ヘッドライン
[CSD]2011年4月24日号《ヘッドライン》
[CSD]2011年4月24日号《ヘッドライン》=イースター特別号=
= 1面 ニュース=
◎イースターメッセージ:「新しいはじまり」——あなたを もう一度生かそう 記・山中直義
★PhotoNews:津波にさらわれた気仙沼第一聖書バプテスト教会跡の床上に建てられた十字架
= 2 面 震災/私にできること=
◎震災当日、駅前で帰宅難民に賛美の「種まき」——マチダdeリバイボー
★「聖書の言葉が支援の根底に」——2組の緊急避難家族に住居を提供する滋賀の盲学校教諭
= 3 面 震災/復興への歩み=
★信徒共に避難所巡り被災者の話に傾聴——被災した同じ立場でと宮古モミュニティチャーチ
★地域教会を復興の拠点に——KGKの大学生らが支援活動
= 4 面 教界ニュース=
★毎月11日に祈る「東日本大震災復興支援3・11超教派一致祈祷会」——第1回で津波被害4日後に救出された田中時雄牧師がヨブ記から証言
★荒れ野に十字架がよみがえった——保守バプ・気仙沼第一聖書バプテスト教会
★不安に苦しむ日本に復活したキリストを——首都圏イースター決起祈祷
★<落ち穂>津波被害の現地牧師たちのことば
= 5 面 教界ニュース =
★茨城から福島へ支援——「励ましの電話1本がありがたい」
★在日インドネシア人教会も被災——茨城県・大洗町
★日本同盟基督教団:茨城・福島諸教会を地震対策本部のチームが訪問
★<オピニオン>長期化する復興へ向け必要な元気 記・林 幸司
= 6 面 ビジネススペシャル/情報流出 =
★派遣社員が46万人分の個人情報を流出——「サンプル百貨店」(株)ルーク19のケーススタディ
= 7 面 情報 =
★<情報クリップ>催し情報・放送伝道ハイライトほか
★REVIEW:『クリスチャン女性の生活史』川村清志著(青弓社、2,010円税込)評・森田美芽
= 8・9 面 特集/日本国際飢餓対策機構創立30周年 =
★良きサマリヤ人たれ キリストの愛を行おう
★教会と共に愛を実践して30年——堀内顕顧問に聞く
★被災地に生まれた絆を形に——岩橋竜介理事長に聞く
= 10 面 全面広告 =
☆教団・各種団体・学校・医療機関ほか
= 11 面 特集/韓国からの災害支援 =
★在日韓国基督教総協議会が災害対策委員会を結成——チームで被災教会救援へ
★日韓青年が路傍伝道と募金集め——ソウルから「元気出して 日本!」
= 12・13 面 アーティスト特集 =
★神様は「今いる場所」に遣わしている——全国をライブで回ったシンガーソングライター横山大輔さん
★神様の創った自然をアートに——装飾品類創作作家・澤だ幸人さん
★一人ひとりに届けたいPray for Japan——シンガーソングライターSayuleeさん
★つながり、広がるネットワーク——アーティストらが息の長い支援をとLOVE EAST立ち上げ
= 14・15 面 読書特集 =
★著者インタビュー:弱さを肯定する聖書の「力」——中野雄一郎さん(JTJ宣教神学院国際学長)
★<書籍>『聖書力』中野雄一郎著(いのちのことば社、1,050円税込)
★<書籍>『信仰のものがたり』「信徒の友」編集部編(日本キリスト教団出版局、1,050円税込)
★<書籍>『自殺志願者でも立ち直れる』藤薮庸一著(講談社、1,470円税込)
★<書籍>『主の憐れみを叫び求めて』ネンリ・ナウエン著(あめんどう、1,680円税込)
★<書籍>絵本『くまのテディ おはよう』レスリー・フランシス、ニコラス・スリー文、ローラ・クーパー絵(日本キリスト教団出版局、1,050円税込)
★<書籍>絵本『なみだ』細谷亮太・文、永井泰子・絵(ドン・ボスコ社、1,260円税込)
= 16 面 被災地の教会/ひと =
◎原発の恐怖で逃げ出す町——共生に驚く住民ら礼拝へ いわき市・勿来キリスト福音教会
◎イースターメッセージ:「新しいはじまり」−−あなたを もう一度生かそう 記・山中直義=110424
失意と絶望の中から十字架から3日目の朝、香料を持って墓へ向かう女たちの悩みは、墓の入り口をふさぐ「石」でした。「だれか」があの石を転がしてくれないだろうか。悲しみと絶望を抱えながら、自分に出来る限りのことをしようと墓へ向かう彼女たちは、主イエスのことばも、神の御業も、信じてはいなかったと言えます。しかし、失意と絶望だけが漂うはずの場所で、彼女たちはあの大きな石が人手によらず脇へ転がされているのを見、人の思いを遙かに超えた知らせを聞くことになります。
「ところが、目を上げて見ると、あれほど大きな石だったのに、その石がすでにころがしてあった。…青年は言った。『驚いてはいけません。あなたがたは、十字架につけられたナザレ人イエスを捜しているのでしょう。あの方はよみがえられました。ここにはおられません。ご覧なさい。ここがあの方の納められた所です。』」(マルコの福音書16章4、6節)
驚きとまどう彼女たちに告げられた新しい希望、新しいはじまりの到来は、さらにその恵みの深さを増し加えつつ、挫折と絶望の底に沈んでいた弟子たちにも向けられます。
「ですから行って、お弟子たちとペテロに、『イエスは、あなたがたより先にガリラヤへ行かれます。前に言われたとおり、そこでお会いできます』とそう言いなさい」(同7節)。
ペテロをはじめとする弟子たち。彼らの前には、あの女たちを悩ませた石よりも遙かに重く大きな石、罪と絶望の石があったと言えます。彼らは、苦しむ主イエスを見捨てて逃げ出した者たちでした。十字架の主を見つめることも、葬られる主を悼むことも、よみがえりの主を信じ出迎えることもしなかった。信仰者として、一人の人として、完全に挫折し、失意と絶望の底に沈んでいた。それがその時の弟子たちであったと思うのです。
阪神大震災を通って
阪神淡路大震災の後、筆者も挫折と絶望を体験しました。避難所に住み込んで3か月間のボランティア活動に従事したのですが、そこで気付かされたのは、自らの徹底的な無力さ、絶望的なほどの愛のなさでした。人の生死も、目に見えるものの儚さも、自らの内にある深く冷たい罪も、人の力ではどうしようもないことに改めて気付かされました。しかし、それ以上に、それでもなお主を信頼せず、主を証しすることから逃げ回り、人の力と思いだけを追い求める、惨めで不信仰な自分を思い知らされたのです。これから先、どのようにして生きていけばよいのか分からない。そんな絶望の闇に覆われたことを思い出します。
神と共に「はじまる」
しかし、あの重く大きな石は脇へと転がされ、挫折と絶望に沈む者たちに希望の光が与えられたと聖書は言います。あの弟子たちを、主イエスはなおも愛し、赦し、「ガリラヤへ」と招かれたのです。ガリラヤ。それは、彼らが主イエスと出会い、主イエスのことばに導かれ、主イエスを知る新しい歩みをはじめた「恵みの原点」です。わたしはなおもあなたを愛し、あなたを赦し、あなたをもう一度新しく生かそう。十字架から3日目の朝、死と絶望を打ち破ってよみがえられた主イエスは、挫折した弟子たちを「新しいはじまり」へと招かれたのです。
聖書が約束する新しいはじまり。それは、単なる再出発、単なるやり直しではありません。挫折と苦しみのただ中、罪と愛のなさという現実のただ中で、一人の弱く愚かな罪人が、神に愛され、神に赦され、神と共に新しく歩みはじめる、そんな新しいはじまりなのです。
よみがえりの主を覚えるこの時期、主だけが為し遂げて下さる新しいはじまりを改めて期待したいと思います。そして、私たち一人ひとりが、主と主のみことばを信じ、ひたすらに主と共に歩み、この新しい希望の主を証しさせていただく者でありたいと願わされます。
「ところが、目を上げて見ると、あれほど大きな石だったのに、その石がすでにころがしてあった」(マルコの福音書16章4節)
◎震災当日、駅前で帰宅難民に賛美の「種まき」−−マチダdeリバイボー=1104240201
3月11日14時46分。東京・町田市の町田クリスチャンセンターでは、夕方5時から開かれるクリスチャンアーティストによるイベント「町田deリバイボー」の準備やリハーサルに追われていた。毎回、テーマとタイトルを変えながら、過去4回行ってきて客も増え始め、100人以上来るのではないかと予想された今回のイベント。「神様が働いている。そんな期待がすごくありました」と主宰者の横山大輔さん(シンガーソングライター、カンバーランド長老教会高座教会員)は語る。そこに突然の強い揺れ。開演までのわずかの時間で開催するかの判断に迫られた。「とにかく神様に祈っていました。この日のことは一生忘れられないでしょう」と横山さん。どんな一日となったのか。(12面に関連記事)
開催にあたっては賛美チームやゲスト不在では成り立たない。幸い、今回のイベントのゲスト、神山みささん(シンガーソングライター)は何とか来られそうだとわかった。それでも停電が続いており、開催は難しいと思っていたが、午後4時55分に復旧。「これはもう、やるしかないなと思いました」。当初の開始予定時刻5分前。神山さんはまだ到着できず、開始は1時間後に決まった。空いてしまった時間をどうしようか。話し合いの末、町田駅前でバンドをやることが決まった。電車はストップし、帰宅途中の学生、買い物途中の人などで駅前はごった返していた。歌の合間に高校生や大学生にチラシを渡して歩いた。「たまたま教会員の学生が友達といたり、お金もなくて寒い思いをしている高校生もいて、安らぎや暇つぶしになればと思い、声をかけていました」
午後6時、駅前で初めて出会った人もちらほら参加し、始まった。賛美の合間にあったメッセージはマタイ24章から。戦争のうわさがあること、ききんや地震が起こるという預言と「しかし、最後まで耐え忍ぶ者は救われます」という個所だった。 「今回は若いクリスチャンがつながり、励まし合う場にしたいと企画していました。結果的にクリスチャン同士だけでなく、『初めて教会に来た』という人ともつながり、彼らに福音を語るチャンスともなりました」
イベント終了後も電車は動かず、町田クリスチャンセンターの厚意でホールを緊急宿泊所として開放してもらえた。「僕たちは温かい部屋で休めるけど、駅には帰りたくても帰れない、寒い思いをしてる人が多くいる。彼らのところに行こう。そんな話が持ち上がり、再び駅前に行きました」
温かいお茶をいれたポットと紙コップをもって、数人で駅前に向かった。バスやタクシーを待つ長蛇の列、シャッターの降りた駅で電車の運転再開の情報を待つ人々…。外の風にさらされ疲れている人たちに「持ってるだけでも温かいですよ」とお茶を差し出し、二言三言かわしながら、真夜中に2時間ほど配り歩いた。「何ができるだろうと考え、思い浮かんだのが『種まき』のメッセージでした。この日初めて来た人が『僕も手伝います』と一緒に来て配ったり。小さな愛の種ですが、どんな時でもまこうと思いました」
◇
忙しい合間をぬって、被災地に救援物資を届けるなど現地に足を運び、高座教会では祈祷会を開く。「仙台などの都市部以外ではまだ物資の供給がおいつかない場所があります。被災地支援をすると共に、祈り続けていきたいと思います」
◎原発の恐怖で逃げ出す町−−共生に驚く住民ら礼拝へ いわき市・勿来キリスト福音教会=11042416
4月10日、日曜日。福島県いわき市の日本同盟基督教団勿来キリスト福音教会は、礼拝に13人の新来者を迎えた。礼拝堂に所狭しと積まれた救援物資を寄せ、いすを並べた。住吉英治牧師は急きょ伝道メッセージに切り替えた。決心者を募ると3人が手を挙げた。住吉英治・美和子牧師夫妻が東京都心の教会から勿来に赴任して4年。一生懸命にトラクトやチラシを配っても、教会に新しい人が来ることはほとんどなかった。変化の兆しが見えたのは震災後3週目、3月27日の礼拝。初めて4人の男性が訪れた。いずれも教会に運び込まれた救援物資をもらいに来て顔見知りになった人たちだった。
礼拝後一緒にカップラーメンを食べていると、その中のひとりの60代の男性が尋ねた。「なんで教会はこんなにパワーがあるんだ?」
住吉さんは答えた。「イエス様の愛によって世界中から祈られ、サポートされているから。みんなイエス様の愛に動かされているんですよ」
男性はさらに、「なんで牧師さん、そんなに元気なんだ?」
「イエス様の愛ですよ」
4人は翌週の礼拝にも顔を見せた。そして10日は13人。「いい話だから牧師の話を聞きに来い」と彼らが連れてきた。
共生に驚き 住民ら礼拝へ
いわき市の北部は福島第一原発から30キロ圏で屋内待避指示が出た。市南部の勿来は50キロ圏。学校の体育館では、北から逃げてきた人たちや、津波で家を流された海岸沿いの人たちが避難生活をしている。放射能を恐れ、勿来のあたりでも親戚などを頼って出て行く人がいる。一時は人口の6割が市外に脱出し、商店は軒並みシャッターを閉めた。「ゴーストタウンみたいですよ。食べ物や生活必需品が手に入らなくなりました。ガソリンがないから遠くまで買い物にも行けない」
ボランティアの多くも福島を敬遠して仙台へ向かう。避難所の救援物資さえ不足していた。他の被災地では目立つ救援活動をする新興宗教団体もここでは姿が見えない。そうした中で、教会には次々ボランティアがやって来た。食料や水を困っている近所の人たちに分けると、口コミで遠くからも救援物資をもらいに来るようになった。震災後1か月で、その数は延べ千200人ほどに上る。
「この経験を通して、地元の人たちと本当に親しくなりました。共に生き延びてきた同志という感じ。地元に残り続けている人たちがすごくいとおしくなりました。一人ひとりが大事な存在、イエス様に見えてくる」
度重なる余震で、津波による浸水を避けようと車を駐車場から移動し、いつもは外につないでいる犬を玄関に入れたら、近所の人から「あれ、いたの? 牧師さんも逃げたと思った」と言われた。夜になると真っ暗な家々が点在して寂しい光景。それから住吉さんは、教会の十字架と玄関灯を夜通し点けておくことにした。「電気が点いているとホッとするんです。人づてに物資がもらえると聞いて教会を探しに来る人が今でもいますし」
昨日まで頑張ろうと言っていた地元の人でさえ今日はいない。よそ者の牧師が留まっていること自体が驚きのようだ。住吉さんは「私だって恐怖はあります。避難しようかと思わなかったわけじゃない。でも神様が避難してもいいと言われなかったので…」と言う。「イエス様が十字架に向かわれた姿が原発に向かって歩んでいく姿に見えた。この町に人がいる限り、その人たちを置いていくことはできません」
残り続けている人は高齢や病気や頼るすべがないなどの弱者だ。住吉さんは今、こう思う。「これまで靖国問題に取り組んできて、誰の声を聴くかということ、また一人の存在や共生が大事だと思ってきたけれど、今それと同じところに立っている。私たちが10年かかってもできないことを神様は一瞬でして下さった。だから地域に留まって人々に仕え命がけで伝道していきたい」