映画「イエスタデイ」--ビートルズ世代の楽曲が誘う青春へのノスタルジー
カレッジ・フォークにIVルック、エレキギターにロックバンド…、60年代青春のビートルズ世代には、バンドを組むことが女の子にモテたい願望の第一歩。とりわけアイドルの枠を超えてnew valuesをリードするシンボルだった。彼らビートルズに夢中になったの4人の高校生たち。だが、出会った女の子に心を奪われると練習にも身が入らずそれぞれバラバラになっていく。それでも、ビートルズの話題を語り合う4人の心はなんとかつながり合っている。クラスメイトへの恋に翻弄されるのが青春なら、大人の戯れにセックスへの関心を弄ばれるのも、反戦に意識が目覚めるのも青春。自分がいま経験していることに、自分はどうありたいのか。ビートルズの数々の曲が流れるなかで、青春の日々へのノスタルジーとともに現在も歌い継がれ問われ続けている。
【あらすじ】
1967年、ノルウェーはオスロに住むキム(ルイス・ウィリアムズ)、セブ(ホーバール・ジャクウィッツ)、グンナー(オレ・ニコライ・ヨルゲンセン)、オラ(ハルボー・シュルツ)の親友4人の高校生たち。ポール・マッカトニー似のキム、シャイなジョージ・ハリスンを気取っているセブ、楽隊の補欠ドラマーのオラはリンゴ・スター、そして美声を自負するグンナーは、それぞれビートルズに強く憧れている。この日も、船乗りのセブの父親から届いたビートルズのニューアルバム「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」を、たまり場にしている屋根裏部屋で聴き、乗った勢いで“スネイファス”というバンドを結成する。
まだ高校生の彼らにはエレキギターやドラムセットを買うお金などない。ひたすらレコード聞きながらリズムやボーカル、コーラスを合わせる程度。そんなある日、キムは映画館で青いリンゴを持った見ず知らずの女の子ニーナ(エッマ・ウェーゲ)と出会う。観終わった後、彼女は別れ際に突然キスすると、名前も告げずに路面電車に乗って立ち去って行った。キムは、どこの誰かも分からないまま、ニーナへの想いだけが募り出す当てのないラブレターを書き溜めていく。
グンナーの兄の伝手でプロのバンドのリハーサルに行って触るなと言われていた楽器をいじくり面倒を起こしたり、自分たちの練習もままならず次第に身が入らなくなる4人。キムは、クラスに転校してきた美人のセシリア(スサン・ブーシェ)にすっかりのぼせ上がってしまう。そんなキムの心情を見透かしてか、セシリアの立ち居振る舞いはどこか大人びている。一方、ジョン・レノンと同じギターを買おうと決心したグンナーは、父親の商店でアルバイトしている。そんなある日、注文の届け先のマダムからアバンチュールの戯れに引き込まれていく。
セシリアの前で演奏することになった“スネイファス”。だが、初恋の甘酸っぱい感覚を知ったキムは、ビートルズの曲ではなくブルースを基調にしたオリジナル曲を演奏した。ギクシャクしていたセシリアとキム。だが、この演奏で寄りが戻りそうな雰囲気になっったが、そこにニーナが現れてセシリアの心は傷つく…。
【みどころ・エピソード】
1984年に発表されたラーシュ・ソービエ・クリステンセンの『Beatles』を原作にした青春ムービー。夢と理想に向かって熱くなれた60年代後半の空気感が、要所要所に挿入されているビートルズの楽曲で青年たちの心情とともに伝わってくる。現実の様々な出来事と人間関係のなかで困惑し、自分は何者で何をしたいのかさえ次第に見失いそうになる青春時代。物語のラストシークエンスに使われているビートルズ最後のシングル曲“Let It Be”のラストシーンが心にくい。 【遠山清一】
監督:ペーテル・フリント 2014年/ノルウェー/114分/映倫:PG12/原題:Beatles 配給:マクザム 2016年10月1日(土)新宿シネマカリテほか順次公開。
公式サイト http://yesterday-movie.com
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*AWARD*
2015年:ノルウェー・アカデミー賞美術賞受賞。サン・パウロ国際映画祭外国語映画賞受賞。リバーサイド国際映画祭観客賞・審査員賞受賞作品。