[CSD]2011年5月8日号《ヘッドライン》

[CSD]2011年5月8日号《ヘッドライン》

 = 1面 ニュース=
◎復興へ復活の力——被災地で希望告げるイースター礼拝
★統一地方選挙:流山市長選・井崎善治氏3選遂げる——国立市長選・関口 博氏惜敗

 = 2 面 ニュース=
◎被災地牧師らに疲れの色——被災後の心のケア 相次ぎセミナー
★広島宣教協力会:東日本大震災被災地の学校に図書送る
★相模原牧師会:共同牧会ケアで災害支援——被災地牧師家族の痛み受け止め
★人事:(学)聖学院理事長に阿久戸光晴氏
★国際:米国、ロシアなどへ核兵器の撤去を要求する書簡送る——WCC、CECなどキリスト教団体
★<落ち穂>今も集会の自由がない中国・未公認の教会

 = 3 面 =
★関東沿岸部の液状化被害:会堂傾き 安全確保が急務——JECA・神栖キリスト教会
★1600人が避難の長野・栄村——宣教師子弟も避難者をお世話
★建築士が被災建物危険度判定で奉仕——阪神大震災の経験も踏まえて
★<オピニオン>被災地からの声 復興援助の在り方 記・千葉 仁胤

 = 4 面 ビジネスパーソン=
★高橋 恵介さん[中]([株]ブリックス マーケティング本部事業企画部長)——牧師の経験から在日外国人への営業へ
★<会計基準の黒船来る>[10]政府、民間が企業向け金融震災支援 記・篠松次郎

 = 5 面 情報 =
★<情報クリップ>催し情報・放送伝道ハイライトほか
★BOOK:『自分の死を看取る』近藤 裕著(いのちのことば社、1,260円税込)
★EVENT:第1回「コイノニアチャリティフルートコンサート」5月14日(キリスト教品川教会、2,000円税込)http://www.gloria-chapel.com/cc/110514.htm
★REVIEW:『順風よし、逆境もまたよし』佐藤 彰著(いのちのことば社、1,050円税込)評・千田次郎

 = 6・7 面 特集/賛美フラダンス =
★賛美フラダンスに込められた礼拝、賛美、祈りの力——ゴスペルフラ誕生の物語
★賛美フラそれぞれの出会い、魅力——梅澤由美子さん
★全存在で伝わる賛美フラの力——COG・酒田キリスト教会
★神様を賛美し、慰めと励ましをフラで——Hura Grace Festa 2011
★目で見せるメッセージ——山口 愛さん

 = 8・9 面 放送伝道特集 =
★「絶望の中にも希望伝えたい」——被災地を現地取材した日本CGNTV
★「十字架のもとに祈りを一つに」——日本FEBCが震災特別番組企画
★被災地での放送継続を——太平洋放送協会が協力支援呼びかけ
★TV「ライフ・ライン」震災特別番組をウェブサイトで放送
★「東北あさのことば」を特別番組に——CRCメディアミニストリー

 = 10 面 震災/子ども =
★チャールド・フレンドリー・スペース「ぜんいんしゅうごう」——ワールド・ビジョン・ジャパン
★<ひとくち情報>「被災後の子どものこころのケアの手引き」——ルーテル学院大学HPにも公開

 = 11 面 クリスチャンライフ =
★「傷ついた一人から」草の根から政治まで——ニューホープ系教会から起ち上ったHOPEジャパン
★<また行きたい! 教会の魅力>[12]ミニストリー?——すべてはできないが何かはできる

 = 12 面 ひと =
◎マコト フジムラさん(画家)——無力さの中にも力ある「感性」


◎復興へ復活の力−−被災地で希望告げるイースター礼拝=1105080101

 東日本大震災から1か月半。死者・行方不明者2万6千人余り(4月26日現在)。そうした中で、巨大地震発生から7回目の日曜日の4月24日、被災地の教会でもイースターの礼拝が行われた。
     ◇  
 大津波による甚大な被害が出た宮城県石巻市。駅前北通りの兄弟団・石巻キリスト教会は5日間、1・5メートル浸水して泥まみれになった。教会員の1人は津波で亡くなった。「いつも前向きな意見を言って下さる方で書記や会計をして下さり、教会の宝のような姉妹でした。とてもつらいですが…イエス様から愛されて、おいでって言われたのだと…」と伊藤諭牧師は話す。ようやく片付け、24日は震災後初の礼拝。いつも12人ほど集っていた同教会に新しい人が40人以上詰めかけた。
 同教会は仙台教会(仙台市泉区みずほ台)の伊藤諭・ゆみ子牧師夫妻が兼牧。伊藤牧師は50キロ以上離れた石巻を頻繁に訪れ、奥多摩バイブルシャレー(OBC)や救世軍など諸団体と連携して教会を拠点に物資の配給や炊き出しをしてきた。教会の周囲には浸水した住宅が多い。避難所になった学校の新学期で自宅に戻るように促されるが、家財道具を流され炊事できない人もいる。そのため数百人が教会に救援物資を求めて来る。
 石巻の窮状に、仙台教会の信徒たちは自分のために備えていた様々な物資を献品した。「自分の一番大切な物を持ってきてくれた。イエス様の愛の表れだと感謝しました」
 物資の配布は、奪い合いになり怒号が飛ぶようなこともあると聞いていた伊藤牧師は、「教会でそんなことになってはいけないと、本当に祈らされました。物を配るだけでなく、心と心のつながりを大切にしています」。
 長い列で炊き出しを待つ人たちに温かい飲み物などを配り、ボランティアの牧師や信徒に話しかけてもらった。「地震の日はどうでしたか。大変でしたね」|そんな会話に心を開く。家族を失うなど大変な状況を聞き、「祈っていいですか」と許しを得て祈ることもある。「食事や援助物資もありがたかったけれど、何よりもうれしかったのは教会の方が温かく声をかけて下さったこと、という反応がありました」 
 教会にイースター礼拝の案内を書いた紙を貼っておいた。「イースターは世界的に祝われている記念日です。今、私たちは困難に遭遇していますが復活の力に招かれていますので、ぜひ礼拝においで下さい」と。
 24日朝、礼拝開始の1時間前から20人ほどが集まり、開始時間には50人近くに膨らんだ。伊藤牧師は、「この教会も津波をかぶり、いすも机も聖餐の道具も散らかって、死んだ教会だと思った。けれども祈りの手が上がって救援する側になったとき、教会がよみがえった」と前置き。ヨハネの福音書15・16から、「今、こうしているのは偶然ではない。神様に招かれているのです」と話し、実を結ぶために、いただいた愛をもって隣の人を愛しましょうと勧めた。
     ◇
 やはり津波の被害を受けた宮城県東松島市赤井の聖協団・宮城聖書教会も4月24日イースターから礼拝を再開。まだ泥と消毒剤の臭いがする中、約20人が集った。
 田中時雄牧師は、「その石がすでにころがしてあった」(マルコ16・4)と題して説教。その重い石とは、・引かない海水、・流されてしまった聖書、賛美歌集、信仰良書などの備品、・会堂にたまった泥、だった。だが、「自衛隊が2週間たまっていた海水をポンプを使って1日で吸い出してくれた」、「いのちのことば社、日本聖書協会から聖書、教団信徒から『新聖歌』、教会員から信仰良書の献品があった」、「教団の信徒、東京基督教大学(TCU)の神学生らが泥と瓦礫をかき出してくれ、業者がそれを無料で持っていってくれた」。この地に留まる決心をしたら重い石はすでに取り除かれていた、と語った。
 「信徒は涙しつつ説教を聞き、私もつられてもらい泣きしました」と田中牧師。教会員の半数は交通手段がなく今も出席できない状態だが、礼拝を再開できたことを感謝し喜んだ。

◎被災地牧師らに疲れの色−−被災後の心のケア 相次ぎセミナー=1105080201

 東日本大震災への取り組みが緊急援助から復興支援へと向かう中、相次いで被災者や援助者の心のケアについてのセミナーが開かれた。
 パーパス・ドリブン・フェローシップ(PDF)は、米国サドルバック教会から牧会ケア担当のボブ・ベイカー牧師、国際トレーニングディレクターのデイブ・ホールデン牧師を講師に迎え、4月13日から16日まで、東京と名古屋で「災害カウンセリング・セミナー」を開いた。災害に襲われたとき牧会者として何をするべきかに焦点を合わせ、災害がなぜ起こったのか、教会は何をするべきか、といった問題に聖書から提示。「災害に襲われたときいかに人々に寄り添えるか」をテーマに、聖書からの慰め、いかにしてもう一度立ち上がるかなどを学んだ。
 2人の講師は、痛みを通じて耳を傾けることの重要性を強調。「被災地の人々自身が何を望むかが大切。その声によく聞き、特に被災地の牧師たちに寄り添って、彼らが働きを続けることができるように祈ってほしい」と訴えた。セミナー参加者らは、学びの合間に一同で被災地のために祈った。
 主催者の一人で被災地で支援活動をしてきた尾山清仁氏(聖書キリスト教会牧師)は、「何が一番重要かは人によって違うが、共通しているのは不安が大きいこと。牧師がいかに疲れているかを感じた。現地にいるときに余震を経験したが、2週間の停電からやっと回復して1週間後にまた停電と断水。『またか』という思いで、現地の牧師の目に涙が浮かんでいました。教会員が行方不明、家が流されたという先生もいる。現地でボランティアをコーディネートしている人がつぶれないように支えることも必要」と報告した。

 ビリー・グラハム伝道協会(BGEA)は同19日、都内で「心のケアカウンセラー養成セミナー」を開いた。講師はチャド・ハモンド氏(BGEAアジア地区協力主事)、ジャック・マンディ氏(同災害緊急対応チーム・ディレクター、カウンセラー養成部長)。 被災者に起こる苦しみや悲しみなどへの聖書的な対応と、どのように福音を分かち合うかについて学んだ。
 トラウマは激しい悲しみをもたらし、日常生活に支障をもたらす。ショックと現実の否認、怒り、空想や幻想に逃げ込む取引、抑うつ、受容などの諸様相が起こる。ハモンド氏は「怒りのときは、神にすら怒りを向けてしまう。このときに福音を伝えると、ダメージを与える。愛をもって話しを聞くべきで、祈りにも許可が必要。受容のときは、悲しみを思い出すことはあるものの、次に向けて動き出せる。この段階が、神の愛と希望を伝える好機になる」と話した。
 同協会では、日本のニーズを調査し、今後も継続してセミナーを開催する予定。地域教会に訓練された人をつくり、地域の伝道に生かすことを目標としており、同趣旨のセミナーを仙台など東北各地で開きたいという。
URL http://jea-net/ 「緊急支援」で資料閲覧可。

 日本アッセンブリーズ・オブ・ゴッド教団災害対策本部は4月18日から20日、東京・駒込の中央聖書神学校チャペルで「震災後のPTSD(ストレス障害)ケアセミナー」を開催した。講師として米国の同教団から専門家のネイサン・ジョンソン氏、ベス・デイビス氏を迎えた。ワークショップ形式などで、苦しみについての聖書神学的な意味や、トラウマとそこからの解放などの実際面について学んだ。セミナーは無料で教団外にも公開され、インターネットのユーストリームを使って中継された。セミナーの資料を、URL http://ww.mccag.jp/ptsd/ からダウンロードできる。
 

◎マコト フジムラさん(画家)−−無力さの中にも力ある「感性」=1105081201

 2001年9月11日、アメリカで発生した同時多発テロは全世界に衝撃を与えた。崩れ落ちるビルや、イラク戦争へと突入していく現実を前に、多くの人が自身の無力さを痛感せずにはいられなかった。当時からニューヨークに住んでいた画家・マコトフジムラさんも、その一人だ。フジムラさんは「アート」というものの無力さを痛感しつつも、その中にも「できること」から活動を展開。その功績もあり、03年にはホワイトハウス文化担当顧問に任じられている。今、新たに人間の無力さを実感する大災害が起きた。復興のために、アートには何ができるのか。「9・11」体験者として、東日本大震災を見つめる。

 「9・11」発生後、フジムラさんの目に映ったのは、多くの芸術家たちが無力さにさいなまれ、傷つく姿だった。「アートは、目に見えないものを表現します。市場で値段がついて初めて、価値があると言われる。求められるものと、自分の感性を素直に表現することのはざまで、無力さを感じてしまう。9・11の時は、まさにそうだった」
 何もできない。しかし何かできないか—。その中で生まれたのが、「トライベッカ・テンポラリー」の取り組みだ。事件の影響を受けた芸術家たちを励まそうと、各地で展覧会を開催した。中には、9・11のショックから完成させることができなかった作品を、出品した女性画家もいた。未完成ではあったが、後に女性は「その作品が、私には一番良かった」と回顧した。「中途半端であってもいい、むしろ、それを大切にしようとした活動でした」とフジムラさんは振り返る。市場を意識しない、むしろ傷ついたという感性をそのまま表現できる場。それが、多くの芸術家たちの救いとなった。
 「この活動を通して、自分は無力なんだと知ることが、新しいものを造ることにつながると感じました。自分が造られた存在である。感性を大事にし、それを信頼することを通して恐れがなくなる。さらに造るということは、愛にもつながっているのだと思います」
 ヨハネ11・1~38、イエスはラザロの訃報を聞いて涙を流した。「イエスは、復活を与える力があるのにあえて涙された。それはイエスが、無力で悲しみや怒りを感じる人間としての体験をされたから。それを、奇跡よりも重んじられたのです。涙は抽象的です。利益主義の中では『意味はない』とされてしまう。それはアートも同じです。理屈に合わないこともあれば、何かを人の心に残すこともある。それは人知を超えたものだし、言葉で伝えようとしても伝わらない。無力だからこそ、普遍性があると思っています」

 4月18、19日、被災地を訪れた。甚大な被害を前に、改めて自身の無力さを突きつけられたという。しかし、フジムラさんはそこに「創造」を見る。「アートは、何もないところから造りあげることができる。そういう力を用いて、特に現地の子どもたちを励ますことができれば。イマジネーションがあれば、いろんなことができると思うんです。泣くこと、悩むこと、疑うこと。神が、地震を通して何を語ろうとしておられるのか、耳を傾けること。アートは、人間の無力から生まれる切実な祈りです。その復興活動とは、毎日の平凡な体験を忠実に生き、夢を見捨てずに創造を続けることだと思えます」と語った。

 1960年、米・ボストン生まれ。83年、ペンシルベニア州バックネル大学卒業。カムラウディー賞、クリエイティブアーツ賞受賞。86年、文部省公費留学生として来日、東京藝術大学日本画科に研究生として入学。99年、ニューヨーク・ザ・キングス大学講師に就任。03年、ホワイトハウス文化担当顧問、東北芸術工科大学客員教授。個展、グループ展、講演会など多数。ニューヨーク在住。International Art Movement(IAM)主宰。