = 8 面 法律特集=
★不法滞在者が人権の外に置かれないために——大島有紀子弁護士に聞く
★難民認定を待つ人、支える人——

 = 9 面 情報=
★<情報クリップ>催し情報・放送伝道ハイライトほか
★EVENT:「TRIO Concert」クラシックの名曲で彩る一夜(2月17日午後7時30分~、2,500円+1ドリンク代)
★BOOK:『100戦無敗の不動産投資術』沢田富美子著(角川書店、1,470円税込)
★REVIEW:『キリスト教倫理学』近藤勝彦著(教文館、4,830円税込)評・稲垣久和

 = 10 面 関西だより =
★15年節目に未来を展望——1・17阪神大震災メモリアル集会一区切り
★「命かけ友愛説いた賀川に続く」——献身100年神戸プロジェクト記念式典で決意
★奈良・東大寺でゴスペル——今夏 JAYE公山さんら出演決定

 = 11 面 クリスチャンライフ =
★ハンセン病隔離から100年を超えて[3]——隠れて生きる「凍った心」、溶かした「温かな心」
★米国:J・ドブソン氏が創設団体を離れる——3月から新団体起ち上げて新番組開始へ

 = 12 面 ひと=
◎神に委ねる強さでバンクーバー五輪へ!——桜井美馬さん(ショートトラックスピードスケート日本代表)



◎砂川訴訟で最高裁「違憲」判断−−神社への市有地無償提供に政教分離違反=1001310101

 北海道砂川市が市有地を2つの神社に無償提供していることが、憲法の「政教分離原則」に反するかどうかが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁大法廷(裁判長・竹崎博允長官)は、1月20日、市有地が特定の宗教施設に無償提供されていることは「違憲」との判断を示した。だが、違憲状態の解消のために神社を撤去することは、「氏子に相当する地域住民の集団」の信教の自由を侵すとして、違憲状態の解消のためにほかの手段があるとし、高裁に差し戻した。

 「政教分離の原則」をめぐって最高裁が「違憲」判断を示したのは、1997年の「愛媛県玉串料訴訟」以来のこと。
 今回の「砂川政教分離訴訟」は、砂川市在住の谷内榮さん(79)=日本キリスト教会滝川教会員=らが、市内の空知太神社について市有地が無償提供されていることは、憲法20条(信教の自由の保障)と89条(公の財産の宗教上の組織・団体への利用禁止)を侵すとして、市長を相手取り、市の「財産管理を怠る事実の違法確認」を求めて04年3月に提訴した。争点の空知太神社は、空知太連合町内会が所有する空知太会館と一体で、市有地に併設。毎年の神事には砂川神社の宮司や氏子らばかりか、提訴以前には、市長、前市長、市職員も参加していた。
 一、二審とも空知太神社については違憲判決が出され、市側が最高裁に上告した。
 大法廷多数意見は「政教分離の原則」に反するかを検討する上で、これまで用いてきた「目的・効果基準」は当てはまらないとして、「無償提供の態様、一般人の評価、諸般の事情を考慮、社会通念」に照らして総合的に判断した。
 「砂川市が特定の宗教に対して特定の便益を提供し、援助していると評価されてもやむをえない」として、憲法89条、20条第1項に反すると判示。「町内会館である建物に市有地を無償で提供する行為は、特定の宗教に対する特別の便宜の提供に当たらない」という市長側の意見を退けた。ただし、「違憲状態を解消するためには、本件訴訟において住民らが求めている神社施設の撤去及び土地明渡請求以外にも適切な手段があり得る」として、高裁に審理を尽くすよう差し戻した。全国に数千、数万あるとも言われる、公有地に建つ神社、仏閣などにも、この判決により大きな影響があるものと注目される。
 一方、同市内の富平神社に関しては、同神社のある市有地を町内会に無償譲与したことが「政教分離原則」に反するかが争点。一・二審に続き最高裁も合憲と判断し、棄却した。富平神社は1920年代に建てられ、地元小学校の教員住宅建設のために、神社を残したまま敷地が当時の富平町に寄付された経緯がある。教員住宅が取り壊された後の76年、地元住民は市に土地の返還を要請したが、市は「普通財産」であるとして断った。だが後になって、町内会に無償譲与した。
 判決は、「富平神社の神社施設は、明らかに神道の神社施設に当たるものであり、そこで行われる諸行事も宗教的行事と認めるほかない」としつつ、町内会への土地の無償譲与は「砂川市と富平神社とのかかわり合いを是正解消する手段として相当性を欠くとはいえない」と判示。社会通念に照らし、(氏子に相当する地域住民の集団の)「信教の自由の保障の確保という制度の根本目的との関係で相当とされる限度を超えるかかわり合いをもたらすとはいえない」とした。
 「砂川政教分離訴訟」の原告代表、谷内さんは判決後、「2つの裁判で合憲と違憲があり、しかも空知太は、いわば条件付き。正直戸惑っている」と第一印象を語った。
 原告弁護団は「富平神社への譲与を『氏子集団』としているが、これが地縁団体すなわち町内会である点について触れなかったのは不満。ただ、空知太については『違憲』だとしたのは良かった。最高裁の判断が、一、二審で争点となった憲法20条三項ではなく、89条だったのは、これまでの政教分離訴訟との特筆すべき違い」と一定の評価をした。とはいえ、「最高裁では、個別意見以外で空知太について、上告棄却かどうかを判断せず、曖昧さが残った」と予想外の結論に困惑した様子だった。また、「法律的判断ではなく、きわめて政治的判断。煮え切っていない」との批判もあった。
 谷内さんは、「実質の町内会を『氏子集団』にして無償譲与することは卑怯。町内会員各自の思想信条を守るためにも、今後、争点になっていくと思う。キリストを信じる一人の信仰者として、神道の信仰者を尊重したい。だからこそ、ほかの宗教を信仰する人が、町内会員ということで氏子にさせられることがあってはならないと思う。市有地の無償提供は違憲だと最高裁も示した。高裁で再び審理する上でも希望がもてる」と述べた。
 

◎ハイチ大地震:WV、孤児への支援を最優先−−救援団体現地スタッフも被災=1001310201

西半球の最貧国ハイチで1月12日に起きたマグニチュード7・0の強い地震で、首都ポルトープランスは大統領官邸、国会議事堂などの官公庁やホテル、病院などが軒並み崩壊し、壊滅的な状態。倒壊した家屋の生き埋めになった市民も多く、1月20日現在、死者は7万人超と伝えられる。ハイチ政府によると、死者は最大20万人に上るとの見解もある。20日にはM6・1の強い余震を観測し、二次災害も懸念される。長年、現地で活動を続けるキリスト教救援団体の現地スタッフの中にも、安否確認が取れていない、家族を亡くした、という人もいる模様だ


(写真提供=WVJ)

 ワールド・ビジョン(WV)ハイチのフランク・ウイリアム事務局長は、地震発生当時の状況をこう語る。「地震は35秒ほど続き、街中から悲鳴が聞こえた。多くの建物が崩れ、道には瓦がれき礫が散乱し、交通が遮断された。多くの人々はなすすべもなく、道に座り込んでいた」
 地震発生当時、現地に滞在していたWVカナダのウィルフレッド・メッガー・スタッフは、「地震が収まると、崩れ落ちた瓦礫の粉ふんじん塵が舞い、人々の泣き叫ぶ声が空を覆った」と言う。「宿泊ホテルはあっという間に病院になり、負傷者が続々と押し寄せた。瓦礫の下敷きから救助された少女、足首を骨折し足が外側に向いてしまった少年…。激痛のため、泣き叫ぶ声が響いた。骨折した負傷者はベッドシーツを包帯に、家具を添え木にした。骨折した男性、右目が腫れ上がった幼い男の子、背中じゅうに傷を負い頭に大怪我をした少女たちは?重症でない0と判断された。通常なら、このような負傷者を見たら心が張り裂けるが、ここでは?彼らは生きている0と、人々は安心した」
 WVは、地震発生後直ちに15人の緊急人道支援チームをポルトープランスに派遣し、WVハイチ・スタッフと共に緊急援助活動を開始。ハイチ国境に近いドミニカ共和国ジミニに配布拠点を設け、これまで11の病院とヘルスセンターに医療品を届けたほか、衣料、衛生キット、食糧、水などの緊急支援物資を約2千人の被災者に配布。特に親や保護者から離れ離れになった子どもたちへの支援を最優先し、17日には150人の孤児たちに医療品、食糧、水などを配布した。WVハイチ・スタッフは、家を失い、家族が負傷し命を落とすなか、懸命の救援活動を行っている。
 WVジャパンは、坂ばん賢二郎スタッフ(海外事業部緊急人道支援課課長)をハイチに派遣。17日にポルトープランスに入り、現地のWVスタッフと緊急援助を行うと共に、被災現場でのニーズ調査を開始。「倒壊を免れた家に住む人も、地震の恐怖から建物の外で不安な夜を過ごしている。住む場所を失った人々は、公園などで仮の生活を始めざるを得ない状態。昼間は30度にのぼる気候のなか、厳しい環境で生活を続けなければならない。特に体力的に弱い子どもたちには、野外での生活は決して安全ではない」と、現地の状況を語る。
 WVカナダのデイブ・トイセン事務局長は「一人でも多くの被災者に支援を届けるため全力で活動しているが、とてもすべての被災者に届かない。負傷者への応急手当も行っているが、十分な治療を受けられなければ、多くの人が命を落としてしまう。まさに時間との戦い」と語る。

 【募金窓口】?Tel0120・465・009に電話すれば、クレジットカードでの募金を受け付ける、?http://www.worldvision.jp/ から、クレジットカードによる募金受付、?送金=郵便振替00140・4・900664、特定非営利活動法人ワールド・ビジョン・ジャパン(通信欄に「ハイチ大地震」と明記)

◎ハイチ大地震:FH、現地代表らも安否不明−−各NGO一斉に募金窓口を開設=1001310202

 日本国際飢餓対策機構(JIFH)によると、1月20日現在、国際飢餓対策機構(FHI)ハイチ・スタッフ19人中、現地代表者を含め15人の安否確認が取れていない状況だという。JIFHは、すでに現地で救援活動を展開しているパートナー団体(FHI米国、韓国、ドミニカなど)と連携しつつ、今後の情勢を見極め、直接的な物資支援や人材派遣を視野に被災者支援を進めていく。【募金窓口】郵便振替00170・9・68590、日本国際飢餓対策機構(通信欄に「ハイチ大地震」と明記)。
 15年間、ハイチで地域教会を助け、エイズの治療に当たってきたアメリカ福音同盟の救済機関ワールドリリーフ(WR)は、教会ボランティアとのネットワークづくりをしながら、食事、水を提供し、毛布を配布。「地域教会は、家を失った人たちの物資を配布するセンターとなっている」という。ハイチのWRスタッフ40人中2人が安否確認がとれない状態。WRは「ハイチの人たちが生きることができるよう、今までにないほど助けが必要だ」と祈りと献金を呼びかけている。
 日本福音同盟(JEA)援助協力委員会は、緊急活動の支援を開始。【募金窓口】郵便振替00190・5・7790、(JEA)日本福音同盟援助協力委員会(通信欄に「ハイチ大地震義援金」と明記)。義援金は、WRはじめ、キリスト教救済団体に送金する。
 自然災害、飢餓、紛争などで傷つき苦しむ人たちの緊急支援を行うNPO法人グッドネーバーズジャパンは、ハイチ大地震の緊急支援募金を開始。【募金窓口】郵便振替00900・9・78879、NPO法人グッドネーバーズジャパン(通信欄に「ハイチ」と明記)。
 日本キリスト教協議会(NCC)国際わかちあい委員会は、ハイチ大地震被災者緊急支援のための募金を6月30日まで募る。目標金額は500万円。【募金窓口】郵便振替00180・4・75788、日本キリスト教協議会(NCC)国際わかちあい委員会(通信欄に「ハイチ大地震被災者支援」と明記)。

◎神に委ねる強さでバンクーバー五輪へ!−−桜井美馬さん(ショートトラックスピードスケート日本代表)=

 2008年、18歳で全日本選手権総合優勝を果たし、日本の若きエースとして成長しつづけてきた桜井美馬選手。そして今年、2月12日から開幕するバンクーバーオリンピックへの出場を決め、夢の舞台で世界に挑戦する。好きな聖書のことばは、「うしろのものを忘れ、ひたむきに前のものに向かって進み、キリスト・イエスにおいて上に召してくださる神の栄冠を得るために、目標を目ざして一心に走っているのです」(ピリピ3・13、14)と語る彼女は、白いリンクの上をただゴールを目指して駆け抜ける――。

「氷上の競輪」とも呼ばれるショートトラック 「このショートトラックっていう競技は、すごくマイナーな競技だから、それを多くの人に知ってもらいたい。あとやっぱり、今、美馬が全日本チャンピオンになれたのもそばに神様がいたから。一人じゃなくて、本当に神様の支えがいちばん大きかったから、というのが伝えたいことかなぁ」
 昨シーズンこう語っていた彼女。そして、オリンピック出場をかけて、早稲田大学を1年間休学して挑んだ今シーズンは、昨年9月の全日本距離別選手権でみごと三冠を達成。12月の全日本選手権では総合優勝し、念願だったオリンピック出場を決めた。今回、個人500、1000、1500メートル、そして3000メートルリレーの全種目に出場する。
笑顔が魅力的な美馬さんは、氷の状態を知ることができるという世界トップレベルの「足裏感覚」の持ち主で、若干20歳の日本のエース。「オリンピックでは、メダルを目指して、たくさんの人と感動を分かち合えるような滑りをしたいと思います。応援よろしくお願いします」
スピードスケートショートトラックとは、111・12メートルのトラックで順位を競い合う競技。各レース、わずか上位2人しか勝ち上がることができない。横一列、同じスタートラインから4~6人の選手が同時に飛び出すため、スタート直後から必然的に熾烈な順位争いが起きる。カーブにある黒い「ポイント」の外側を滑れば、内外のどちらからでも追い越してよいが、スピードや技術力だけでなく、タイミングや局面を読む力、一瞬の駆け引きが勝負を決める。選手の組み合わせもレースを大きく変える。シビアな順位争いのため、選手同士がぶつかり、けがをすることも少なくない。転倒してしまえば終わり。見ているだけで、心臓がぎゅっとつかまれるような緊迫感に息がつまる。一方で、ゴール直前まで何が起きるか分からない、ドラマがある。

神様が共にいてくださるので怖くない 美馬さんが、本格的にスケートを始めたのは小学校1年生のとき。地元・大阪府堺市で、スケート場が家から5分ぐらいのところにあった。 「幼稚園のころから兄妹でスケート教室に通っていて、そこで勧誘されたのがきっかけです。ショートトラックスピードスケートのクラブに入らない? って」
素質を認められただけあり、すでに小学生のころから入賞していた。中学卒業と同時に単身上京し、「もっと強くなりたい」と、柏原幹史コーチの指導を仰いだ。高校時代から一人暮らし。全日本選手権の1000ートルで兄弟優勝を果たし、今回惜しくもオリンピック補欠となった同じスケート選手の兄・雄馬さん、応援に駆けつけてくれる母・順子さんや名付け親でもある祖父・井沢徳三郎さんなど、家族の支えは大きい。今回のオリンピックも家族が応援にきてくれるという。
そして、「レース前は毎回お祈りしています。一人で滑るのってすごい不安。でも、自分でどうにもできないって分かってるから、いつも滑る前に、『私は何もできないので、神様がそばにいてください』って、お祈りしてから滑ります。だから心強いです」。
 今回のオリンピック出場を祝うと、こんなメールが返ってきた。「メールありがとうございます。今日も一日イエス様に委ねて頑張ってきます」
 リンクで祈りをささげ、日本代表のチームメイトと共に力を合わせて闘う勇姿を見守りたい。