2014年10月12日号 1面

 東日本大震災後の救援活動で力を発揮した、教会間、地域間などの多様なネットワークに注目が集まる。日本福音同盟(JEA)宣教委員会は、「危機の時代を共に生きる~教会ネットワークから学ぶこと~」をテーマに9月29日、東京・千代田区のお茶の水クリスチャン・センターで「『JEA宣教フォーラム』2014」(第6回日本伝道会議、DRCネットと共催)を開催した。【高橋良知】
「JEA宣教フォーラム」は、日本伝道会議のテーマを、発展・継承させて開催されている。東日本大震災後は2012年に仙台、13年に福島で開催され、支援と宣教、包括的な宣教などについて議論された。
今回のフォーラムは2つの「危機」−①いつどこを襲うか分からない自然災害、②地域宣教の閉塞感−に備えるためのものだ。JEA宣教委員会委員長の末松隆太郎氏は冒頭の挨拶で、「震災支援で、ネットワークが生かされた。福島のJEA宣教フォーラム後にも、横のつながりができ、新しいネットワークも生まれた。様々な地域の教会でも、すでに様々なネットワークを築いて協力している。今回、様々なネットワークから教訓を受けて、宣教の進展のために協力できればと願います」と述べた。
主題講演ほか、被災地、防災、教会と宣教団、ユース、女性、国際人、日本伝道会議といったテーマでパネルディスカッションや分科会、福島県の現状報告などが開かれた。
主題講演として、「福音宣教と教会ネットワークを考える」と題して、小平牧生氏(JEA副理事長、第6回日本伝道会議プログラム局長、キリスト兄弟団ニューコミュニティ牧師)が語った。
従来、日本伝道会議では、「宣教のための一致と協力」について語られてきた。ネットワークへの言及があるのは、前回の09年の第5回からだ。宣言文において、「日本において」、「世界において」、「ネットワークを密にしていく」こと、「相互ネットワークを拡大・強化する」ことが告白されている。
「ネットワークは、統制型ではなく、自由参加型の性質がある」と言う。教会のネットワークについては、①教会を構成する一人一人が、家族、友人、職場などの人間関係のネットワークを持つ。②地域の諸教会や教団・諸団体とつながっている、という2点があると話した。今回特に②について、エペソ4章の「キリストのからだ」から、5つの性質を説明した。
1つ目は個の主体性。異なる個が、互いの違いを認識し、緊張や対立を積極的に評価しつつ、主体的につながる。
2つ目は相互のつながり。立場ではなく、個人的な関係として、互いに信頼から、関係を築く。
3つ目はつなぐ結び目への注目。ネットワークの中の個が共有する存在、関係、経験、目的などが結び目となる。たとえば聖書信仰、震災支援などが結び目になる。さらに共有する「信仰」、「歴史」、「使命」、「働き」などにある「備えられた結び目」を見出すときに、教会ネットワークは太く、強くなる、と話す。
4つ目は、からだとしての成長。ネットワークは内外の区分、境界が明確ではなく、広がる可能性を持つ。中心がなく、分散的、双方向的だ。全体の把握は困難であり、絶えず、未完成、成長、変化し続ける。
5つ目は全体を貫く価値観。個の主体性が強調されながら、ある目標や価値観を共有する。単なる友好関係ではない、と言う。
最後にネットワークを生かすために4つの勧めをした。1つ目はつながり方をたえず見直すこと。「全体を貫く価値観という要素を、絶えず見直さなければ、機能(ワーク)しない網(ネット)になります」
2つ目は共有しているものを明確にすること。「『日本の教会は、ここに向かって取り組んでいる』という目標を明確に持ちたい」と話した。
3つ目はチームワークを大切にすること。「人によって信頼関係が崩れることもある」と注意する。
4つ目は具体的な宣教協力を始めること。「失敗をおそれずにビジョンをもって、力を合わせたい」と呼びかけた。
閉会礼拝の説教で、末松氏は、「危機」について、教会、宣教の危機だけではなく、震災後に、現代に生きる者の「うめき」、原発事故に代表される「被造物」の危機がある、と述べた。
ネットワークについては、十字架刑前のイエスがした「大祭司の祈り」を引用。「皆が一つということを、今の私たちの教会、教会と教会の関係において見直したい」と勧めた。(次号10月19日号に詳細